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FASHION AUG 08,2022

URBSで2022AWから取り扱いがスタート
Afterglow・横川琢哉のこだわりとは

URBAN RESEARCH BUYERS SELECT(以下、URBS)ブランドディレクター・村手謙介のアンテナが導く「今、気になる人」。それは昨年スタートしたライフスタイルブランド「Afterglow(アフターグロー)」のオーナーであり、根っからのデザイナー気質である“伊達男”でした!


右:Afterglow 横川琢哉氏 / 幼少期から図面引き、模型飛行機を作るなどずば抜けたモノ作りのセンスを発揮。スケートボードやスノーボード、BMXなどのアクションスポーツにも精通し、数多くのスケートパークのデザインや設計を担当。その中の一つである八王子市の施設『戸吹スポーツ公園-プラネットパーク』は2011年にグッドデザイン賞を受賞。また、20代の頃から独学で服作りをスタート。今までスポーツメーカーや釣りブランドなどで企画・デザインを担当。2021年に立ち上げたアウトドアブランド『Afterglow アフターグロー』は、デザインからパターン、サンプル作成、テスト、撮影、営業までほぼ全行程を一貫して手掛ける。

左:URBS ブランドディレクター 村手謙介 / 釣り好きが高じて社内・社外を巻き込んだ“レイクシーカーズ”という集団を立ち上げた。

※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで取材を行っております。

訪れたのは、東京都三鷹市にある横川さんの自宅兼工房。デザイナーのお宅というと、非常に多くの道具で散らかったイメージが強いですが、実際に伺うと想像に反してあまりモノがなく、すっきりした環境。どんな話が飛び交うのか楽しみです。

横川琢哉という人

URBAN RESERCH MEDIA(以下、URM) まずは横川さんと村手との出会いから教えてください。

村手謙介(以下、村手) 昨年に新規ブランドの買い付けでリサーチをしていたところ、偶然Instagramで同ブランドを見つけました。写真や動画での世界観の表現がわかりやすく、しかもフラッグシップである釣り用のバックパックが機能性に優れていて面白い。じゃあ早速実物を見てみたい! と思って、ダイレクトメールで連絡したのがきっかけです。

横川琢哉氏(以下、横川) 連絡がきたとき、「あの有名なセレクトショップだよね、嘘じゃないよね?」と、内心びっくりしました(笑)。
題材にしているのが一般的ではない分野が多いですし、そこまでブランドが大きくないので、お付き合いいただいているコアなショップさんや、自社のウェブショップでの展開のみでしたので。
でも、村手さんとお電話でいろいろお話しさせていただいてURBSで釣りのカテゴリーの提案をしていることや村手さん本人も釣りを楽しまれていることなど、本気で興味を持っていただいていることがわかりました。

村手 コロナ禍以降は、展示会が相次いで中止になり、買い付けする側にとって情報が集まりにくい状況が続きました。有名ブランドは知名度もあり商品の安定感もあるので、買えば売れるのもあります。しかし、それに頼り切ってしまうとどのショップも同じものが並び、差異性がなくなってしまう。
そうならないように、各ショップで情報収集をしてオリジナリティを出せるように試行錯誤をしています。今の情報源はWEBを中心としたオンラインメディアや口コミ、いま注目を集めるコミュニティになってくるわけです。

そういった中で、同ブランドはたしかな商品力があるうえに、きれいな画像や動画でパッと見た存在感があり、全国に販売ネットワークがある。そして、オンラインショップを見るとほとんど在庫がないため、しっかり商品も流通している。トータルで見たとき、このブランドはこれから人気が出るだろうな、と感じましたね。
でも、じつは横川さんと直接お会いするのはまだ2度目なんです(笑)。でも、あまり久しぶりな感じもなく、スムーズにお話しできました。趣味の釣りが共通点だからですかね。

横川 そうかもしれませんね。自分が立ち上げたこのAfterglowは、釣りなどの趣味を持つ人たちに向けたアウトドアブランド。アパレルやバッグ類が中心で、渓流釣り用に開発した「ストリーム チェーサー バックパック」というバックパックが釣り人達に人気のアイテムです。
これはネイティブトラウトフィッシング(自然の渓流で釣りをすること)向けに作ったこだわりのアイテムで、日本の渓流を釣りあがるのに、本当に必要だと思った機能だけを取り入れた渾身作です。このバッグと釣りの話で、初めてお会いしたときは一瞬で時間が経ちましたね。

村手 本当でしたね。このバッグを自分も購入させていただいて実際にいろんな場所で使ったのですが、釣りをするうえでの機能がどれも共感でき、普段使いでも重宝しています。その日にバッグの買い付けをお願いしてしまいました。

