THE GOODLAND MAGAZINE Vol.04 This is
『アーバンリサーチ 堀江店』内に常設する<THE GOODLAND MARKET(ザ グッドランド マーケット)>。サステナブルを軸にクリエイティビティ溢れるプロダクトをセレクトしています。ブランドのストーリーを聞く連載企画、第4回目の今回は、千葉県の九十九里に移住したカワムラさんが手がける<This is(ディスイズ)>にフォーカス。自身もサーファーというカワムラさんの、海の近くの自宅兼アトリエにお邪魔してきました。
※ 撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで取材を行っております。
デザインの力で、エコを気軽に。
ポジティブなスタンスが教えてくれること
こんにちは。さっそくですが、<This is>立ち上げのきっかけについてお伺いしても…?
はい。ずっと都内でグラフィックデザインの仕事をやってまして。今もしてるんですけども。で、4年ぐらい前ですかね。2017年の年末に千葉に引っ越してきて。そのあたりから、けっこうオンラインでの仕事が増えてきてたんですね。
デザインでしたら、確かにそうですよね。
僕がデザインをはじめた頃は、事務所がある住所が大切だったりとか、固定電話とかFAX持ってなきゃダメだったり、そういうのがマストな感じだったんですけど、なんか2017年くらいから、けっこう…なんだろ、オンラインが仕事のツールになっていて、意外と千葉とかでもできるのかなってずっと思ってたのがあって。一回ちょっと移住ってのも重いんで、僕サーフィンやるんで、なんかサーフィン留学みたいな感じで(笑)、一年ぐらい引っ越してみようかなって軽い気持ちで移住したんです。そしたらハマりが良かったというか、なんのストレスもなかったんで。で、住み着いてしまった感じです。
引っ越されてからすぐブランドを?
はい、その流れでせっかく海際に引っ越してきたんで、サーフィンを通して、今まで東京でデザインをしてきて思ってきたこと、デザインや環境、世界についてアウトプットできないかなと<This is>というブランドを始めたってのが経緯ですね。
<This is>で一番最初に作ったアイテムは何だったんでしょう?
一番最初に作ったのはペンですね。
えっ?
ペンです。
あっ…(笑)
This is the Penを…。はい、すみません(笑)。そうなっちゃいましたね。これですね。今も発売してます。このペン、世界中のいろんな国で使っているスタンダードなボールペンなんです。そこに敢えて「これはペンなんです」=「This is the Pen」と入れてみる。そのことで改めて何気なく使っている「もの」ってなんだろうって考えてもらうきっかけになればと。はじめに作った「Tシャツ」「ペン」「ペーパー」(パッケージにも使っているポスター)などに共通するコンセプトです。
いろんなものが溢れているじゃないですか。そんな中に普遍的なメッセージとして、消費していくだけじゃなくて、いろんなものが溢れかえっている「もの」、そのものの価値を考えようよ、って言う意味でブランド名も「This is」にしました。
あっ…(カニが部屋の中に…)
いろんな生き物と共生してるから…すみません(笑)。海の近くに住んでると環境の変化を肌で感じることが多くて。ブランドのプロダクトづくりも、どうせサーフィンやってるし、自分たちの環境にちょっとでもいいことをしたいなっていうのがあって。
Tシャツはオーガニックコットンも出されてますよね。
オーガニックコットン100%のTシャツがちょっとでも地球に良いならやってもいいかなって。で作ってみたら、柔らかくて肌触りもすごく良い。始めた頃から作っていたヘビーオンスのしっかりした素材のTシャツとはまた違う魅力的なプロダクトになりました。
じゃあ今後も2種展開ですか?
オーガニックにシフトしていきたいっていうのはあるんですけど、ヘビーオンスの丈夫なTシャツをがんがん洗って長く着るっていうのもひとつのエコだとも思うんです。
「This is the Tee」とプリントするTシャツが世界でスタンダードなコットンTシャツであるとするのであれば、それはオーガニックな作り方をしているものっていうのがきっと、ちょっといい世界なんじゃないかなと思います。農薬とか使わずに作っていけることが、コットンを作る上で普通っていう。そういう意味で、オーガニックコットンが「This is the Tee」になるっていうのが最終的にはいいかなって思ってます。
すごく共感します。あと、モミガラを使ったクッション! かわいいですよね。
そう、この辺りけっこうお米が有名なんですよ。うちもけっこう田んぼの真ん中にあるんですけど、なんかね、モミガラってめちゃくちゃ出るんですよね。
モミガラって? 米を剥いた時の殻ですか?
そうですそうです。秋口に収穫が終わるとモミガラの山みたいなのができてて、台風シーズンとかそれがぶわーっつって、モミガラだらけになるんですよ。それくらいいっぱいなんですよ。それでなんかこれクッションにしたらどうだろうみたいな。それってアップサイクルじゃないですか。それはいいなってなって、それから始めたんですよね。
すごく自然な流れだったんですね。ちなみにこのキャラクターは??
フィッシュくん? コレはですね。僕が作ったサーフボードの後ろに顔を…こうやってデザインしたんですね。
顔…? あー!なるほど。これがモチーフになってたんですね(笑)
魚みたいにここの部分がヒレみたいになって、フィッシュっていうんですよ(笑)
<This is>さんってコーヒーとかも展開されてますよね?
