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FASHION OCT 09,2021

THE GOODLAND MAGAZINE Vol.05 KEIMEN

2021年に『アーバンリサーチ 堀江店』内に常設オープンした<THE GOODLAND MARKET(ザ グッドランド マーケット)>。新しい取り組みを行うブランドやプロダクトをセレクトしています。そんなGOODなブランドを、にいやん編集部がグイグイ深堀りしていくTHE GOODLAND MAGAZINE。第5回目の今回は、今年の5月にデビューしたばかりの新進気鋭のブランド<KEIMEN(カイメン)>をピックアップ。<カイメン>はドイツ語で「発芽」という意味で、畑オタクとして知られるモデルの岡田章吾さんと、昨年7月にオープンした八百屋『代官山青果店』によって立ち上げ。今までにない農作業着を提案されています。そんな話題のブランドの全貌を知るべく、岡田さんと『代官山青果店』の代表である色川裕哉さんに話を聞いてきました。


※ 撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで取材を行っております。

左から、<カイメン>ディレクターの岡田章吾さん、『代官山青果店』ディレクターの色川裕哉さん

畑オタクと八百屋によるイケてる農業服(!?)

岡田さんはなぜ畑を始められたんですか?

岡田

コロナ前まで、色くん(色川裕哉さん)をはじめ、アパレル界隈の方たちと一緒に東日本大震災の復興支援ボランティアを8年間ぐらい続けていて。その最後の作業で近くに自生していた芝生を切り取って、それをつなげて2年かけて神社の表参道を作ったんです。東京に戻ってからも、その時の土の感触が忘れられなくて、土に触りたいなぁと悶々としていました。そんな時に、同じモデル事務所に所属していた実家が八百屋の子が、ゆくゆくは実家を継ぐというので「(継ぐ前に)少しでも生産者の気持ちが分かったほうがいいから、一緒に畑をやろう」と半ば強引に誘って4年前から畑をはじめました。でも1年目は、土を耕して、種を植えたらできると思っていて、結果カッチカチのナスとパクチーしかできなかったですね(笑)。

(笑)。岡田さんが思う畑の魅力ってなんですか?

岡田

あの空気にいるだけでも楽しいし、やっぱり自分で育てた野菜はおいしいし、(魅力は)すごくたくさんありますよね。今僕が一番好きな時間は、1人で頭をフル回転させて作業に向き合っているとき。特に道志村の方は圃場が広いので、効率を突き詰めないと1日の作業が終わらないんですけど、すごく楽しいですね。

4年前から借りている岡田さんの圃場は横浜の貸し農園の一角に。
今はナスやカブ、パクチーに今日の早朝に種を植えたばかりの人参などを栽培中
帽子:KEIMEN Hat ¥9,350 (税込)
オーバーオール:KEIMEN overalls ¥27,500 (税込)

色川さんの『代官山青果店』はどんなお店なんですか?

色川

僕たちのお店のベースにあるのは顔がわかる農家さんとの取り組み。特に野菜はたくさんの農家さんや市場があるけれど、僕たちは八百屋を始めたばかりの素人集団なので、直接顔を合わせて話し合って、意気投合した農家さんとだけ取り組ませていただいています。ただ販売するだけでなく、生産者と飲食店や消費者の架け橋になれるような八百屋さんを目指しています。

なぜ八百屋を始められたのですか?

色川

もともとバッグのOEMなどを行っていたのですが、新型コロナウイルスで緊急事態宣言が出されたときに、アパレル業界へのダメージが大きかったのと同じように、農家さんが飲食店などに野菜を出荷できなくて困っているということを知り合いから聞いて。ビジネスというよりは、何かそこでお手伝いできないかなと思ったのがきっかけですね。僕は素人だったので、その時すでに畑を始めていた(岡田)章吾さんをはじめ、農業に携わっているいろんな方にアドバイスをもらい、素人ながら昨年の7月に八百屋をオープンしました。

『代官山青果店』では色川さんが直接出会った、日本各地の魅力的な生産者さんが育てる野菜や果物をセレクト。
岡田さんの畑で採れた野菜も販売する

お2人ともすごい行動力ですね。(お2人は)なぜ服を作ろうと?

