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CULTURE TRIP MAY 16,2018

【踊れ!台湾】06 城市捜索青年 レイとシーシャバーの夜

果物や花、スパイスの香り芳しきシーシャ(水タバコ)。その甘い香りを胸深く吸い込み、なぜか感じる少しの背徳感とともに煙を深く吐き出す。紫煙燻るシーシャバーには目新しいカルチャーを発信する若者と、それに惹かれた若者たちが日々集まる。


ない場所は自分で作り、そこが新しい文化の交流地点になる

日本でも扱うお店は増えてはきているものの、まだまだ馴染みのないシーシャ(水タバコ)。フレーバー付きのタバコの葉を加熱し、その煙をゆっくりと吸い込むというものだ。

映画で見たマリファナの吸引シーンに似ているけれど幻覚などの神経に作用する効果などはなく(中身はタバコなので)、ただ美しいガラス瓶から伸びるパイプの管に口をつけ、深く息を吸い込み、ゴジラのため息がごとく膨れ上がる煙を吐き出すだけだ。ただ、やっぱりその姿にほんの少し背徳感を覚えるのはなぜだろう(重ねて言いますが、ただのタバコの葉なので、日本でももちろん合法)。

レイ:Tops ¥8,800/TWO PALMS×URBAN RESEARCH(URBAN RESEARCH)、Pants ¥7,400/Sonny Label(URBAN RESEARCH Sonny Label)

さて、ここに連れてきてくれたのはやんちゃな笑顔が可愛いレイ(吳彥儒)君だ。兵役から帰ってきたばかりで、と坊主頭をかいていたが台湾スタッフの中でもピカイチのおしゃれさんだ。余談だがレイ君は小籠包が嫌いだそうで、小籠包ファンの日本人スタッフからその点をひどく突っ込まれていた。

去年オープンしたばかりだという“Everland Shisha Bar”。1Fはスタイリッシュなバーの様相だが、地下へと降りると大きなガラス製のシーシャが鎮座していた。
少し薄暗くムーディなフロアの中で、皆各々のマウスピースを持ち、順番に煙をくゆらせる。
レイは友人がオーナーだというこのバーに、毎週のように来る。

ジェシー:Tops ¥12,000/COSEI、Pants ¥14,630/TWO NEO(URBAN RESEARCH)

3人のオーナーのうちの一人、俳優のようなイケメンのジェシーくんが言うことには「台湾にはシーシャバーが少ないんだ。外国の文化だし、高級な社交のイメージ。だから自分のシーシャバーを作りたかったし、ファッションが好きだから絵やショーをミックスしたお店にしたかった。ここに来たら現実を離れてハッピーになってほしい。ライフスタイルの中心としての場所にしたいと思ってる」。そんな思いでこの場所を作ったんだそう。

水タバコ1つの味で750元〜だそうだ。ちなみに一つのシーシャで1時間ほど持つ。シーシャの特徴として、このゆったりとした時間を楽しむ、というのがある。

そしてこの新しい文化に惹かれて、ここに様々な人が集まってきているそうだ。アーティストやデザイナーが集まり、ここからまた新しいカルチャーやイベントが生まれ始めている。さながらカルチャーのハブスペースとなりつつある。
台湾ではこういう若者がオーナーの店が増えている。幾つかのお店で話を聞いたが、「自分が欲しい場所がなかったから、自分で作った」と答える人が多かった。シンプルだけど力強い言葉である。複数人でオーナーをするところも多く、台湾の若い人たちの「思いたったらやってみる」のスピード感はとても頼もしいと思った。

しばらくスタッフでシーシャを楽しんだが、さて、よく見れば店員は全て美男美女、そしてモデルのようなスタイルではないか。新しい流行を提供している場所柄か、シーシャのイメージに合わせてか、皆一様にファッションも表情もクールだ。
ただ、カメラマンがそれぞれの表情を撮ろうとグイグイと近づくと、恥ずかしがって顔がくしゃっとなる。それがとても可愛いと思った。

Everland Shisha Bar

106台北市大安區延吉街62巷6弄1號

営業時間 : 9:00〜 (金・土〜27:00、月火木日〜25:00、水〜26:00)

TEL : 02-8772-8381

PROFILE

Naoko Kumagai
Photographer

幼少期より写真を撮り始める。20歳で渡仏し、パリにて本格的に写真・芸術を学ぶ。2003年よりフリーランスフォトグラファーとして雑誌・広告などでポートレートや風景など多ジャンルにおいて活動し、個展での作品発表も精力的に行う。主な著書/二階堂ふみ写真集「月刊二階堂ふみ」、杉咲花1st写真集「ユートピア」、熊谷直子作品集「赤い河」 

松尾 彩Columnist

フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

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