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FASHION JUN 29,2022

THE GOODLAND MAGAZINE Vol.9 Annaut

THE GOODLAND MARKET(ザ グッドランド マーケット、以降TGM)が取り扱う、サステナブルなフィーリングを持ったブランドをピックアップするTHE GOODLAND MAGAZINE。第9回目に会ってきたのは、商社に勤める20代~30代のメンバーで立ち上げた<Annaut(アンノウト)>のふたり。独特の白さと柔らかさのある「メランジデニム」を囲みながら、もの作りの今と未来を聞きました。


※ 撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで取材を行っております。

現場を見てきたからこそ自然と描いた
“正しい”ものづくりのカタチ

まずは、<Annaut>の意味を教えてください!

Annaut
長谷部さん
(以下、長谷部)

アンノウトと読みます。nautという言葉は本来「naught」と書いて、価値のないもの、無価値なものという意味があって、それを打ち消す「An」をつけました。ものづくりの中で発生した無駄やロスをなくしたいというのがブランド立ち上げのきっかけで、価値を失くしたものに自分たちで息を吹き込んで価値のあるものに変えようというのをコンセプトにしました。

どんなアイテムを展開しているんでしょうか?

長谷部

第一弾としてリリースしたのはデニムジャケットなど4型です。インディゴデニムの端切れを回収し、反毛工程を経て綿(わた)の状態に戻し、その綿を混ぜて作った糸を使用して生地にしたデニムで作ったアイテムです。

左から、DAILY JEAN JACKET ¥24,200 (税込)DAILY UTILITY SH JACKET ¥19,800 (税込)DAILY DRESS TROUSERS ¥17,600 (税込)DAILY UTILITY PANTS ¥16,500 (税込)

白っぽい色なんですね!

長谷部

よく見ると淡い青っぽさもあって。それが特徴です。デニムって縦糸が表に出て横糸が裏生地になるんですけど、縦糸には新しいコットンを使っているので白く、横糸に裁断くず由来の糸を使っているので裏側はインディゴの淡い青になっているんです。表と裏で違った印象があって、これを僕らはメランジデニムと呼んでいます。

ロールアップしても楽しいですね。

Annaut
桜場さん
(以下、桜場)

しかも、デニムにしては柔らかいんです。デニムって硬い印象があるんですけど、この生地の柔らかさを生かしたデザインにしています。

桜場さんはデザインを担当。着ているのはDAILY UTILITY SH JACKET ¥19,800 (税込)

桜場

これらはシャツジャケットとGジャン、タック入りドレストラウザー、ベイカーパンツ、いわゆるミリタリーパンツですね。デザインで大事にしているのは、常にいろんなシーンで着られるアイテムということ。柔らかいので家の中でも心地よくて、ちょっとしたお出かけでもファッションとして成立するような服。セットアップでもバラで着ても使えるようにしました。

桜場

アイテム自体はミリタリーやワークがベースで、どこか見たことがあるもの。それに、着るうえでこうだったらすごく便利だなっていうこと・・・例えばサイドにスラッシュポケットを付けることで収納ができるようにしていたりとか、Gジャンを全部スナップボタンにして着脱を簡単にしたり。生活の中で快適になるようにデザインに工夫を盛り込んでいます。

ステッチはアクセントとしてパープルを使用している。「トイレとかって赤は女性、青は男性。紫はその中間だと思っていて、ジェンダーレスとかユニセックスというブランドの意味を落とし込みました」

TGMとのコラボレーションではスウェットを作っていますね。

長谷部

はじめはデニムの裁断くずを糸に戻してデニムを作るっていうのをやったんですが、その糸を使って他に何かできないかと思っていて。このスウェットは、表糸と中糸は薄グレーのコットン、裏糸に裁断くず由来の糸を使っています。

左から、AnnautxTGMカットオフBIG T-SHIRTS ¥15,400 (税込)カットオフイージーPANTS ¥13,200 (税込)
表から見たら普通のスウェット。裏返すとメランジの淡いブルーが現れる。裏毛の風合いがよく、リバーシブルで楽しめる

白っぽいメランジデニムシリーズと、TGMとのコラボスウェット。それからブラックカラーも!

