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CULTURE TRIP DEC 20,2018

【ニュートラソウル!】Vol.5『亀スーパー』オーナー パク・ジホ【恋しちゃったんだソウル】

100年くらい続く伝統的な城下町・益善洞(イクソンドン)。リノベーションエリアとして若い世代の新たな人気スポットになっているらしい。ここに飲食店『亀スーパー』を構えるパク・ジホさんに会いにいった。


いまソウルでは、伝統的な韓屋(かんおく)をリノベーションしたイクソンドンというエリアが注目されているらしい。細い路地が張りめぐらされた決して広くはない地域に、平屋で瓦屋根の小さな家々とともに、おしゃれなカフェやレストラン、ショップが並ぶ。

その中に、ひょっこりと存在しているのが『亀スーパー』だ。閉店時間の24時も近いというのに、たくさんのお客さんで賑わっている。自然のまま風化して崩れかけたコンクリートの壁に、入口にはスナック菓子やビールのケースが無造作に置かれている。雑然としているのに、不思議と懐かしさを感じるような、落ち着いた空間だ。

そのオーナーのパク・ジホさんに話を聞くことができた。

パクさんは韓国の南の方出身。3年前ソウル市に上京した。当時イクソンドンに店はあまりなく、韓屋のまま住民が暮らしていた。ソウルの騒がしい雰囲気に馴染めないでいたところ、この場所を知り、店を出店することに決めた。

「イクソンドンはまるで時間が止まったような、昔ながらの建築物を残していて、ぼくにとっての癒しの空間だったんです。田舎だと小さい売店でものを買って、おじいさんたちが外で飲んだりする光景も日常的。でもソウルの人にとっては珍しいんでしょうね。 だから、のんびりできる場所を届けたいと思ったんです」

レトロなのは店の雰囲気だけではない。お酒はビールしかないし、おつまみもスナック菓子か魚の干物がメイン。

「オープン当初は住民も多かったから、町の売店役っていうところもありました。ただただタバコやお菓子を買いに来る場所。でも、どんどん住む人もいなくなってしまって。今は町の癒しスペースとして存在できていたらうれしいです」

ビールしか置いていないのは、周りに住宅が多かったから、深酒をしてお客さんが迷惑をかけないようにするため。駄菓子が多いのは、昔ながらの懐かしい気持ちを思い出してほしいから。

イクソンドンは、ソウルで一番長い歴史のある場所だ。だから、屋根や柱は大事に守りつつ、リノベーションしていく必要がある。

「ここには、この場所が好きな人たちが集まってきているんです。どんどん人が増えて、今ではもう空き家がないくらいになってしまった。ぼくがここに来た時は、クラシックとレトロで守られている町だったけど、賑やかになりましたね。町全体が変わって、嬉しい気持ちが半分、すこし残念でもあります。でも、ここに来たなら人との絆や情けを守って生活していってほしい。人との絆こそが韓国というのを伝えていきたいんです」

店名につけられている『亀』には、せわしないソウルにいても、ゆっくりとした時間を過ごしてほしい。そんな意味が込められている。

店の壁には結婚式の写真が。そんな家族を大切にするパクさんの、のんびりとした優しさが、店の癒される雰囲気を作り上げているのだと思う。

話を聞いている間、焼いてくれたタラの干物とビールが思いのほか進んでしまった。ほろ酔い気分でながめるイクソンドンの町は、ゆるやかでおだやかで、きらきらしていた。

忙しい流行に疲れたソウルの若者や、海外からソウルに来た人が、お酒とすこしのツマミで一日の出来事をゆっくり振り返るような、そんな時間をここで過ごすことができたらいいなと思ったのだった。

パク・ジホ / 亀スーパー オーナー

<亀スーパー(コブギスーパー)>
ソウル特別市鍾路区水標路28キル17-25
営業時間:
平日 15:00〜24:00
土曜 14:00〜24:00
日曜 14:00〜23:00
tel:010-8819-8826
http://www.instagram.com/turtle_supermarket

PROFILE

松本 昇子エディター / ライター

愛知県出身。雑誌やカタログ、書籍、WEBサイトなどの編集、執筆、ときどきコピーライティングも手がける。

熊谷 直子Photographer

幼少期より写真を撮り始める。20歳で渡仏し、パリにて本格的に写真・芸術を学ぶ。2003年よりフリーランスフォトグラファーとして雑誌・広告などでポートレートや風景など多ジャンルにおいて活動し、個展での作品発表も精力的に行う。主な著書/二階堂ふみ写真集「月刊二階堂ふみ」、杉咲花1st写真集「ユートピア」、熊谷直子作品集「赤い河」

김세정 / キム セジョンEDITOR・COORDINATION

丁寧な暮らしが合言葉のカンナムOL。

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