岡田

畑で作業をしている時、服にこんな機能があったらいいなってずっと妄想していました。例えば、(作業中に)サーマルをよく着ていたのですが、作業をしているとどうしても袖が下がってくる。他にも、膝をついて作業をする時に痛かったり、長靴を履いて作業をするとパンツの裾が上がってくるとか…。服に気を取られてしまって、畑に集中できなかったんです。でも、ホームセンターに行っても解決してくれる服はあっても、コーディネートが難しかったり。なので、擦れやキレに気をつけながらアウトドアウェアを着たり、硬さや重さを感じながら軍モノを着て作業をしていました。そんなことを色くんに相談したら、じゃあ作ろうよと声をかけてくれたのがきっかけですね。

農業服のブランドって世の中にはあるんですか?

色川

ブランドをやろうと決めてからは、いろんな展示会をまわって農業アパレルをみたんですけど、改めて僕たちがやろうとしていることを表現できるプロダクトをしようと思いました。
これだったら勝負できるという確信はありましたね。

<カイメン>の服に共通しているこだわりはありますか?

岡田

1つのアイテムに1つは畑で使えるスペックを入れるようにしています。それに、サステイナブルな生地を使っているわけではないのですが、僕たちの中で「1つの物を長く使うこと=サステイナブル」という考えがあって。だから生地を強くしたり、国内で縫製したり。作業着だけど、長く着られる服を作ることは意識しています。

色川

あと、普通のアパレルだったら企画してサンプルを作って、スタイリングして、サイズの修正など入ると思うのですが、それに加えて“畑修正”というのが入るのが<カイメン>の服作りの特徴ですね。

畑修正?

色川

畑で実際に2週間程度使い込んでみるんです。それで、素材の変化だったり縫製の耐久性などのチェックを行っています。急な雨が降ってきたら、チャンスだと思ってサンプルの服を着て外に出て、わざとビショビショに濡らしてみることもあります。ちゃんと撥水できているかとか、縫製に不備はないかとか、細かいチェックを重ねてちゃんと畑で実用できる商品づくりを心がけています。

畑修正大事ですね!

岡田

そうですね。実際に使ってみて気付くことがとても多いですね。

「例えば絵描きの人のペイントの汚れってかっこいいじゃないですか。同じように、畑をやっている人の服が土で汚れてかっこいいってなればいいなと思っています」と岡田さん

今季のコレクションの中で気に入っているアイテムは?

岡田

畑で助かっているのは、ロンTサーマル。本当に袖が下がってこなくて、袖を全く気にしなくていいので作業に集中できるんです。あと、個人的には靴下も思い入れがあるプロダクトですね。畑で作業していると、長靴の中に土や泥が入って靴下がかなり汚れてしまうんです。それでよく嫁に怒られていたんで、汚れにくい靴下はできないかと考えて作りました。

その靴下にはどんな秘密が?

岡田

白い靴下で何度も実験をしたんです。で、土で汚れた部分だけトレースして、その部分を汚れが目立たないように、濃色にしました。濃色以外の部分は、靴下ぐらいテンション上げたいなと思って発色の良い色を使っています。もちろん普段着でもコーディネートの差し色などにおすすめです。

農業ならではの視点が面白いですね!あとベストもすごく素敵だなと思いました。畑以外でも使いたくなりました。

色川

ありがとうございます。そうですね、畑ではしっかり道具として使えるし、街でもバッグとして使ったり、さまざまな用途で使えるアイテムだと思いますね。実際におかげさまで今季のコレクションの中でも動きが良い商品ですね。縫製もかなり細かい部分まで気を使っている割に、値段もかなりおさえて作れたことも良かったですね。

靴下の汚れをなるべく目立たないように想定して作られたソックス。発色の良いカラーリングはコーディネートの差し色にも最適
KEIMEN socks ¥2,585 (税込)
前方2箇所にマチのあるポケット、後方部に大きなポケットを搭載したベスト。
小物・ハサミ・スコップ・収穫の際の野菜など、多種多様なものを出し入れしやすい仕様に
KEIMEN Vest ¥13,860 (税込)

洋服だけでなく、<カイメン>のZINEもとても面白かったです。

岡田

もともとは、洋服を作りたいと思っていたわけではなくて。農家さんをはじめ、農に関わる人たちの凄さ、知識や経験を何かに残しておかないとって思っていたんです。なのでこのZINEも洋服と同じくらい力を入れて作っています。いや、もしかしたら洋服以上かも(笑)。ZINEも洋服と同様にシーズン毎に発行していく予定です。

第二弾も期待してます。ちなみにZINEのタイトルにある「グリーンサム」とはどういう意味なんですか?

