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CULTURE TRIP APR 25,2018

【踊れ!台湾】台所はこの街全部。台湾のごはんは賑やかで美味しくて、自由だ。

美味しいものを目の前にすると、人は心が踊り出す。そこに鍋や鉄板から聞こえるじゅうじゅうという音、客同士の話し声、口に入れた時の食感の面白さ。そういうものが台湾の食をいっそう楽しく、リズミカルにしてくれる。


いわゆる個人商店のお店は小吃(シャオチー)と呼ばれる。もう少し店構えの大きなレストランは餐廳(ツァンティン)。ちなみに日本人はよく勘違いしてしまうが中国語で「飯店」はホテルのこと。

どんどん食べて、がんがん喋る。シンプルで活気のある1日

夫婦共働きがデフォルトの台北では、外食文化が盛んだ。安くて美味しくて、楽しくて選択肢の幅広い外ごはんは、台湾のカルチャーを胃袋から支えているのである。また量もたっぷり。日本人と比べるとその健啖な食欲には圧倒されることもしばしば。また食べながらのおしゃべりも盛んだ。日本では「食事時は静かに」などと言われることが多いが、ここ台湾ではおしゃべりの声も大事な食事時のスパイスなのだ。

台湾の街中には路地に面した小さなお店や屋台がたくさんあり、見飽きることがない。目移りするほど多種多様で多彩な料理。大きな鍋で、これまた大きなおたまでがんがんと食材を炒める姿。もうもうと揺れる小籠包の湯気。「ちょっとだけ辛いよ」と言われた調味料は食べた一口目に、口から火を噴く辛さ。旅行者は台湾の屋台ではいろんな意味で踊ってしまう。郷にいっては郷に従え。賑やかに食べることにいくばくかの背徳感を覚えながらも、独特なリズムに身を任せながら食べる屋台ごはんは、なるほどうまい。

台湾人の朝の胃袋は大抵、鹹豆漿(塩豆乳)でできている。

家族での朝ごはんも外食する家庭は多い。どの国でも朝は大抵忙しい時間であるから朝ごはんといっても時間はかけられない。出勤前にさっと食べて体にいいもの。だから鹹豆漿(シェントウジャン)という塩豆乳があるごはん屋さんに行くという人が多い。

朝から晩まで地元民がひっきりなしに訪れる「永和四海豆漿大王」。人気の鹹豆漿・甜豆漿のほか、菓子パンや餃子などたくさんのメニューが揃う。

あったかくてちょっととろりとした鹹豆漿に、お腹のすき具合と相談して油條(ヨウティャオ)という香ばしくてちょっと甘い油揚げとドーナツのハーフみたいなものを刻んだのと、針生姜を乗せ、辛味のある調味料をたっぷり回しかけて体を温める。
甘いバージョンの豆乳(甜豆漿 ティエントウジャン)もあって、豆乳“甘い派”と“しょっぱい派”の長き戦いがあるとかないとか。まあ日本でいうおかゆ的な食べ物である。とはいえボリュームはしっかりある。見た目はシンプルだが、食べ終えれば案外どっしりとくる。ちなみに甘いバージョンには豆などをたっぷり入れることも。これまたしっかりお腹に溜まって栄養豊富な朝ごはんである。

01.大きな鍋にたっぷりとつくられた豆漿。ほのかな甘い香りがあたりにただよう。 「空気を入れるようにかき混ぜるのがとろりとするコツなんだよ」。そういいながらおばさんは大きなどんぶりをお玉代わりにしてかき混ぜていた。ちなみにこの豆漿、夜食としても人気だそうだ。たしかに1日働いて、疲れた体を癒すのにもちょうどいい。 
02.これが鹹豆漿。塩豆乳といってもしょっぱすぎず、あっさりとしていて豆乳の甘みが伝わる味。(スタッフ撮影)
03.茶色いものが油條。刻んで豆漿にいれたり、蛋餅の具にしたりといろんな場所で活躍する具材だ。(スタッフ撮影) 
04.手が空けば皆で餃子を包む。包んだ端から売れて行くので一日中大忙しだ。
05.超人気店なので、食べ終わったら片付けはセルフで。あっという間に空の蒸籠が積み上げられて行く。

