外部サイトへ移動します
CULTURE TRIP FEB 14,2020

<神山町暮らしのせんたく>
その1 すみずみまで美味しい神山町。

アーバンリサーチ ドアーズ2020年春夏カタログで取材した「神山町」を改めてメディアサイトでもご紹介します。


さて皆様。
立春も過ぎ時々春の陽気が顔を出す今日この頃。
現在アーバンリサーチ ドアーズ各店舗で配布されている2020年春夏カタログはもうご覧になっていますでしょうか。

こちらです。
春夏の新作のお洋服もわんさか載っているのでぜひ手に入れてみてください。
寒くて「もう今日の服は温かければなんでもいいや」と思うことの多い冬を超えて、華やかな春の服に手を伸ばす瞬間はとっても幸せなものです。

今回はドアーズチームに誘われて、カタログ内の別冊で徳島県野「神山町」特集をメディアサイトチームが取材させていただきました。カタログでは「神山町に住む人々」を取材させていただいたので、メディアサイトでは「旅人」の目を通したお話も少々してみたいと思います。

以前「企業のサテライトオフィスが急増している町」といった内容のニュースをみたことがあり、こっそりと興味があった神山町。徳島市内からは車で1時間ほどでしょうか。ファッションビルや大きなマンションがずらりと並ぶ徳島市内を抜けて、だんだんと緑色の風景が増えてきました。

気がつけば山あいにある「神山町」に到着です。ふかふかした山に囲まれていて、目にも鮮やか。そして一歩足を踏み入れればすみずみまで魅力的なところでした。

まずはその風景に心を奪われました。
町を流れる鮎喰川の透明度とその美しさたるや。

少し遠目から眺めているのに、魚が泳ぐ姿がくっきり。また、よく晴れた日だったので小さな雲や川べりの木々まで鏡のように川面に写り込んでいます。

川へと降りる小道もたくさんあり、近くでみるとまたその透明度に驚きます。冬の取材でしたが我慢できずに手を差し入れてしまったほど。夏であればここに足をつければさぞかし気持ちいいのだろうなあとちょっと残念に思いました。

水といえば、神山町には「神山温泉」という温泉もあります!
さっきまで夏取材でないことが残念でしたが、その分冬の温泉の気持ち良さが素晴らしかったので、やっぱり冬取材でよかったとしみじみ思うのでした。

神山町を囲む山々は杉の木が多いので、冬でも町は青々としていて、それもまた気持ちの良い光景でした。そして神山町はスダチの生産が日本一。つまり町中にスダチの木が生えています。
旬の時期ではなかったのですが、それでもところどころにコロンとした可愛い実がなっていて、散歩をしながら実なる木を探すのも楽しかったです。

町中で見かけたのは背丈ほどの木が多かったのですが、「すだちの古木」があると聞いて見に行ったところ、それはそれは大きく立派な姿。神々しくもあり、ここまで大きくなるまでに、一体いくつの実がなったのだろうとしみじみ考えてしまいます。

神山町は梅干しも有名だそうで、川沿いをふらりと歩いているとカゴに入った梅干しを見つけました。
こんな風に町中をただ歩くだけでも様々な風景があり、楽しめます。

カタログ内でご紹介した「かま屋」さんでいただいたランチ。あまりのお米と野菜のおいしさに2日連続通いました。

さて、「旅人」と言う観点からみると、とにかく「ごはんが美味しかった!」ということを強調せねばなりません。

そして取材時間を除けば、最初のごはんから最後のごはん、おやつやおつまみ至るまで、たくさんのものを食べ歩き、そしてただただ「美味しい」しか言わなかった気がします。

口に入れるものがすべて美味しくて、当然次の食事前には期待のあまり鼻息もふんすと荒くなるほど。

それと「スダチ生産量日本一」の恩恵もたっぷりといただきました。

東京で行きつけの居酒屋の「スダチサワー」は「スダチエキス」的なシロップめいたものが混ぜられていて、フレッシュなスダチは半分しかついていないことに常々不満に思っていました。ところが神山町で飲んだスダチサワーは、眠そうな撮影スタッフ達を無視してでも杯を重ねたくなるほどどっさりスダチ入り。

なんという贅沢でしょう。

取材中何度か寄った道の駅には大きな袋にパンパンに入って200円程度で売られていました。それをみてふんすふんす。絶対に買って帰らねばとまたもや鼻息荒くなるわけです。

