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CULTURE TRIP NOV 28,2018

【ニュートラソウル!】漢江のほとりでわしも考えた

どこの国であっても若者には情熱がある。その情熱を上手に増幅させて、発散させて、そうやって幸せな青春を過ごすことはきっとそのあとの人生が良いものになる。川のほとりでそんなことを考えた。


人生て長いからね。楽しいことが有料ばかりじゃ辛いのよ。

いきなりなんの話かというと、「漢江(ハンガン)の公園」で遊ぶのがすごく楽しかった、という話。

さてソウル市内の真ん中にはソウルを南北に分ける流れる川、漢江(ハンガン)があります。
2007年から「漢江ルネッサンスプロジェクト」なる計画によりソウル市が本気を出して漢江沿いを整備した結果…公園あり、プールあり、レンタサイクルあり、水上遊びあり、花火大会ありな 広大な遊び場ができたそうで。
なんで楽しかったかというと、とりあえずは「無料で、いろんな楽しみ方ができる」ってところ(もちろんプールなど有料なとこもあるけど)。

今回の取材で個人的に最も印象に残っていることがある。
それが「ソウルの若者のパッションの膨らませ方」。それがとても上手に回っているなあと感じた。

ソウルの若者を眺めていると、とても賑やかで、なんというか「熱量」があるように感じる。とはいえ実際は就職難だし、大学進学のための猛勉強も日本より大変らしいし、そのあたりの鬱屈とした部分は確かにあるんだけれど、それでも流行を楽しみ、青春を謳歌するためのパワーを強く持っている印象。

ソウルでは瞬きする間に!と言ってもいいほど流行がクルクルと変わる。

それって生み出すのにも、それを受け取り続けるにも体力がいること。
その流行に体力が続く限りノッて楽しむこともできるし、そういうことにふと疲れた時、流行とは関係なしにニュートラルに楽しめる場所もあるといい。
そのニュートラルな楽しさをこの漢江に感じた。

それってただの公園で遊ぶだけじゃないかって?
確かにそうなんだけど、どちらかというとその楽しさは「野外フェス」に近いものがあった。野外 フェスだって<ただの原っぱや山の中>で行われることが多い。だけどそれに音楽や仲間、他の音楽を愛する人たちと共に過ごすことで、ただ<自然の中で音楽を聴く>それ以上のグルーブ感を感じることができる。つまり楽しさの増幅。

そんな風に「漢江はただの公園だしタダで遊べる公園」だけど、朝・昼・晩それぞれ違った遊びを楽しむことができて、さらにその場にいる他の人たちとの距離感とか熱量、楽しそうな雰囲気をもらい、楽しさを増幅させることができる場所に思えたのだ。
そんな場所がメインシティの真ん中にある。それってすごいこと。

気をつけて! 公園でのんびりしてたら…チキンの誘惑が来たよ!

漢江公園で食べた朝ごはん。ラーメン、チキン、シーチキンディップ、左下の小さいのは豆腐のようなパッケージに入ったチキンム(大根の酢漬け)。朝からビールはご愛嬌。

さて、まずは朝昼の楽しみ方。

一番面白かったのが川に到着して公園などでのんびりしていると、次から次へとチラシを配る人が現れること。これを私は「チキンの誘惑」と勝手に名付けた。

笑顔のおばちゃん達が「ほら、チキンよ! 食べるでしょ!」とばかりにチラシを押し付けてくる。お腹が減っていなくても思わずグゥと腹の虫がなってしまった。

さて韓国ではデリバリー文化が盛んだそうだ。日本ではウーバーイーツが流行しているけれど、それがもっと身近で当たり前の雰囲気。

なんでもどこでも電話一本で届けてくれる。
街中で注文された料理を運ぶ赤い箱を乗せたバイクをたくさん見かけたが、あの中には大抵美味しいものが入っているのだ。

今回はチキン屋さんに盛り合わせを頼んでみた。
ちなみにデリバリーメニューがまとめてあるアプリでも頼むことができるそうだ。
目的地に到着すると、デリバリーの人から連絡が来るので、その場で清算し、フードを受け取る。

01.デリバリーのおじさん 
02.出来立てチキンをゲット
03.おじさんはまた次のお客さんの元へ
チキンの他、キムマリ(のり巻き揚げ)など。

日本でも花見の時に公園で宅配ピザ頼む勇者がいるけれど、ほんと、あれが日常的な感じ。

さてチキンですが、特に赤い色したヤンニョムチキンが辛くて甘くて美味しかった。ちゃんと手が汚れないようにとビニール手袋もくれましたよ。

朝からラーメンとチキンとビールという幸せな食事をしばし堪能。

早急に日本に導入が望まれるもの、見つけました

それがこの「ラーメン製造機」!