たいていの人はこの豆漿に加えて蛋餅(ダンピン)という溶き卵を小麦粉の皮で包んだモチモチでトロトロでプルプルしている、口当たりのユニークなクレープ状ものを一緒に食べる。豆漿と蛋餅、二つ合わせるとかなりのボリュームなのだが若い女性もこのくらいペロリと平らげていた。

兎にも角にも小籠包。そして水餃子に蒸し餃子。蒸篭の湯気が踊る、至福の時。

点心やチャーハン、胡椒餅などが気軽に食べられる「蘇杭點心店」の小籠包。今回の旅の、最初のご飯だったこともあり夢中でかぶりついた。

中華料理におなじみの八角など、香りの強い香辛料を苦手とする日本人は少なくない。今回日本から一緒に行ったスタッフも、6人中2人が苦手だという。だがしかし、小籠包と餃子を嫌いな日本人は稀ではないだろうか。そのくらい日本でも根付いたメニューである。八角苦手派の二人も、オーダーした点心が蒸しあがるのを今か今かと待ち構えている。
もちろん“日本式餃子”も好きだ。だが本場の小籠包や餃子は、はるかに予想を超えたうまさがある。何よりも皮がうまい。地元民が美味しいという点心屋さんの皮はまず手作りのものである。以前中国に留学した時に、なぜか「餃子を皮から作る」授業があったのだが、その時に手作りの皮のうまさを知った。その授業の単位は、1分間に皮を丸く伸ばしながら餃子をいくつ包めるか、で合否が決まるものだったのだがおかげで今でも餃子包みは得意だ。

今回は台湾人スタッフがアテンドしてくれたこともあり、ほぼ毎日のようにうますぎる小籠包と餃子にありつけた。日本人の感覚だとどの店もうまいのだが、何日か滞在するうちに口がおごってきて「その中でも特にうまい」味がわかってくる。日本の美味しい定食屋同様、お店の内装にはあまり気を使わず、お店の人が元気に働いていて、そして路地裏など何気ない場所にある。そんなお店が美味しい気がする。

湯気を立てて蒸籠がやってきた。中のスープがタプタプと揺れる小籠包を一つ、皮が破けないようにと祈りながら、でもその重みを楽しむかのようにそっとレンゲに移した。

そろりと箸で穴を開けるとジュワッと染み出す肉汁入りのスープ。
それをすすり、少し冷めたかというところで一口で頬張る。

蒸したての小籠包はそれでも熱く、ハフハフと舌の上で転がしながら飲み込む。猫舌のスタッフは、熱さのあまりタップダンスを踊るかのように足を揺らす。
中にスープがあるぶん、皮と餡の間にはほのかな隙間があり、この隙間に黒酢などの調味料が滑り込んでなんとも素敵な味のハーモニーを奏でる。だから熱くともぜひ、一口でがぶりと。

毎日地元民と観光客の行列ができている「福大山東蒸餃大王」の餃子。

さて、次はお待ちかねの餃子について。ご存知の人が多いかと思うが台湾や中国では焼き餃子は一般的ではない。たいてい蒸すか、水餃子にする。
手作り皮のもっちり感を生かすならば、だんぜんそちらの方が美味しい。また手作り皮は伸びも良いからか、どのお店の餃子も餡はぎっしり。茹でたり蒸したりした餃子の皮は、ぴっちりと餡にはりつき、なんとも艶めかしいツヤを放っている。皮と餡がお互い離れまい、とがっしりと抱き合っているかのようにも見える。だから調味料をつけてもそのほとんどがするりとすべり、その分、皮と肉のうまさがダイレクトに伝わる。
スープの中で餡が悠々と泳ぐ小籠包とは違い、餃子はこのがっしり感が美味しい。

01.ずらりと並ぶ小菜。つい色々食べたくなる 
 02.個人的にもっとも好きな小菜はこの「しじみの醤油漬け」。生のしじみを醤油に漬けたものだが、お茶にもお酒にも合う名品だ。

こういったお店にはもう一つ楽しみがある。小菜と呼ばれる作り置きの小皿料理だ。日本で言うところの箸休め的なものなのだが、豆腐や青菜などを炒めたものやピクルス(台湾のピクルスは少し甘めのが多い。泡菜と呼ばれるキムチもおすすめ)などがあり、お腹具合で色々と選ぶのが楽しい。
たいていのお店はどこか1カ所にこの小皿がずらり並べてあるので、自由に選んで大丈夫(もちろん有料なので後でお会計に加算される)だ。
熱々の小籠包や餃子の合間に、大根の漬物などをぽりぽりとかじれば永遠に食べ続けられる気がする。