ちなみに帰宅したその夜に二つに割ったスダチは、皮の内側にパンパンに果実が詰まっていて、指先にちょっと力を入れればたちまちジュワッと果汁があふれ出します。
都内で買うと案外高いので、普段は「秋刀魚1匹につきスダチ1個」と厳密に使わねばならないけれど、買い求めた袋いっぱいのスダチに気を良くして「秋刀魚一口ごとにスダチ一絞り。個数制限なし」という贅沢を堪能。

一度スダチ贅沢に慣れるともう半身のスダチでは満足できなくなってしまいました。

この美しいお汁の中にプチプチの美味しいものが潜んでいたとは。ちなみにスダチも潜んでいました(歓喜!)

初めて食べた「そばごめ」の食感にも夢中になりました。
今回案内してくれた神山町出身のドアーズスタッフ大家くんが「絶対食べて欲しいんです」となんども言うから、それは絶対食べて帰りたいですと思っていたそばごめ。その正体はそばの実をふっくらと茹でて、それを汁に入れた郷土料理でした。ぷっちぷちでモッチモチなそばごめは、夕食しっかり食べた後の2件目のお店でもスルスルと入るほど。出汁や野菜の旨味を吸って最後はほんのり蕎麦の実自体の香りで口の中を包んでくれます。
ちなみに「そばごめ」を買って帰り、家で鍋をした後の締めにお米と一緒に入れて雑炊にしてみましたが、それも楽しい口当たりになりましたよ。

大家くんは何かを見かけるとすぐに「これ美味しいです」と教えてくれるので、大家くんがオススメしてくれたものは全部口の中に入れました。

アテンド兼美味しいもの先生でもある大家孝文さん。

「これ美味しいですよ」
「うん、美味しい(にっこり)」
ずっとそんな会話の繰り返しです。

それと神山町のお米や野菜の美味しさにもすっかり夢中です。米の一粒はもちろん、サラダにされた野菜の、お皿に張り付く小さな葉っぱ1枚たりとも残すまいといただきました。

そういえば神山町は「穀物の神様」である大宜都比売命(オオゲツヒメノミコト)を主祭神とする神社があり、古くから粟などの穀物の生産が盛んだったとか。大学では日本古代史を先行していたので、こうやって訪れた土地の神様につながる文化や食に触れるのも嬉しいこと。米も麦も粟も稗も大好きな穀物ラバーとしては感謝せざるを得ません。

徳島ラーメンも食べました!
大家くんオススメの「メロンパン」。神山町ではメロンパンといえばこれなんだとか。素朴で美味しい味でした。
美味しそうな柿(捥いでいませんよ!)

いろいろな新鮮な野菜などが手に入ることや、美味しいものを作ってくれる人がたくさんいることも「神山町のごはんが美味しい」秘密ではありますが、もう一つ、やはりここの空気が美味しいなあと都会から来た旅人はしみじみせざるをえません。

少し話は変わりますが、以前幼稚園生の姪っ子と「人間が吸う空気(酸素)は木や植物から生まれるんだよ」「ふーん。わたしの家(彼女は自然豊かなところに住んでいる)の近くは空気がいっぱいなんだね」というたわいもない会話をしたことがあります。

もちろん空気(酸素)というものは、何処かで生まれたものがそこに留まり続けるわけではなく、風などに運ばれたり他の空気と希釈されるので、ありがたくも木の少ない都会でも呼吸はできるわけです。ですがこうやって緑に囲まれた土地は「生まれたて」の酸素がたくさんあるわけで、姪っ子がふふんと「うちの家の空気は美味しい」と自慢していたのを思い出して、神山町の森の中では深呼吸をこっそりと繰り返しました。

美味しい空気が日々生まれる神山町。そして美味しい空気が溶け込んだ水や野菜。だからすみずみまで美味しいものに溢れているのだなあ。旅人としてはその恩恵にあずかれたことを感謝するばかりなのでした。

PROFILE

松尾 彩Columnist

フリーランスのエディターとしてファッションからアウトドアまで幅広い雑誌・ムック・カタログなどで活動。現在はコラムニストとして主に旅紀行を執筆。小学館kufuraにて旅エッセイ「ドアを開けたら、旅が始まる」連載中

page top