シーン最前線で勇躍する 人気スタイリストたちから見たグラミチ別注
[西又潤一の場合]
これまでアーバンリサーチでは、各業態ごとに数多くのブランドへオーダーし、魅力的なアイテムを発表してきました。とりわけ、抜群の人気を誇ってきたのがグラミチです。両者の良好な関係は今季も健在で、継続して発表されているものから新色、新型とバリエーションも様々。今の時代に“ちょうど良い”それらの新作を、西村、三浦の両プレスと目利きのスタイリストたちとのトークやスタイリングと共に紐解く本企画。初回は西又潤一さんが、アーバンリサーチとエカル、それぞれの別注アイテムについて語ります。
※ 撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで取材を行っております。
スタイリスト
西又潤一
1983年生まれ。北海道出身。スタイリスト二村毅氏に師事し、2012年に独立。『UOMO』『POPEYE』『Houyhnhnm』など数多くのファッションメディアにて、計算されたロジックと鋭い感覚をベースに幅広い着こなしを提案。ほか、数多のブランドのカタログ制作に携わり、アーティストや俳優のスタイリングも手掛ける。
“山パン”をより街へと招き入れた別注作
「運動もキャンプも苦手」と苦笑し、アウトドアとの接点はそう多くないと自重する西又さん。しかし、クライミングパンツに限って言えば、若い頃によく穿いていたとか。
「10年近く前ですかね。かなりイケてるクライミング系のパンツがあったんです。そのブランドはなくなってしまいましたけど、当時はバンバン街穿きしていました。それもあってか、結構クライミングパンツは持っていたんですよ。もちろんその中にはグラミチも含まれています。購入したのはバンブーシュートという中目黒のお店で、もっともクラシックなタイプでした」
当初から街着として捉えていたグラミチ。ただ、その視点と最初に購入したのがクラシックなタイプとの話にプレスの西村も同調する。
「すごくよく分かります。今では街で穿けるラクなパンツ、といった認識が一般的になってきたことをお客さんの反応からも感じられますから。僕も最初にグラミチを購入したのは、コットン製の古着のショートパンツでした」
「ならば、西又さんの目から見てこの一本はどのように映るでしょうか」。ファッションとしての要素が色濃いアーバンリサーチが今季別注をかけた一本についてプレスの三浦が語る。
「こちらは昨季、弊社がオリジナルパターンとして生み出し周囲からも好評だった“ワンタックテーパード”を採用しています。グラミチではお馴染みのウェービングベルトを取り入れてはいますが、昨今人気のルーズなトップスを着用していてもしっかりグリップできるよう長めにアレンジしました。しかも、ウールのように見えて実はポリエステルレーヨンのウェザークロス。定番のラインにはない特別な生地で、ケアが簡単なうえよりファッションとして楽しめる一本に仕上げています。ちなみに価格は1万2500円(税抜)です」
「安い!」とまずはその値段に驚く西又さん。
「これは売れるでしょうね(笑)。クラシックなものも好きですが、おじさんになったからこそこんな一本がちょうどいいのかもしれない。若い頃って、ヴィンテージがいいと思っていた節もありましたが、普通に考えたら現行品の方がきれいですし長持ちしますよね。リーバイス®もヴィンテージにはヴィンテージの良さはありますけど、5,000円の新品の方が捉え方によってはいい場合もあります。コンバースもそう。わざわざ80sの古めかしいものを買うよりは、今なら日本製で木型もシャープな履きやすいモデルも出てますし」
「自分も昔はそうでした」と西村。
「デニムは綿100%しか穿かない、レギュラーストレートしか穿かないといった意固地なところもありました。でもそれによって、視野が狭まっていたところもあったと思います」
ヴィンテージ好きの人からしてみたら「は?」って思うかもしれないけれど、と前置きしたうえで西又さんが続ける。
「変な固定概念を外して、もう少し視野を広げて考えられたらこの別注の良さはより感じられるでしょうね。ヴィンテージも格好いいんですけど、もう少し年を重ねておじいちゃんになったらそういうのを着ていてもいいのかなって思います」
other collaboration
先述した一本に加え、アーバンリサーチでは、昨年も人気を博したオリジナルシルエット、オリジナル生地、オリジナルのネームカラーの夏に嬉しいグラミチを今回もリリース。その生地はソロテックス®を起用。タテヨコ自由自在に伸縮しながら回復力にも優れ、膝抜けもしにくい。また、撥水性も備わっているため急な雨にも安心である。
エカルの別注はグラミチ好きも納得の出来
「アーバンリサーチの別注が街へ振り切ったものならば、こちらはグラミチらしさが程よく感じられるかもしれません」と三浦が手にしたのは、エカルで初となるグラミチの別注トラックパンツ。
「『小松精錬』のナイロン生地を使っているのでナイロン特有のシャリ感とヌメリ感があり、タフに穿くことができます。また、バックポケットへコンパクトにまとめられて持ち運びも自由なポケッタブル仕様。軽アウターなどではよく目にしますが、その機能をパンツにも採用しました」