同じく台湾名物といえば小さなお椀に入った麺や湯(スープ)物がある。台南発祥の海老そぼろ肉が入った担仔麺(タンツーメン)や、そうめんのような細い麺を煮込んだ麺線(メンシェン)、牛骨ベースの牛肉麺(ニューロウメン)などなどすでに日本でもメジャーとなったメニューはたくさんある。

台湾式シェアも楽しいめくるめく麺と湯(タン)の世界

夕方まで取材が立て込み、その後夜が深くなったら夜市にいくというスケジュールの日があった。くたくたなのと、まだまだ長い夜のために、現地スタッフに“さっと食べられて元気になれるもの”をリクエストした。
ついたところは牛肉麺が美味しいという小さなお店。
小籠包や餃子同様、麺や湯(スープ)のお店も、街中にこっそりある小さなお店ほど名店が多い。このお店もその法則に則って、かつて食べた牛肉麺の中で飛び抜けてうまかった。
帰国後、スタッフに「台湾で食べた美味しかったもの」を聞いたところ、ほとんどの人がこれをもう一度食べたい、と言っていたほどだ。

東京からの全スタッフを虜にした『富宏牛肉麵』の牛肉麵。

牛肉麺 中サイズ(日本人の通常ラーメンサイズ)で100元。約400円でこれほどまでに味わい深いスープが飲めるとは感動だ。
上質な牛骨スープはなぜか爽やかな草原の味がする。クリアな旨味に、ほんの少し牧草のような肉らしからぬ甘い香りを感じる。だからあっさりしているのに深みがある。ここでは麺は細麺から太麺まで選べた。個人的にはスープに程よく絡む太麺をお勧めしたい。
そして食べ進めながら好みで辛い調味料などを足してゆく。生ニンニクもあり“皆で食べれば(匂いも)怖くない”とばかりに投入してみた。

01.大きな鍋の中で炊かれた牛肉。ほろりと崩れるほどやわらかい。 
02.ニンニクは皮をむいてスープへ投入。
03.辛味調味料。ちなみにオレンジと茶色のものは味に違いはなかった。

ここで面白い台湾ルールを知った。

台湾では料理をシェアするのは当たり前の文化であるが、例えばこういうお店に来た時に一人が麺入りを頼み、もう一人はスープのみを頼む。そして“麺”をシェアする。日本でもシェアシステムは一般的であるが(居酒屋など)、この麺シェアは面白いと思った。ちなみにスープのみでも具材がしっかり入っているので結構なボリューム。次に友達と来る時はこのシェアをやってみたい。

別の日、北投温泉公園近くで“ここのお店、美味しいんです”とスタッフが案内してくれたお店に入った。ここは「肉羹麺」が有名だとか。

肉羹(ロウカン)とは豚の赤身の周りに魚のすり身を衣にしてつけ、茹でたもの。かみごたえのある赤身肉と、プリプリとしたすり身の組み合わせが面白い。例えるなら肉かまぼこといった感じ。非常にボリュームはあるけれど外側のすり身がつるりとしていて口当たりがよく、スープもあっさりしているのでするっと食べられる1杯だ。

基本的に台湾の麺も湯も薄味なので、一口目は物足りないと思うかもしれない。が、二口三口と食べ進めるうちにその薄味の中の旨味を感じ始める。また食べ進めるごとに置いてある調味料を足して好みの味を作るのも楽しい。

台湾名物魯肉飯(ルーローハン)も美味。そこまでサイズも大きくないのでシェアして食べるのも良い。

ここは地元民に大人気のお店だそうで、気がつけば店先にはテイクアウトの行列ができていた。

01.北投の人気店『漢奇肉羹』。お昼時をはずしていったが、それでも満席だった。 
02.これが肉羹。みためは蒲鉾のようである。 
03.「人手不足」という人気店ならではの切実な店員募集の紙が。

伝統菓子から日本式かき氷まで。台湾の甘味でひと休み。

ここで甘味も紹介したい。
台湾での甘味のイメージは、タピオカミルクティーやマンゴーかき氷、夜市などで見る飴がけの果物やトマトなどが有名どころか。台湾のお菓子などの“甘さの度合い”は日本に似ているように思う。その多くは素材の風味が損なわない程度の、さっぱりとした甘さ。
今回はそんなさっぱりスイーツに出会った。