僕コーヒー好きで。毎日飲むんですけど、もうすごいダークローストなコーヒー飲みたいのにあんまり売ってなかったんで、ちょっと自分たち飲む用に作ろうって感じで作ったんですよ。自分たちが欲しかったりするものを作っていく中で、それが商品になっていくこともあります。フェアトレード、オーガニックなどコーヒーを取り巻く世界を知ることもできました。正直勉強不足な部分も多くて、驚いたんです。This isがコーヒーを出すことでその部分に興味を持ったり調べてくれるきっかけになったらいいな、と思ってもいます。
カワムラさんの1日のルーティーンってどんな感じか気になります。
僕は…3時半前くらいに起きて、そのまんま海いきます。で、6時半とか7時までサーフィンして、家帰ってきて、そんでちょっとそこからチルなタイムをして、で10時くらいから仕事やってますね。コーヒー飲んで、6時くらいにはお腹空いちゃって。そんで8時くらいには寝てることけっこうあるんじゃないですか!? 10時っていったらもう真夜中な感じ(笑)
都内の頃の暮らしのサイクルとは全然違いますよね。
違いますね~。都内の時は朝は11時から仕事だったんですけど、それで仕事するじゃないですか。遅くまで仕事、仕事で、どうだろ、ひどいときは夜中の2時ぐらいから飲み始めて…朝5時6時まで飲んで、寝て、また11時から働くって感じだったんで、そう考えると完全に12時間くらいサイクル変わりましたね。
飲みがなくても、今は全然いけるんですね。
そうなんですよ! それが一番びっくりして!
(笑)
一番そこが不安だったんですよ。どうしよう、夜何もすることがない! みたいな。
それもすんなり…?
すんなりっていうか…もうほんと日が暮れたらお店もないし、やることないんで受け入れるしかないっていうか…。案外自然にいけたけど、引っ越す前はそれが一番不安でしたね。「暗ーい」って(笑)
そういう、カワムラさん自身の暮らしの変化が、プロダクトのアウトプットに影響してる部分ってあったりしますか?
あー。あると思います。やっぱりこう、なんかうまく言えないけど、東京にいた頃ってやっぱり情報量というか、デザインとか文字とか映像とか、ファッションとか含めてなんですけど、そういうのにアンテナ張ってるし、そういうのがいっぱい入ってくるじゃないですか。それがこっち来るとむしろ葉っぱとか。四季とか、どうだろうな、自然からの情報っていっぱいあって。春先とかほんと情報量すごいですね。カエルだったり、ザリガニとか、緑とかが一気に爆発するって感じが。そういうのってうまくいえないけど、ものすごく僕はいい影響を受けてる気がします。
作るものが変わったという感覚ってありますか?
作り方は変わったと思います。作ってる時間に余裕ができてきた気はしますね。
その中でもカワムラさん自身の推しのアイテムってありますか?
このTシャツ(This is the Tee)かな。あとはキャンドル。
サーフワックスをリサイクルして作ったという?
そうそう、サーフボードのワックスって、これ滑り止めで使うんですけど、定期的に剥がすんですよね。こうやってリムーバーとヘラみたいなやつで。この剥がしたワックスを、今何ヶ所かに回収ボックスを置かせていただいて*、それを集めて濾過して、キャンドルにしてます。作るのけっこう楽しいですよ。
カワムラさん的にサステナブルについて思うことってありますか?
きっかけを作れたらなって思うんですよ。考え方や見方によって、トートバッグってそんなにエコじゃなかったりするじゃないですか。そういうのって、世界にたくさんある。けっこう僕の中でもあって、でも、ビニール袋が有料になったことが環境やエコについて考えるきっかけにはなったし。そこにもいろいろな矛盾があるのももちろんですが。
本当にそうですよね!
ファッションってアイデンティティを着るみたいなところがあると思います。デザインで何かできることがあるとするならば、そのアイデンティティにささやきかけて、変化へのきっかけをつくることはできるのかなと思います。それが地球のためになることならば、自分たちのやっていることの存在価値になるのかなと…。問題は大きくて複雑だからこそ、シンプルで小さなきっかけがたくさんあったほうがいい。
地球環境とかってすごく難しく考えがちですけど、<This is>のプロダクトって、それこそタンブラーとかエコバッグとか、一番はじめのきっかけになるものばかりですよね。デザインも本当に良くて、ライフスタイルに気軽に取り入れやすいのが魅力だなって思います。等身大というか。
サステナブルって自分も悩んでるところでもあるし、エコバッグのこととか、世の中ってそういうどうしようもない矛盾がすごく多いんだけど、「ちょっといいこと」に関しては肯定的だと思います。みんな「ちょっといいこと」がしたい。THE GOODLAND MARKETなんかも共鳴できたらすごくよくなったりするのかなって。だからそういう、自分ができる範囲のことはやりたいし、僕の場合はデザインなのかなと思う。アンテナ張って探しながら、目の前のできることからやればいいのかなって僕は思います。
※ <ユーズドワックス回収ボックス設置店>
Atlantic Coffee Stand
fato
リバティサーフ
Parasol
chp
SURFGARDEN SHOP&CAFE
Sequence
カワムラヒデオ
<This is>メンバー。グラフィックデザイナー。「根本的にはリユースというか、捨てられるものをデザインの力で新しい価値を与えられたらなって思います。あとはメッセージのようなものをアウトプットして。僕らもまだまだ発展途上なので、いろいろなところから刺激をもらいながらスキルアップしていきたい」
HP : www.thisis.surf
Instagram @ thisis.surf