「しかもこのアイテム、ユニークなのはそのポケッタブル仕様だけにとどまらないところがキモ」とは西村。
「左のバックポケットを見てもらえますか。こちらの大きさはスマーフトフォンのサイズ(もっとも大きなモデル)にぴったりハマるように作られていて、しかも座っても邪魔にならない位置に設定しているんです」
「ホントだ(笑)。ジャストですね。僕はガチガチのアウトドア人間ではありませんが、機能的なアイテムは好きなんですよ。アウトドアものは機能的だし、意図して作っていない、いわば必然の先にあるデザインが素晴らしいなって思っています。グラミチにも相通じるところはありますよね。これは今の時代に即しながら、さらに輪をかけ便利になっている」
さらに、オリジナルを知るがゆえに今回の別注に対してより新鮮さを感じた様子。
「若い頃からなんですけど、例えばヘルムートラングの服って古着の元祖があって、それをブランドなりにモデファイしてアイテムを仕上げているじゃないですか。そのオリジナルと呼ばれるものが好きでよく探します。それを知ることでアイテムの見方も楽しくなるというか。グラミチも、クラシックなものを知っているからこそこれらの別注にはより新鮮さを感じますね」
other collaboration
エカルの別注アイテムは、ほかにもショートパンツタイプをご用意。トラックパンツ同様、小さく持ち運びが可能なポケッタブル仕様で、普段からポケットへ入れても気にならず、しかも座った時でも邪魔にならない位置にバックポケットも設置。活発に動き回るシーンや時期には最高の相棒に。
普遍的であることを考えるとグラミチもいわばチープシック
過去にグラミチとの邂逅があった西又さん。「当時はいったいどのような着こなしだったんですか?」と気になるところを西村が直撃。
「ん~…“The”なブランドにグラミチを合わせることが多かったと思います。サンダースのスウェードのサイドゴアブーツに、黒の一番オーセンティックなグラミチを合わせるだとか。山っぽさを街へと溶け込ませるバランス感みたいなところは無意識に染み付いていますね」
「ファッションとして向き合いつつも、アウトドアな一本としての認識はやはりおありだったんですね」と三浦。それに関しては西又さんも認めるところ。
「やはり元はロッククライミング用のパンツですからね。合わせることで着こなしの中に抜け感が生まれる。今なお語り継がれているものですから、アウトドアウェアであり、チープシックなアイテムだと思いますよ」
師匠の二村毅氏が誌面上で紹介していたという書籍、『お金をかけないでシックに着こなす法 チープシック』。1975年にアメリカのジャーナリストらによって刊行された本がベースで、いうなればファッション哲学のひとつをうたった本でもある。その考え方に西又さんも大いに刺激を受けたとか。
「各々が考える、心を豊かにするアイテムとそれを活かした着こなしを紹介している本ですね。“いい物”って人それぞれですけど、普遍的であることを考えるとグラミチも当てはまると思うんですよ」
スタイリスト・西又さんが考えるグラミチ別注の着こなし
●グラミチ×エカル
「ベージュを軸にすべてを“曖昧な色”で合わせてみました。全部違う色を同じカラーパレットの中で取り入れると、まとまりながらベーシックなアイテムでも自然と変化や洒落感を演出することができる。インナーに白という選択肢もありますが、ちょっとそれだと面白味に欠けますよね。なので、シャツとパンツに近いニュアンスカラーを取り入れています。シャツのルーズさも程よい“違和感”が出ていい。パンツがジャストに近いので、周りもサイズの足並みを揃えてしまうと途端に無難な格好になってしまいますから」
Pants:GRAMICCI×EKAL フィールドトラックパンツ ¥14,300 (税込)
Outer:BURLAP OUTFITTER×EKAL 別注サプレックスナイロンシャツ ¥13,750 (税込)
T-shirts:EKAL LOW&SLOW PRINT Tee ¥6,050 (税込)
Sandals:SENSE OF PLACE エコレザーアシメトングサンダル ¥4,290 (税込)
●グラミチ×アーバンリサーチ
「タック入りでウールライクな見た目。“スラックス的なグラミチ”なので、思い切って同じグレーのセットアップ風にしました。インナーのトーンもジャケットとパンツに近づけて、より品を強調した感じですね。足元に革靴を合わせてしまうと固苦しくなってしまいそうなので、シンプルなスニーカーを合わせました。抜け感をどこかで表現することにより、街着との親和性も図ることができます」
Pants:GRAMICCI×URABAN RESEARCH WEATHER STRETCH PANTS ¥13,750 (税込)
Jacket:COSEI DB JACKET ¥39,600 (税込)
T-shirts:URBAN RESEARCH SUVIN COTTON LONG-SLEEVE T-SHIRTS ¥8,800 (税込)
Sneakers:adidas Originals for UR STAN SMITH EX. ¥14,300 (税込)
editor / writer 菊地 亮