【踊れ!台湾】05 城市捜索少女 イーウェンと大好きな家族
台湾人はとても家族を大切にする。核家族化が進む日本と違い家族と一緒に住むという文化が根強い。台湾で出会った若者たちも、口々に「朝昼は外食をしていても夜は絶対にみんな揃って食べるんだ」と幸せそうな顔をして言った。
台湾では家族の絆が強い
イーウェン(郭怡彣)も父母、祖父、祖母と5人家族だ。
「親戚同士も仲がいいので、夏休みとか、おばあちゃんの誕生日にはみんなで集まるんですよ」。今回はいつもニコニコ、おっとり笑顔が可愛いイーウェンの家族を紹介してもらった。
自宅とは別に別荘があり、週に1回はそこで父母とイーウェンとでのんびり過ごすそうだ。
別荘地というだけあって、リビングの1面ガラスには外の青々とした木々がまるで絵画のように浮かび上がっている。またお父様の趣味だというアンティークの家具がその風景に調和し、ちょっとした美術館のようなお宅であった。
お父さんが集めている伝統的な台湾の焼き物を見せていただいた。
「1920年から30年くらいのお皿だよ。昔はご馳走なんて滅多に食べられなかったから、こうやってお皿にご馳走の絵を描いていたんだ」と教えていただいた。リビングには他にも様々な形の木の椅子や、台風で流された古い木を加工して作ったテーブルなどが置かれ、どれも自然な美しさがあって思わず見とれてしまう。
そしてコーヒーショップを開きたかった、というお父さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、取材に来た予定がいつの間にか友達の家に遊びに来ているような気分に。ふと他のスタッフを見ると、お菓子をつまみながら思い思いの椅子に座ってリラックスしている。仲のいい家族の中に入ると、気がつけば自然と自分たちもその一員になったような気になってしまう。
他にもお父さんとお母さんの馴れ初めを聞いたり、お父さんにアンティークの由来や作家について教えてもらったり。普段の生活(祖父母と住む家)ではお母さんも働いているので、主におばあちゃんがごはんを作ってくれるそうだ。お父さんに好きなおふくろの味を聞くと、「魯肉飯とカレーライス」と教えてくれた。カレーライス(日本風)は割と台湾では定着していて子供の頃から親しんでいる人が多いとか。日本人としてはちょっと嬉しい。しかし本当に仲の良い家族で、父母、娘とおしゃべりが尽きることがない。
そしてワイワイと話すうち、気がつけばあっという間に数時間経っていた。
ちなみに台湾の女の子には「門限」はあるのだろうか。
「門限がある家庭もあるだろうけどうちはないなあ」とイーウェンが言えば
「昨日なんて一蘭ラーメン食べてくるとかで深夜1時に帰ってきたものね(笑)」とお母さん。
もちろんこれは娘に甘いからではなく、こうやって毎日たくさん家族で話すことできちんと信頼が生まれているんだろうな、というのが伝わった。ここ数年ろくに親と話していない我が身を振り返り、帰ったら電話をせねば、と思うほど。
「お母さんはたくさんのことを知っていてとても優しい人。お父さんは優しいけど怒りやすい。よく怒られて泣いてます(笑)」。
信頼しているところは本人に任せるけれど、親として言うべきことはきちんと叱る。だからイーウェンものびのびと、でもしっかりした女の子に育ったんだろうなあ。
いろいろお話をしたが、ふと、お父さんに今回の旅のテーマの一つにしていた、「なぜ台湾人は優しいのか?」を聞いてみた。いろいろ話していただいたが、「気持ちをシェアすることを大事にしています。それは自分にも帰ってくるものだからね」という答えがとても印象に残った。
確かに台湾で過ごすといろんな“シェア”をもらうことができる。友達同士なら料理のシェア。小さなお店なら知らない人同士テーブルをシェア。また今回取材したお店の多くは、台湾にはなかったものを“みんなにシェアするため”にという気持ちでその場所を作っていた。
そしてその<シェアの気持ち>が一方通行ではなく、ぐるりと循環しているところが台湾のあの優しい雰囲気の理由の一つだと実感する。
まさに「情けは人のためならず」。多くの優しい台湾人には、そのことわざがぴったり当てはまっている気がする。