まずは「伝統菓子」のお店。非常にスタイリッシュなお店だが、聞けば70年もの歴史がある伝統菓子の「上海合興糕糰店」が新しく大稻埕にオープンさせたお店だそうだ。

鬆糕(ソンガオ)という、米でできたモッチモチの上海風蒸菓子は口に入れるとほろりとほどけ、さっぱりとした後味。和菓子だとかるかんに近い雰囲気だ。見た目も非常に風流である。伝統菓子の製法はそのままに、モダンアート的なデザインを取り入れたというここの鬆糕は、若い人にも人気だ。店内で食べる場合は一度蒸してくれるので熱々、ふかふかが楽しめた。

01.素朴な昔ながらの味と、現代的なデザインを取り入れた鬆糕(ソンガオ)。甘すぎずさっぱりとした味です。
02.お菓子を入れてくれる袋もおしゃれ。 
03.店内には蒸し器があり、丁寧に温めてくれる。

スイーツをもう一つ。人気観光地の淡水ではなんと「日式(日本式の)かき氷」に出会った。

オーナーは以前沖縄に住んでいたとかで、当時はダイビングスクールで働いていたそうだ。

毎日昇る朝日を見ながら海へ向かう。その思い出の“朝日”と、夫婦で始めたお店だからと店名は「朝日夫婦」と名付けた。素敵な名前である。

朝日夫婦は淡水駅から少し歩いたところにある川沿いに建てたアパートメントスタイルの建物の一角にあった。

さて、日本では“台湾のかき氷”が人気である。たっぷりのマンゴーなどの果物と山のような氷との相性はたまらなく美味しい。

だが、ここは「日式(日本式)」である。実際、日本から輸入したというかき氷機を使い、抹茶や黒糖など日本の味を中心としたメニューを出していた。

日本式、と聞くとついお祭りの屋台で食べるガリガリのかき氷を思い出すが、今は「日本式」と言えばふわふわの氷を指すらしい。台湾で日本のかき氷事情を知るとはなんとも不思議だ。

去年(2017年)にオープンしたばかりだというが、台湾では日式が珍しいのと人気の観光地ということもあって毎日お客さんで溢れている。

さて、台湾で食べる日式かき氷の味は。

まずは手作りの甘酸っぱいピタヤ(ドラゴンフルーツ)ジャムをかけたものをオーダーし、スプーンに山盛りに乗せたかき氷を一口。

ふわり、と感じた時にはもう口の中にはジャムの甘い余韻しかない。そのくらい繊細で、まるで綿菓子のようにあっという間に口の中で溶けてしまった。その不思議な感覚と程よい甘みが後を引き、スプーンが止まらなくなる。

他にも泡立てた抹茶や、黒糖味もオーダーしてみたが、いずれも甘み具合が非常によく、日式だけどどこか台湾的な雰囲気もあって、全て美味だった。取材した日はあいにくの雨模様だったが、暖かく晴れた日は川を見ながらデッキでも食べることができるそうだ。ふと入口を見ると「非常に溶けやすいかき氷です」との注意書きがあった。

そうか、日本のかき氷はこんなにも繊細な味になっていたのか。

01.オーナーが丁寧に削り出した、山盛りを超えた、超山盛りのかき氷。 
02.ジャムはすべて手作り。程よい甘さがかき氷に合う。
03.ふわふわに泡立てられた抹茶。練乳をとろり垂らしていただく。 
04.黒糖味。コクのある甘さが味わい深い。
05.台湾スタッフもふわふわのかき氷を気に入ったそうだ。 
06.店内から外を見るとボートがゆらゆら。のんびり(かき氷が溶けない程度に)した時間を過ごしたくなる。

しかしこうやってお互いの国のかき氷が交換留学のように海を渡り、それぞれの国で人気者になっているのは、少し面白いと思った。

台湾伝統料理は優しく、滋味深く。おふくろの味、みたいだった。

今回は主に小籠包など街中のお店で食べることが多かったが、淡水でのお昼ご飯ではいわゆる“台湾料理レストラン”に行ってみた。
台湾スタッフのひとり、チャンアイのお父さん行きつけのお店だそうで、街中の小さいお店とは一味違う台湾伝統料理を食べることができた。