岡田

「グリーンサム」ってアメリカでは親指が緑色になるぐらい(畑を)ずっといじっている、“畑いじりが上手な人”という意味なんです。僕たちのブランドは、「プロダクト フォー グリーンサム ギークス(畑をいじるオタクのためのプロダクト)」をコンセプトに物づくりを行っています。

クリエイターのShu Kojimaの写真や、デザイナーと糞土師・伊沢正名との伊沢正名の対談が掲載されたZINE「グリーンサム バイ カイメン ISSUE 01 」
グリーンサム バイ カイメン ISSUE 01 ¥550 (税込)

なぜ私たちと取り組みをスタートしようって思ってくださったんですか?

色川

熱心にお声がけをしてもらってすごく嬉しかったんです。それに<ザ グッドランドマーケット>のことを調べさせてもらって、サステイナブルな新しい試みにとても感銘を受けて、こういう人たちと一緒にやりたいなと思いました。そもそも僕らの服を一般的な店舗でやるのってすごく難しいと思っていて。洋服屋さんって農業をしているわけじゃないじゃないですか。なので思いが強いお店と一緒にやりたかったんです。実際に大阪の店舗(アーバンリサーチ ドアーズ 南船場店)では畑もやられているし、僕らの服も安心して任せられると思いました。

すごく嬉しいです、ありがとうございます。色川さんと岡田さんはサステイナブルなどを日頃意識されていますか?

色川

サステイナブルなことって遠くにいるとわからないような気がしていて、だから僕はできるだけ現場にいくことを心がけていますね。実は最近まで、サステイナブルやエコとかを特に意識していなくて。ただ、実際に畑や工場に足を運んで、そこで起きている問題を発見して、改善するような動きをしていると、まわりから「サステイナブルですね」とか「社会貢献ですね」と言っていただくことが増えたんです。その時はじめて自分がサステイナブルな活動をやっていたことに気付いたんですよ。

岡田

今現在、僕自身がサステイナブルなことを何かできているかというとあまりできていないと思うんです。僕は、自分に何ができるのかというのをまだ知りに行っている段階。でもその答えは、僕は畑にあると思っているんです。畑という小さな循環をまず理解してから、視野を広げて自分にできることを探していきたいと思っています。

最後に<カイメン>の今後の目標を教えてください。

色川

かっこいいとかお洒落とか、そんな理由でもいいので、今まで畑に興味がなかった人が、少しでも畑や農業に興味を持ってもらえるきっかけになるようなブランドにしていきたいですね。

<カイメン>を見たら若い人も絶対畑に興味が沸くと思います! 岡田さんは?

岡田

一番の目標は畑をやる人が増えること。繋いでいかないと、遊休農地がどんどんコンクリートになって、日本の農業って廃れてしまうと思います。週末だけとか、みんなで畑を借りるとか、何でもいいとは思うんですけど、まずは土に触れる機会が増えたらいいなと思っています。そんな行動を促せるような、畑の魅力や面白さというものを<カイメン>を通して発信していきたいですよね。

<カイメン>の商品タグは、切り離すと(育てている野菜がわかる)畑の名札に

岡田章吾(KEIMEN ディレクター)
愛知県出身。モデルとしてジャンルにとらわれず、雑誌、広告など各メディアに多数出演。⼀⽅でボランティア活動や障害者の⽀援・特別⽀援教育に強い関⼼を持ち、東⽇本⼤震災の被災地⽀援活動や、特別⽀援学校のボランティアなどをもう1つのライフワークに。自身が代表を務めるモデルエージェンシー「VELBED.」で農園を借り、モデル業の合間をぬって都内の自宅から足しげく通い、さまざまな農作物を育てている。現在は、山梨県道志村にも畑を借り、道志村ひゃくしょう会として野菜を出荷している。

色川裕哉(代官山青果店 ディレクター)
1986年生まれ。20歳から鞄業界で企画・生産などの業務をしており2020年緊急事態宣言に伴い、知り合いの農家さんが飲食店などに野菜を出荷できない現状を知り、7月に『代官山青果店』を立ち上げ。全国各地の農家から、旬の時期にこだわって仕入れているほか、神奈川県三浦市にある自社の畑で、自ら野菜の生産も行っている。

PROFILE

にいやん編集部

THE GOODLAND MAGAZINEを発行するにいやん編集部。にいやん編集長は常にGOODLANDを担うブランドやアイテムを探し求めている。その中でも今一番HOTなTHE GOODLAND MARKETのスクープを狙い、365日24時間、情熱を燃やし続けている。
※将来発刊を目指す架空の雑誌

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