コンビニ内にはアルミ鍋に入った袋入りラーメンがぎっしりと積まれていて、それを買って外の製造機にセットすると、アルミ鍋入りのラーメンができるという寸法。

カップラーメンにお湯を注ぐのと何か違うのだ、と思われるかもしれないけれど、気持ち的には「家で袋ラーメンを丁寧に作る」感覚に似ている。麺の仕上がりも段違いに良い感じ。

気がつけば行列のできるラーメン屋さんのように製造機には長い列ができていた。
ちなみにすぐそばには残飯やアルミ鍋を分別して捨てられるところがあるのも嬉しい。

前回もお伝えしたけれど、韓国はインスタントラーメン消費量世界一。
だから「美味しくインスタントラーメンを食べる」ことにも本気なのかもしれない。その方向性、いいなあ。実際美味しかったし。

日本のコンビニ各社様、この機械早急に日本にも導入してください。

コンビニでは生卵も売っているので生卵を入れてみたり、キムチちょい足ししてみたり。とにかくただのインスタントラーメンなのになんか楽しいんです。
これ、重要。

ちなみにもうひとつ「もしも私がコンビニ店主なら見習いたい」と思ったのがこれ。

韓国のコンビニもチキンなどのホットスナックが売られているのだけど、どのお店も写真のようにギュッと詰まって陳列されているんです。それがまた食欲をそそる!
普段コンビニチキンには触手が伸びないのですが、これはさすがに美味しそうでした。

さらにプチ情報。漢江のコンビニで見つけた「シーチキンにマヨネーズ混ぜたやつとクラッカーのセット」がものすごく美味しい!!
美味しすぎてお土産に買おうと市内のコンビニで探したけど他ではなかなか見つからなかったので、漢江のコンビニで見かけたらぜひお土産にどうぞ。

ちなみにコンビニでは公園で敷けるシートも販売している。ビニールの薄いのではなく、アルミのしっかりしたもの。しかも持ち運べる袋付きなのでかなり便利。思わず日本でも使おうと持ち帰ってみました。

ソウルの若者はイベント上手。

川沿いの公園には朝と夜両方行ってみたのだけれど、朝は家族連れが多くほっこりとした雰囲気。

ふと、公園内でバルーンを大量にふくらませて飾り立てていたり、テントや椅子を用意している若者が気になった。

聞けば今日、友人の誕生パーティをここでするそうだ。

日本の公園では自由にテントを建てたり、勝手にバルーンで(最終的にかなりの量だった)飾り立てていると注意されてしまうことが多い。まあそれはルールありきなのでしょうがないことではあるけれど、公園で昼寝をするのにテントがあると快適だし、公園で飾りを用意してパーティするのはきっと楽しい。

だから<ここでパーティをしてもいい>というこの雰囲気はとてもいい。

ソウルの若者はイベントが大好きなんだそうだ。もしお金がなくても、パーティをしたくなったらこうやって公園に行けばいい。それはそれで楽しい1日になることは間違いない。

ちなみにここでソウルのカップル事情。例によって例のコンビ再登場。

「(アジア圏は大抵そうだけど)韓国では圧倒的に女性が強いしわがまま」「若いカップルは「記念日」大好き」「それをイベントにするのも好き」「告白すらイベントにしちゃったりね」「私、何かの記念日の時に部屋に入ったらキャンドルが飾られていたことある」「誕生日やクリスマスは当たり前、付き合った記念日、さらに翌年からは付き合った日の記念日とかもあるよね」「基本男の子が(デート代など)出してくれるけど最近は割り勘することも増えてきたかな」「イベントごとが好きだからパーティグッズも充実している」「車に飾るバラの花とか、愛しているの垂れ幕とか」