01.海鮮料理が有名な「福来海鮮餐廳」。ここは1階に海産物の水槽があり、魚などを選んで調理してもらうこともできる。 
02.野菜もみずみずしくて美味しそう。 
03.ここもまたおばちゃんたちが笑顔で働いている。やはりこういうお店は美味しい。
04.2階部分がレストラン。大人数で食べるときは便利な円卓方式 
05.写真右下の細長い貝がマテ貝。非常に甘みの濃い貝である。
佛跳牆。壺の中に具材がぎっしり

ちなみに台湾の料理をいわゆる中華料理と同じように思う方も多いと思うが、主に福建省から伝わった中華料理に、地元の原住民族の味を取り入れ独自に進化したものが台湾料理である。ものすごくざっくり言うなら、台湾料理は非常に素材の味を大事にする薄味、あっさり系が多く、だからこそ日本人には非常に口なじみが良いのだ。

もちろん中華おなじみの八角や乾燥させた生姜など、香辛料の使い方のセンスは抜群。余談だが、例の八角嫌いの日本人スタッフ二人も、ばくばくと食べ進めながら「あれ、台湾の八角入り料理は結構美味しい」と思ったそうだ。

恐るべし!台湾料理。

さて、このご馳走の数々。白身魚を蒸したもの、日本でも九州地方以外あまりなじみのないマテ貝の醤油漬け、カニの香り豊かなおこわ、ニンニク薫る青菜などなど。まさに大ごちそうだ。

中でもお正月に食べるといわれる「佛跳牆(フォーティァオチャン)」が美味しかった。“お坊さんが壁を飛び越えるほど(美味しい)”という名のこのスープは、クコなどの薬膳の具材と、芋や栗、肉、団子、うずらの卵などが入っていた。お店によって味は違うそうだが、ここのは「すごく美味しい薄味の筑前煮風スープ」という感じ。あっさりしているのだが具材の味が全てスープに染み出していて、明らかに肌にも良さそうだ。濃い味好きの男性スタッフはあまり興味がなさそうだったが、私を含め女性スタッフはひたすらすすり続けた。明日の肌を信じて。

街中の小さいお店とは違い、こういうレストランでは少し値は張るけれど(それでも日本よりは安い)台湾料理の極意が味わえる。

チャンスがあれば是非一度味わってみてほしい。

男性スタッフが一様に気に入っていたのが、”パンにエビのすり身を挟んで揚げたものに、砂糖をまぶした”サンドイッチ。なんともハイカロリーな一品だが、後を引く甘じょっぱい味で、病みつきになった。

鍋は世界を救うかもしれない。そんなことを考えた火鍋の夜。

東京・台湾スタッフ皆が楽しみにしていたのが「火鍋」である。日本でも火鍋を出すお店は増えてきたが、薬膳具材の種類や、スープの滋味深さを考えるとやはり台湾現地でいただくのが美味しい。
台湾の人も大好きなメニューで、スーパーにはお手頃な冷凍具材入り火鍋セットや、薬膳の材料とスープだけのインスタントセットも売っていた。
知らない人は少ないかとは思うが念のために説明しておくと間仕切りされた鍋に2種類のスープを張り、お好みのほうのスープで具材を煮るという鍋だ (1種類の場合もある)。
豚骨と鶏の骨ベースの白濁スープと、唐辛子や花椒(山椒)などが入った真っ赤な辛いスープ。辛いと言っても旨みの方が優っているので、「辛いけどつい飲んでしまう」味である。白いスープの方もあっさりしているけれど漢方的な不思議な旨味が混ざり、しみじみ旨い。
訪れたのはなかなか予約が取れないという人気店『無老鍋』。「老けない鍋」なんて、名前からして薬効がありそうな気がしてくる。
スタッフが12人いたので、足りなければ追加すればいいやと少し少なめに「10人前コース」というのを頼んだ。が、テーブルに乗り切れないほどの肉、野菜、団子、エビが次から次へとやってくる。日本の鍋セットの感覚で頼むと、その倍くらいの量の具材が来るので注意だ。
これはもう食べるしかない。ひたすらみんなで箸を動かし、汗をかきながら喰らい尽くす。お腹はいっぱいなのだが、また違う種類の肉や野菜がテーブルに来るとつい箸が伸びる。