桜場

メランジデニムって良くも悪くも、白っぽい色しかないので、この色が着られないってなったらそこまでで。もともと水を汚染してしまうので染色はしないでおこうというスタンスなんですが、なんとか環境に負担の少ない形で染めをできないかなと思って。それで、ログウッドの色素を抽出した草木染めをして、ブラックデニムのように作りました。

左から、OVERDYED JEAN JACKET ¥29,480 (税込)OVERDYED SHIRTS JACKET ¥25,300 (税込)OVERDYED DRESS TROUSERS ¥19,800 (税込)OVERDYED UTILITY PANTS ¥18,700 (税込)

染めをすること自体に葛藤ってありましたか?

長谷部

もちろんありました。染めるにしても染め方だったり、黒染めにもいろいろ種類があって、カーボンを使っているものがあったり。それらを避けながら染めてみながら、と試行錯誤を繰り返して折り合いが付くところにたどり着きました。

桜場

完全なブラックではなくて、ブラックデニムを穿き古していったらこういう風になるよね、といった色合い。デニムでもなかなかこういう色が出ないので、オリジナリティのある色に仕上がったと思います。

桜場

デニムって色を落としたり洗ったり、どうしても後加工が多くなりがちで。そういう意味では他より水を使うアイテムかもしれません。

長谷部

メランジデニムはデニムの裁断くずから作っているのでインディゴ染めの工程がないですし、さらに水の量を少なくして実現できる洗い加工の機械を導入しているので、従来の水の使用量から70%は削減できています。

おお・・・!すばらしい。メランジデニム自体はどうやって作っているんでしょう。

長谷部

過程としては4つくらい。まずは端切れですね。これを回収して、機械で反毛します(砕いていく)。そうすると、ふわっふわの綿状になります。ここから糸に紡いでいきます。ただ、反毛すると繊維の長さが一本ずつ短くもなってしまうので、つなぎとして白いバージンコットンを混ぜて紡いでいくのでマーブル調の淡いブルーの糸になるんです。

手前が端切れ。そこから反毛してふわふわにした後、糸になる

メランジデニム生地製造で大変な部分って?

長谷部

一度糸になり生地になった裁断屑を、反毛工程で掻いて綿(わた)に戻すため、バージンの綿と比較すると繊維長が短くなる傾向にあります。紡績できる程度の繊維長を維持するために反毛機を微調整、製織(生地を織ること)できる糸を作るために紡機を微調整することなど、通常のバージン綿だけを使用して糸を作る場合よりも、手間暇、経験を要します。ちなみにこの大変な工程はクラボウ様の愛知県にある安城工場で行っています。

この工程はすべて国内でされているんですよね。MADE IN JAPANへのこだわりってあるんでしょうか?

長谷部

自分たちがいろんなものづくりで人と関わっていく中で、無駄やロスをなくすっていうのはもちろんなんですが、まずはものづくりの環境自体を変えていかなくちゃいけないって思っていて。工場のみなさんが大変な思いをしてやってるっていうのを、本当に実感していたんです。短い納期だったり、細かい作業、おまけにコスト面・・・。それらに直面する中で、自分たちが思う正しいものづくりを実現したい、まずはここ日本から、っていう想いがありました。

長谷部さんは販売や営業、PRなどを担当
横から見たときのシルエットがきれいになるようデザインしたスカート。「タックの入り方もかっこいいです」と桜場さん。DAILY FLARE SKIRT ¥20,900 (税込)

ところで、この下げ札かわいいですね。

長谷部

これ、長方形タイプは値札を剥がすと本のしおりとして、丸いほうはずっとではないですがコースターとして使えます。価格を表示するためだけに作るのってもったいないし、実際自分がしおりとして使ってたっていう実体験もあったのでやってみたんです。

シールを剥がすとエコなメッセージが。コースターのイラストは絵が上手な女性社員が描いてくれたそう

この下げ札の「CLOTH LOOP(クロスループ)」って?

長谷部

自社で構築した服の循環システムです。自社で作った商品を販売した後、お客さまが着なくなったものを指定の場所で回収して、それを原料に戻して、また商品を作るのに使うっていうシステムです。自分たちがつくった商品だと何をどう作っているかが管理できるので。Annautはもちろんその対象ブランドです。着払いで送っていただければ、その材料を使って服をつくることができるというものです。

そもそもアップサイクルをテーマにブランドを立ち上げたのは、理由があったんでしょうか?