“なんでも作ってみないと気が済まない”

URM 2度目とは思えないほど打ち解けていますね。横川さんがAfterglowを立ち上げるきっかけを教えてください。

横川 ボクが当ブランドを立ち上げたのは昨年。それまではスポーツやアパレル、釣具系のメーカーの、企画やデザイン、新規ブランドの立ち上げなどを担当していました。
そんな中で、自分たちと同じ趣味人に使ってもらいたい、フィールドで本当に使える本物のアイテムを作っていきたいなと考えるようになりました。
冬はバックカントリーでスノーボードを楽しみ、オフシーズンは釣りやキャンプ、スケートボードなどを楽しむ。
アウトドアやアドベンチャーが好きな仲間やお客さんたちと、あーでもないこーでもないとディスカッションしながら進める物作りは、まさにリアルなんです。
現在ファミリーとして、プロスノーボーダーをサポートしていて、フィールドテストからのフィードバックを製品に落としこんでいますし、先ずは何より自分で現場へ行き、長い時間をかけてサンプルテストと修正を行っていきます。
ちなみにAfterglowというブランド名ですが、意味は“余韻”。うちの奥さんが名付け親なんですが、ボクがスノーボードや釣りから帰ってくると、奥さんが聞いている聞いていないは関係なく、ずっとその日の楽しかったことや悔しかったことを話しているのを見て「Afterglow」がいいんじゃない? って付けてくれました。
余韻に浸れる趣味が持てることって幸せなことだと思いますし、そんな大切な時間をより最高な時間にするためのギア作りがしたいという思いがこもっています。

村手 周りの人と一緒に作り上げたのがAfterglowだったんですね。モノづくりのこだわりがひしひしと伝わってきました。その精神は、今に限らず小さい頃からあったのですか?

横川 親が言うに、自分は2歳からカッターナイフを持って、何かを作っていたみたいなんです(笑)。父が飛行機の整備士だったこともあり、飛行機関係の物に囲まれて育ったので、幼少期から見よう見まねで図面を引いて、バルサ材を使って模型飛行機を作っていました。
高校生の頃には、地元の公園にスケートパークをDIYで作り始めたんですが、小さい頃からやっていた図面や工作の技術が役に立ちました。その後、武蔵野市、立川市(IKEAの前にあるスケートボード場)、八王子市 といった公共のスケートパークの設計や民間のスケートパークの設計・施工などをしたりもしましたね。たぶん、何でも作ってみないと気が済まない性格なんだと思います。
服作りも1996年頃だったと思いますが、当時付き合っていた彼女がスケートボードをするときに着用するスポーツ下着が、CKとかしかなくって、小柄な子だったのでサイズが合わない・・・だったら作ってあげるよと、ミシンを触ったこともないのにパターンを起こしてミシンを踏み始めたのがきっかけでした。
最初は全然上手く作れませんでしたが、続けているうちに何とか形になるようになって、自分のトランクスを作ったり、デニムを作ったり。
そのうちバッグやポーチ、スノーボードのウエアを作るようになりました。

付属の2つのポーチが鍵を握る

STREAM CHASER BACKPACK
Price:¥27,500 (税込)
Color:OLIVE / KHAKI / GORGE
Size:Free

STREAM CHASER BACKPACK
Price:¥29,700 (税込)
Color:HIGHLAND
Size:Free

URM 幼い頃からモノを作るのが好きだったのですね。では、次に商品について教えていただきたいのですが、釣り用のバッグについてこだわりを教えてください。

横川 こちらは本体で22L容量のバックパックですが、付属の2つのポーチを合わせると容量が28Lになります。テーマは“日本の渓流を安全かつ快適に釣りあがるためのバックパック”です。

村手 深掘りしたい点が山々ですが、まずは安全に、というのはどういう意味ですか?

横川 渓流釣りはイワナやヤマメ、アマゴを対象魚とした釣りの分野で、行く場所によりますが、山深く分け入り、谷の中を軽快に進んでいくような遊びです。
そこには、釣果だけでなく、木々や動物たちの自然の営みを感じたり、涼しい風を感じながらコーヒーやカップラーメンを楽しんだりと複合的な楽しみがあるんです。
また、計画を立てて地形を読み進んでいく、登山や沢登りといった要素などが合わさっていて、装備なども行く場所に合わせて準備します。

冒険的な要素が多くて楽しい分、滑落、落石、道迷い、野生動物、増水など危険なことと隣り合わせの環境でもあります。
そういった危険から釣り人を少しでも守るために、このバックパックには、安全マージンを取れる機能を持たせています。例えば、両サイドに付けたギアループやロープポケット、ショルダーストラップに付けたホイッスル、スマホや車のカギなどを無くさないためのキーフックなど、自分が困った経験を反映してあります。

