iI+iI People #5
スタイリスト 二宮ちえさんの“アイ”
iIディレクター兼URBAN RESEARCH BUYERS SELECT(URBS)レディースバイヤー森口愛が“いま気になる人”をお招きし、ゲストのパーソナル(i)や仕事・趣味などの(愛)を通して世界観に迫ります。
第5回のゲストは、スタイリストの二宮ちえさん。雑誌や広告、アーティストのスタイリングといったお仕事や、通行人に声をかけてゲリラ的にスタイリングと撮影を行う「Nice To Meet You」プロジェクトなどで提案するスタイリングは、どれもパワフルでチャーミング。今回はそんな二宮さんに森口愛がお話を伺い、さらに愛弟子の布田好恵さんをモデルにiIのアイテムを使ったファッションシュートをオファーしました。これまでに見たことのないiIのコーディネートに大盛り上がりとなった現場の様子をお届けします。
※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえでインタビューを行っております。
二宮ちえさんの“アイ”(i=PERSONA(ペルソナ))
森口 二宮さんのスタイリングは、ポップさもあるけれど、二宮さんらしい世界観があって憧れていました。アイテムの着方など使い方にも新鮮な面白さがあり、「もっと自由でいいんだ!」と元気が出ます。
二宮 そう言ってもらえてうれしいです。Instagramにアップしているのは自分の世界観が出ているものが特に多いのかな。私のキャラクターを前面に出さないようなお仕事もしているんですよ。景色や状況に馴染んだ人物像でありながら、「少しだけ遊びを入れたい」というオーダーをいただいたりします。
森口 そうだったんですね。多岐に渡るお仕事ですが、何がスタートだったのですか?
二宮 「おもしろいことを考えて、みんなを楽しませたい」という思いが根本にあって、それを叶えるための手段として、自分にとって身近だったのがファッションだったんです。文化服装学院を卒業して、『Seventeen』を中心に活動していた師匠と出会ってアシスタントに。細かいページも多くて大変でしたが、幅広く受け入れられるファッションやアイディアがどんなものなのか、その時代に学ばせてもらいましたね。あの現場を経験していなかったら、もっと破天荒でめちゃくちゃだったかもしれない(笑)。
森口 ティーン誌にいらっしゃったんですね! そこから今まで、本当にさまざまなスタイリングを経験されていると思いますが、お仕事に共通している思いは何かありますか?
二宮 どんなお仕事でも「自分がかわいいと思えるもの以外は使わない」というのはルールです。あとは、私が用意した服を着てくれる人の気持ちを大切にしたい。アーティストの中にはファッションが好きな人も多いので、必要なスタイリング体数よりも多めに服を用意して、ずらっとラックに並べておいたりするんです。服が好きなら、ずらりと並んでいる中から選べた方がうれしいでしょ? ファッションって人の気持ちをアゲる力を持っているから、その魔法を使っていきたいですね。
森口 二宮さんのスタイリングは、見る人だけじゃなくて着る人のことも元気にしているんですね。Instagramのプロフィールに書いている「宇宙レベルで考えたら、だいたい大したことないよね」というメッセージにも、私は勇気づけられました。このコピーにはどんな思いがあるのでしょうか。
二宮 スティーブン・ホーキング博士のドキュメンタリーを見ていて、彼らが約130億光年先の星の話をしていることに衝撃を受けたんです。日々の小さなことに気を病んだりしている自分って、なんて小さいんだろうって。視野を広げていったら、全部大したことないと思えて気が楽になったので、このコピーを大切にしているんです。勇気が出ますよね! 最近活動できていないけれど、2015年に始めた「Nice To Meet You」は街で知らない人をハントしてファッションシュートを行うプロジェクトで、勇気もいるし反射神経が求められるんだけど、「宇宙レベルで考えたら、だいたい大したことないよね」の精神で(笑)。
森口 このプロジェクトはどうして始めたのでしょう。とても素敵ですよね。
二宮 「こんなことがやりたいな」と思いついてから2年くらいかけて構想していたのですが、なかなか踏ん切りがつかなかったんです。そんなときに派手なアウターを着て地元を歩いていたら、おばあちゃんが興味津々って感じてこちらを見てきて・・・。思わず「着てみますか?」って声をかけて着てもらったら、すごく喜んでくれました。服の力を改めて感じてうれしかったし、これは面白い! と思って実際に始めることにしました。
二宮ちえさんのファッション“アイ(愛)”
森口 二宮さんによって、ファッションから元気をもらっている人がたくさんいるんですね。二宮さん自身は、どんなところからスタイリングのインスピレーションを受けているのでしょうか。
二宮 映画や音楽などのカルチャーが大好きなオタクなので、それらは暇があれば触れていますね。登場するファッションや、ファッションとは関係ない部分の色使いなどからも影響を受けています。あとは文化服装学院の卒業生が使える図書館で、昔の雑誌などを読み漁ることも。2000年代以降のものはネットでもチェックできるけれど、それ以前のものは紙を辿るしかないのですが、面白いですよ。あとは民族衣装や制服。目的が決まっている服に、少し違和感を持たせるのが好きなんです。