韓国の男の子たちが大変そうなのは、よくわかった(笑)。

ちなみに韓国では、とても家族を大事にする文化がある。特に母親への愛は強く(男女問わず)、何かあれば母親に電話をして「オンマ(ママー)」
(びっくりしたとき思わず出る言葉も「オンマやー」が多いんだそう)
息子と手をつないで出かけたり兄弟同士の中もいい。
さらにおかあさんが第一だから嫁姑バトルなんぞはじまろうなら圧倒的姑の味方なんだそうだ(韓国のドラマをみると、そういうシーンが多い)なのでお付き合いは楽しくできても<結婚>となると少々ハードルが高いとか。

まあ結婚は置いておいても、漢江にはそんなソウルの<カップル>たちを盛り上げてくれる一面もある。

人生に、ロマンティックは必要

漢江の夜はまた一段と賑やかになる。
ムーディな夜景を見ながら、カップルや友人同士、楽しそうにきゃっきゃしてる。

パンポオ橋からは時折レインボーにライトアップされた水が噴射され(4月から10月の間、1日に数回作動するそう)、もうロマンティックこの上ない。

また週末はフードトラックが来たり、ライブが行われたり、出店などもあり、より賑やかになるそうだ。
若者がたくさん集まるし、アルコールももちろん販売されているんだけれどどこか健全な雰囲気も感じた。
「公園」という場所と川沿いの気持ちの良さが「健全に楽しむ」雰囲気を作っているのかしら。

01.いたるところがライトアップされているので自撮りも捗る。
02.美味しそうなフードトラックがたくさん。
03.雰囲気はプチフェス。これが毎週末に楽しめるのは羨ましい。

その光景を眺めながら、ハロウィンの渋谷の騒動も記憶に新しいけれど、日本では「若者が(健全に)自由になれる」場所があまりにも少ない、と気づく。

以前「墨田区」の回でも書いたのだけれど、どうしたってお年寄りや子供たちへのケアに比べて、若者世代へのケアは後回しにされがちだ。

と言っても体も元気な彼らを、何か物質面や体力面で支えてあげる必要は少ないのだけれど、ただその溢れるパワーを受け止めて、流せる場所が少なすぎる気がしている。

もちろん日本では若者の遊びの“選択肢”は広い。
カラオケもあるしクラブもあるし、フットサル場やボウリング場など遊び場はたくさんある。
でもそれには大抵お金がかかるし、約束して人数を集めて…とそれなりに労力もかかる。
お金がなくても、気軽にただみんなで集まってそれなりに楽しく時間をすごせる場所となると、あまりにも少ないなあと感じるのだ。

もちろん公園自体はたくさんあるし、昼間ならそれなりにはしゃげるしピクニックだってできるけど、夜遅くまでは騒げないし、情熱的なライトップもない。そう、若者にはそういう情熱のあと押しも大事よね、と思う。
なんでも2017年に集めたデータによると日本の大学生のデート経験割合が過去最低だったんだそうだ。

それを聞いてそりゃそうよね、とも思う。

誰が楽しんでもよくて、お金もかからなくて、程よく騒げて、時にロマンチックなムードにもなる。そんな場所もないなら自分一人で生きるのに精一杯な若者の情熱はどこにも行きようがない。

青春とは、増幅するエネルギーと、それを消費するエネルギーのループでできている。なのにその場所がなく制約だらけであれば、そのエネルギーは上手に消費できずに悪い方に爆発しがちだ(残念ながら最近の日本にはそういう悪いニュースが多い)。

人生は長い。
だから思い出はたくさんある方がいい。
そしてお金をかける楽しみと、お金をかけない楽しみが両方あるといい。
笑って、叫んで、愛を語って。
素直にそれを楽しむソウルの若者を、心の底からいいなあ、と思った。

PROFILE

松尾 彩Columnist

フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

熊谷 直子Photographer

幼少期より写真を撮り始める。20歳で渡仏し、パリにて本格的に写真・芸術を学ぶ。2003年よりフリーランスフォトグラファーとして雑誌・広告などでポートレートや風景など多ジャンルにおいて活動し、個展での作品発表も精力的に行う。主な著書/二階堂ふみ写真集「月刊二階堂ふみ」、杉咲花1st写真集「ユートピア」、熊谷直子作品集「赤い河」

김세정 / キム セジョンEDITOR・COORDINATION

丁寧な暮らしが合言葉のカンナムOL。

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