村手 安全マージンはアウトドアギアを提案するには大事な要素ですね。

横川 当ブランドの商品はどれもそうですが、1から線を引き、サンプルを自作して実際にフィールドテストで使っては改良して、また作り直すを自分の手で何度も繰り返し行っています。
特にこのバックパックは数百時間のテストを繰り返し、企画から完成まで2年ほど費やしました。
これは、このバックパックだけでなく、すべてのアイテムがフィールドで生まれているということです。
とにかくフィールドテストに時間を費やして作りこんでいき、修正点もその場でメモを取り、修正サンプルに反映させます。

村手 1点のフィールドテストで2年間も費やしたのは相当ですね。自分もこのバッグを使っていて、付属のポーチがかなり面白いと感じました。

横川 このポーチは、外してバックパック単体でも使えますし、前に付けても、さらには後ろに付けても使える3wayなのが特徴です。通常、釣りをしているときは、前に付けることでポーチの中に入れたルアーなどの小物や飲み物、行動食などをすぐに中から取り出せます。
また、山道を歩くときは後ろに付けることで邪魔になりません。

ポーチはあえて止水ファスナーは使わず、動きの軽い通常のコイルファスナーに撥水加工がしてあります。ファスナーの取り付けも片手で開け閉めできるような角度にも設計しています。さらに、ポーチの裏側にはスマホを入れるのに便利なメッシュポケットを付けました。サイドには、釣り竿を挿せるロッドホルダーも付けました。このバッグは、この2つのポーチがあってこそ完成するのです。

日本のフィールドにあったバッグ作り

村手 ボクも実際に使っていて、このポーチだけでも十分使い勝手がいいと感じました。が、このバッグの機能はこれだけじゃありません、よね(笑)?

横川 はい。このバックパックで特にこだわったのがショルダーストラップです。
容量に対して必要最低限まで薄くした、絶妙なクッションの厚さにしています。
これによって、バッグが体に密着するようなフィット感を実現しました。もちろん薄くすることで重量が増すほど肩への負担が増えますが、幅を少し広くすることと、形状を工夫することでそれを軽減しています。
この幅とクッション性を実現するために、何パターンも試作してフィールドテストしましたね。
結果として、一見なんてことない作りなんですが、背負った人が驚くほどのフィット感と一日中、竿を振っていても疲れにくいバックパックになっています。

横川 次にバッグの厚みを薄くし、高さも低くしました。一般的なバッグは厚さと高さを出すことで容量を増やしていますが、実際に渓流を歩くと分かるんですが、高さのある登山用のバックパックなどは、倒木や藪、岩の間を越えていくときに引っかかってしまいストレスなんです。また、厚さがあると邪魔なだけでなく、背中に付けたランディングネット(釣った魚を取り込むための網)が取りにくい。それを防止するために、厚みと高さは抑えて横幅を出すことで容量を確保しました。

ランディングネットを付けるためのDカンも取り付けましたが、いかにも釣りですってデザインにしたくなかったのでポケットの陰に絶妙に見えない位置にしてあります。

ロープを収納するためのポケット、末端を通しておけるループ付き

横川 さらに、このバックパックのデザインのポイントにもなっている表面の止水ファスナーは、ロープやレインウエアを仕舞うための物です。
渓流釣りでは、急斜面を降りるときや渡渉でロープを使う場面もありますので、お守り代わりにもロープの携帯を奨めています。
ポケットの下には水抜きも設けており、濡れたロープやジャケットを仕舞っても水が抜けるようになっています。

村手 個人的にはこれでも十分な機能があると思いますが、まだ言い足りないことがありそうですね(笑)。

横川 そうですね、専門的なアイテムですので機能が盛りだくさんで(笑)。バッグの横に設けたサイドポケットですが、だいぶ浅いですよね?

村手 たしかに。ボクはドリンクホルダーとして使っていますが、あとは折りたたみ傘を収納しています。釣りのときはどのような使い方をするんですか?