長谷部

Annautは自分たちの実体験がもとになっています。OEMという仕事(ブランドから依頼を受けて工場で生産する)をしていて現場の人たちの大変さと責任感を見ている中で、疲れたというか・・・どうにかしたいなって思ったんです。今サステナブルが流行ってるからっていうのとはちょっと違って、日々仕事と向き合っていく中で正しいと思うものづくりをしたいって考えたら、それがサステナブルだったというか・・・。自然と自分たちの内側から出る想いを行動にしたブランドなので、やっていることに対して嘘がないと思います。

ブランドを立ち上げたときと今のムードって違ったりしますか?

長谷部

会社的な土壌や空気感は変わらないです。でも、実際にお客さんに届けるっていうことの難しさは痛感しています。もともと僕らの会社は作ることがメインなので、正直今までは売ることってこんなに大変だとは思ってなかったんです。ショップさんが実際店頭に立ってお客さんにものの良さを伝えて、買ってもらうって、その力ってすごいなって思います。自分でやってみて売ることの難しさを知ることで、ものづくりにも生かせるなとも思いますし。

これからの展望は?

長谷部

この1年はデニムに特化してやってきたんですが、今後は他の素材や、他のものづくりの無駄にも目を向けていきたい。同時にその状況を発信していきたいなっていう風に考えています。それにはTGMとのコラボレーションのように、自分たちだけじゃなくて、共感する人やブランドが集まってどんどん広がっていくっていうのが大事だなと思います。

いよいよ最後の質問になりますが・・・Annautにとってサステナブルとは。

桜場

これ、ライブのときにも聞かれた気がするぞ・・・?

また答えてください(笑)。

桜場

ファッションを楽しんでもらえるものをつくるっていうことが根底として大切かなと思います。生地や水の無駄をなくすことはベースとしてやっていますが、長く愛用してもらえる服づくりを積み重ねていけば、結果としてサステナブルになるかなって。

長谷部

僕はできることをやるっていうスタンスです。仕事上、Z世代の子たちと話す機会もあって。サステナブルって言葉はお腹いっぱいっていうか聞き飽きたというか、そんなのやってて当然でしょって感じなんです。自分たちより下の子たちって学校で勉強していたり、思ってる以上に根付いているんですよね。そういう意味では変に意識しすぎないほうがいいのかなって思います。継続させることが一番大事。常に100%で走ってると疲れちゃうので、Annautも自分たちがやれるおもしろそうなことをやってみるっていう、気軽な気持ちでいることかなと思います。

DAILY UTILTY MINI BAG ¥3,520 (税込) ※TGM 堀江店限定販売

Annaut(アンノウト)
商社に勤める20代~30代のメンバーで立ち上げ、2021年にブランドスタート。メンバーは“つくる”まわりを担当する桜場さん、“売る”まわりの業務を担当する長谷部さんのふたり。ふたりだからこそ、役割を分けすぎずにお互いにアイデアを出しあい、意見交換しながらやっていくスタンスだという。シーズンレスでユニセックスなアイテム展開を行う。
HP : https://annaut.com
Instagram @ annaut_official

長谷部 透(ハセベ トオル)
1990年生まれ。東京都出身。2014年に繊維商社に入社し、ものづくりや繊維原料の輸出などを経験。一発勝負よりはコツコツ努力するタイプ。好きな言葉は大器晩成。好きなブランドはNOAH。

桜場 圭佑(サクラバ ケイスケ)
1984年生まれ。愛知県出身。20代前半で販売員をした後、デザイナーとして商社でさまざまなものづくりに携わる。その後メーカーにて国内・海外への卸ブランドのデザインを経験し、フリーランスに転向。現在はAnnautだけでなくさまざまな企業やブランドのデザインを行っている。

PROFILE

にいやん編集部

THE GOODLAND MAGAZINEを発行するにいやん編集部。にいやん編集長は常にGOODLANDを担うブランドやアイテムを探し求めている。その中でも今一番HOTなTHE GOODLAND MARKETのスクープを狙い、365日24時間、情熱を燃やし続けている。
※将来発刊を目指す架空の雑誌

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