森口 なるほど、“違和感を持たせる”というのはどんな効果を生むのでしょうか。
二宮 うまく言葉で言えないけれど「どうやったらこの世界をぐにゃっと歪ませられるか」みたいなことを常に考えていますね。そういうスタイリングをしている人や、デザインを見ると「やられたー!」と悔しい思いをしています(笑)。
森口 これからのファッションで大切だと思うのはどんなことでしょう。
二宮 これからの時代は、「環境に配慮する」というのは前提であるべきだと思います。そのうえで、もっともっと固定観念から離れて自由になっていくといいな。スキンカラーもメイクやファッションで変えられたり、誰でも好きな服を好きなように着られるような・・・、「みんないいじゃん!」というのが当たり前になってほしいと思っています。
森口 今回はiIのアイテムを使ってコーディネートしていただけるのがすごく楽しみです。アシスタントの布田好恵さんとの関係性がとても素敵で、今回は布田さんにモデルをお願いしました。お二人の師弟関係を超えた絆についてもお聞きしたいです。
二宮 長く一緒にやっているから、というだけでなく、元々の感覚が近いのだと思います。言葉で説明できない感覚的なことも、汲み取ってくれる。私のスタイリングの一番の理解者ですね。服も似合うので、今回の撮影が楽しみでした。
森口 そう言っていただけて嬉しいです。iIのアイテムの感想もぜひお聞かせください。
二宮 生地をたっぷり使ったボリューム感やギャザーの感じがとてもロマンティックですよね。タイダイ染めのアイテムは自分でも着たいなと思いました。色味がめっちゃかわいい! 私もタイダイ染めのアイテムを作るのに挑戦したことがあるのですが、扱いが難しい生地ですよね。
森口 そうなんです! 何度もサンプルを作って、ここに辿り着きました。二宮さんにもぜひ着ていただきたいです。どんな風にスタイリングで使ってもらったのでしょうか。ワクワクします!
二宮ちえさんのiIスタイリング
STYLE 1
森口 めちゃくちゃかわいい・・・!ワンピースがこんな風になるなんて、驚きです。3着ある中から選ぶのかと思っていたけれど、まさか全て使ってもらっているとは(笑)。
二宮 はい、3枚重ねです(笑)襟が取り外せて3wayで着られるのも楽しいし、ボリュームがあるから重ねたらさらにいろいろな表情が引き出せるなと思ったんです。着替えている途中にオフショルダー状態になってそれが素敵だったのは偶然の産物。ティアードはところどころ引き出して、アンバランスなシルエットを作りました。
STYLE 2
森口 かわいすぎて言葉が出ないです・・・!(語彙力を失う森口)この水着も、今はあまり見ない形でとても素敵ですね。ビスチェのように重ねる発想が新鮮です。
二宮 カラーが鮮やかだったので、ビビットなオレンジと合わせてパキッと目を引く組み合わせにしました。レトロなアイテムを合わせていったけれど、足元は白いブーツを持ってきて90’sのムードをミックス。水着のバストトップのシルエットもかわいいですよね。
STYLE 3
森口 このワンピース、スカートと重ねるとこんな表情になるんですね。タイダイの重ね着も楽しいですね。
二宮 シャーリングがかわいいなと思ったので、思いきり活用しました。服を見るときに「普通に着たらこうなるけど、他にはどんな表情があるんだろう」というのを考えるんです。今回もその発想で、1枚で着ても素敵なワンピースを全色ミックスしてスタイリングしました。
森口 二宮さんのスタイリングのアイディアは驚くことばかり・・・。それをバッチリ着こなしてくれた布田さんもとても素敵です。息の合ったお二人ならではの世界観で、iIのアイテムの新しい表情を知ることができました。
森口愛から二宮ちえさんへの“アイ”
二宮さんのスタイリングがとても大好きなので、お会いするのを本当に本当に楽しみにしていました! 色の組み合わせや、アイテムの大胆な使い方など、実際にスタイリングしていただいた中で「こんな風に組み合わせるの!?」、「これってどうやってスタイリングしているんですか!?」と新しい発見だらけで、テンションがあがって、「かわいいーーーーー!」を撮影中ただただ連呼してしまいました。(語彙力不足すぎてすみません)
スタイリングだけでなく、写真の雰囲気やイメージ、布田さんへのポージングまできちんと作りこんでいただき、iIの新しい世界を魅せていただきました。本当に本当にありがとうございます。それに難なく、さらりと応えていく布田さんとのコンビネーションも素敵でした。
お話ししている中で、“スタイリングの中に少し違和感を作る”という言葉がとても印象的でした。さまざまなお仕事をされている中で、違和感という部分に二宮さんにしかできないエッセンスが詰まっているのだなと。その“違和感”が二宮さんの魅力のひとつで、その魅力に憑りつかれる方々がたくさんいらっしゃるんだと思います。私もその一人です。
Instagram @ ii_official_2020
フォトグラファー/紫前拓郎
スタイリスト/二宮ちえ
モデル/布田好恵
ヘアメイク/坪井茉衣良
編集・取材・文/平井莉生