01.ここでも具材として油條(ヨウティァオ)が登場。
02.無老鍋名物の「アイスクリーム豆腐」。凍ったままの甘い豆腐を10分ほど煮込む。スープの味を吸って甘いけどしょっぱい、不思議な美味しさだった。 
3.日本同様基本は自分たちで鍋に具材をいれるが、時々お店の人が団子などをささっと入れてくれたりも。
04.お肉だけでもロース、赤身、バラなど様々な種類があるので味に飽きることもない。またこれらがよりいっそう味を深めてくれる。 
05.この鍋には台湾ビールがぴったり。普段あまりお酒を飲まない台湾人スタッフもこの日ばかりは一緒に乾杯。

日本ではあまり見たことのない野菜や、魚の皮だというぷるぷるとしたもの、種類の違う新鮮なエビ、様々なすり身団子。
そういった材料を投入するたびに、具材の出汁がスープにうつり、またスープの味が具材に染み込み、そのせいで箸がまたもや進み、「もうお腹いっぱい、これで限界」という言葉を3、4回ほど繰り返し、本当に本当、もうこれ以上はダメ、なところまで各々胃袋に詰め込んだのだった。
ちなみにさすが薬膳鍋、次の日の朝にはすっかり消化されお腹はすっきり、肌はモチモチになっていた。今こうして思いだすとまた食べたくなる。それほどに魅惑的な鍋なのである。
日本でもそうだが、同じ鍋を皆でつつくのは楽しい。鍋の湯気が、皆の心を和やかにし、時に具材を取り合ったり、美味しいものを勧めあったり、そうやって親睦がどんどんと深まる。アジア以外で一つの鍋をつつくという文化はあまり見られないそうだが(そもそも鍋料理があるところが少ないが)、これほど人同士が仲良くなる場もないと思うのだ。鍋は世界を救うのではないか。本気でそんなことを思った。

おまけの話。

スタッフが嬉しそうに抱えているこの緑色のパッケージのお菓子は、昔から台湾の子供たちが大好きだという「クワィクワィ」。“良い子にしててね”という意味だそう。形はカール、味はココナッツ風味でサクサクしていて美味しいお菓子だった。

ちなみに写真のものはお正月特別パッケージのようで、この大きい袋の中に小袋がいくつか入っていた。

パッケージの後ろにはペンで文字が書き込めるようになっていて、

例えば調子の悪いパソコンや電子機器などに「良い子にしててね、パソコンさん」などと書き込んでそっと乗せる、というおまじない的な風習もあるとか。日本でいうキットカットが受験生のお守りになるようなものである。

永和四海豆漿大王

105台北市松山區民生東路四段112巷5弄25號

営業時間 : 17:00-11:00

定休日  : なし

蘇杭點心店(小籠包)

100台北市中正區羅斯福路二段14號

営業時間 : 11:00-20:30

TEL : 02-2394-3725

福大山東蒸餃大王

104台北市中山區中山北路一段140巷11號

営業時間 : [月~土] 11:30-20:30

TEL : 02-2541-3195

富宏牛肉麵

108台北市萬華區洛陽街69號

営業時間 : 24 小時營業

TEL : 02-2371-302

漢奇肉羹

112台北市北投區光明路48號

営業時間 : 06:30-15:30

TEL : 02-2898-4146

定休日 : 火曜日

上海合興糕糰迪化文創店

103台北市大同區迪化街一段228號

営業時間 : 11:00-19:00

TEL : 02-2557-6829

URL:http://www.hoshing1947.com.tw/

定休日 : 月曜日

朝日夫婦

251新北市淡水區中正路233-3號

営業時間 : 12:00-20:00

TEL : 0903-290-575

URL:www.facebook.com/asahihuuhu

淡水 福来海鮮餐廳

251新北市淡水區中正路212號

営業時間 : 10:00-21:00

定休日 : なし

無老鍋(台北市民店)

104台北市中山區市民大道三段143號

営業時間 : 11:30-翌2:00

TEL : 02-2581-6238

定休日 : 年中無休

PROFILE

Naoko Kumagai
Photographer

幼少期より写真を撮り始める。20歳で渡仏し、パリにて本格的に写真・芸術を学ぶ。2003年よりフリーランスフォトグラファーとして雑誌・広告などでポートレートや風景など多ジャンルにおいて活動し、個展での作品発表も精力的に行う。主な著書/二階堂ふみ写真集「月刊二階堂ふみ」、杉咲花1st写真集「ユートピア」、熊谷直子作品集「赤い河」 

松尾 彩Columnist

フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

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