横川 ここには折りたたんだロッドを収納できるように設計しました。ポケット高さがあるとリールにあたってしまうのでポケットが浅く設計してあるんです。滝を登ったりを繰り返す渓流釣りでは、そのたびにロッドを完全に分解していると時間がもったいないし、めんどくさい。
ロッドからリールを外さなくてもロッドを二つに分けてそのまま収納して、ポケットの上のバンジーコードで固定することで両手が使えるようになり、安全なんです。
また、予備の竿やカメラの三脚、トレッキングポールを固定することも可能です。

URM 釣りをする人には、まさに理想となるバッグですね。

横川 そう感じてもらえると嬉しいです。海外メーカーのバッグは、その土地に合わせた構造や既存の機能をそのまま踏襲したものが多いんです。釣りという意味では同じですが、日本と海外ではそもそも地形が違うので、その土地に合ったデザインが必要だと僕は考えます。
Afterglowのストリーム チェーサー バックパックは、日本人による日本のフィールドのためのバッグとして開発したので、ぜひその魅力を実際に日本の渓流で使って実感してもらいたいです。

オプションパーツやプロトタイプの新作も登場

URM バックパックの魅力は十二分に伝わりました。それ以外に、Afterglowはどんな商品がおすすめですか?

ITEM1  DEPOSIT DRYBAG 15L

DEPOSIT DRYBAG 15L
Price:¥4,180 (税込)
Color:BLACK
Size:Free

横川 バックパックと合わせて使っていただきたいのが「デポジットドライバッグ 15L」ですね。上部をくるくる巻いてパチンと止める一般的な構造ですが、背面にバックルが付いていて、バックパックの表面に取り付けできるんです。
これでトータル40リットル以上の容量になるんで、沢の中に泊まるような釣行にも対応できるようになります。
透湿防水生地を使用しているので、中の物も蒸れにくくていい感じですね。
普段はインナーバッグとしてバックパックの中に入れてカメラなどを仕舞っています。

横川 また、このドライバッグにはストリーム チェーサー バックパックのフロントに付けられるバックルを配置しているんで、バッグパックの容量をさらに増やすこともできます。

村手 バッグをベースにしてポーチやドライバッグをくっつけられて、使い手によって好きにカスタムができる、ということですね。

横川 まさに。今後もこのバッグを主軸に、いろんなオプションを販売するべく、いろいろなサンプルを作ってテストしています。

ITEM2 ロッドケース

村手 バックパックの横に挿さっているものはなんですか?

横川 ロッドケースです。まだ販売しておらず、こちらはプロトタイプになります。三角柱のデザインを採用していて、広げて二つ折りにして薄くして、不要の際はバッグの中に収納できるようにデザインしました。
現在は内側をオレンジにしていますが、実際に製品化する際はホワイトにしようかなと思っています。

ITEM3 ウッドルアー

村手 筒型の芯材が入ったロッドケースが定番ですが、三角柱はまた面白いですね。あれ、このルアーの顔が可愛い・・・(笑)。こちらは販売しているんですか?

横川 これはLIF HANDCRAFTというボクのハンドメイド作品を、奥さんが販売しているブランドです。
このルアーは、使い終わったスケートボードの板を材料にしていて、素材そのものの色を活かしています。だからクリアーのコーティング以外はしておらず、色は塗ってないんです。スケートボード以外にもいろいろな銘木を使ったルアーもあり、木目がきれいですよね。
ルアーの他にも、釣りやキャンプで使えるナイフや小物類、オリジナルブレンドのコーヒー、ハンドメイドスノーボードなどをラインナップしています。
今まではネット販売がメインでしたが、今年の夏からテスト的にユーザーさんの目の前で希望の板からルアーを削る、ライブシェイプというイベントをスタートします。

村手 個人的にぜひとも欲しいです。ぜひお店でワークショップを開いてもらいたいです。最後に、Afterglowの今後を教えてください。

横川 ネイティブトラウトを中心に釣りのジャンルは引き続きアイテムを充実しつつ、アウトドアで快適に着ていただけるアパレル類もラインナップを充実していきたいと思います。

現在のラインナップでも使用しているPOLARTECやプリマロフトなどの上質な素材も引き続き使用していきますが、現在オリジナル生地の開発にも力を入れていて、次の秋冬から生地メーカーと協力し独自に開発した生地を使用したアイテムがリリース予定です。
特にシェル素材は、かなり機能的で僕らの趣味にピッタリな物が出来上がっていますので、早く皆さんにも着てもらいたくてうずうずしています。
あとは、アーティストとのコラボや、仲間のブランドとのコラボも力を入れていきたいですね。
Aterglowは趣味人のためのブランドですので、同じ匂いがする人たちと趣味の世界を突き詰めていけたら楽しいかなと思います。

村手 将来が楽しみです。この度はありがとうございました。

> 「Afterglow」の公式ページはこちら

URBS(URBAN RESEARCH BUYERS SELECT)
ONLINE STORE
> Instagram @ ur_buyersselect

Photo/Manami Watanabe
Edit & Text/Michihiro Ogawa

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