外部サイトへ移動します
FASHION NOV 05,2022

NEATとの4年振りの邂逅は別注&復刻の特別アイテムで

過去を紐解けば、パンツ専業を謳う国内ブランドは多少なりとも存在していた。しかし、NEATほどシーンに根付かせたブランドはそうはいない。アーバンリサーチでは、ブランド初期からかぐれで取り扱ってきたが、2018年以降、両者は距離を置くこととなった。しかし今季、4年振りに別注&復刻という形で再び相見える。しかも、NEATで絶大な人気を誇った“あの”生地を使用してのタッグ。その裏には、両者の深い関係と奇跡的な偶然の連なりがあった。


※撮影時のみ一時的にマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策に取り組んでおります。

アーバンリサーチ阿部と中山が感じたNEATの衝撃

4年という月日は思いのほか長い。変化が著しい今の時代ならなおのこと。そんな中、満を持してリリースする今回の別注&復刻について両者を交え鼎談が行われた。参加したのは、NEATデザイナーの西野大士氏、元かぐれのバイヤー兼店長であり現URBAN RESEARCH BUYERS SELECT(以下、URBS)のバイヤー阿部、そしてアーバンリサーチ プレスの中山。中山は、NEATとアーバンリサーチの出会いをこう懐かしむ。

「そもそも、僕と大士は友人でブランドの話は早くから聞かされていました。進捗を逐一連絡してくれてもいましたから。やっとのことでデビューし、展示会をやるというので足を運んだのはたしか2015年。某メガネブランドのオフィス奥のスペースでひっそりとやっていましたね(笑)」。

「そうそう」と語り、西野氏も当時の思い出を回想する。

「ただ、あのときはもう2015年秋冬の展示会が終わり、オーダーができない状態。ショールームにあったのは案内程度の1型、5色のみで、展示会と呼ぶには少々寂しい雰囲気だったよね(笑)。ただ、2016年春夏の展示会でヒロシくん(阿部)と一緒にまた来てくれて」。

NEATについて噂は小耳に挟んでいたという阿部。実際目にしたときは、あまりの出来栄えに即バイイングを決めたという。

「今でこそ、パンツ専業を謳う国内ブランドは結構ありますけど当時はなかなかありませんでした。それもあって気にはなっていたんですよ。お店に持参いただき、穿かせてもらったときに衝撃的過ぎて興奮したのを覚えています。

たしかに、当時パンツ専業はイタリアブランドの専売特許。メディアで多数取り上げていたこともありシーンの評判も上々だった。そんな中での船出ゆえ、当初、周囲からのNEATの評価はお世辞にも良いとはいえなかった。足かせとなったのは、業界内にはびこる固定観念。西野氏は回顧する。

「僕が始めた頃、セットアップの組上と組下を考えた場合、前者の値段が高いのは当たり前といった空気はあったように思います。ジャケットが5万円だったらパンツは3万ほどが普通。ただ、実際は工賃なども含めそこまで製作にかかる金額は変わらないんです。だから、最初は周りから「そんな太いパンツを誰が穿くんだ。しかも高過ぎる」ってすごい言われました(笑)」。

ただ、阿部は「説得力がありましたからね」と気に留めなかったとか。

「やっぱり良いものは良いですからね。当時、僕は普段からスラックスをよく穿いていたんですよ。そんな僕でも他とは違うことはよく分かりました。NEATのようなスラックスは初めて見ましたね。深いインタックで、ポケットに手を突っ込んだときのシルエットがすごくいい。特に、インタックからのセンタークリースの流れが独特で、膨らみのあるシルエットがめっちゃ好きだったんですよね」。

それに関しては「見事に業界の中での常識をひっくり返したよね」と中山も同調する。

「価格に関しては最初、攻めたな〜って思いました(笑)。個人的にスラックスは好きな部類ですけど、ああいう深いインタックの2タックというものはアイテムとして見たことがなかった。大士からしてみたらチャレンジだったと思います。ただ、彼がこれまでどのようにアパレル業界を歩んできたかを知ってる人間からしたら、納得した感じはありました。大士らしいなと」。

「やってみよう」から生まれた代表作

まだまだ認知度が低く、卸し先も2店舗ほど。ほぼ無名に近い国内パンツ専業ブランドだったが、その実力はかぐれの店頭に並んだそばから結果としてすぐに証明された。それを間近で見ていたのが中山である。

「正直びっくりしました。かぐれで扱ったファーストシーズンから飛ぶように売れて。以降、売れなかったシーズンはほとんどなかったように思います」。

そして、かぐれという業態との相性の良さも要因だったのではと続ける。

「阿部はバイヤーと同時に店長として店頭にも立っていた。最終的には、良いものとしてちゃんと作られているものだったら、お客様へ直接ご説明できる売り手まで魅力がダイレクトに伝わると売れないものはないと思うんです。だから、小回りのきくかぐれで扱ったことが結果良かったのかもしれない。結局、大きいブランドよりは、小回りの利くブランドのほうが売る側も高い熱量のまま販売できる。だから、価格が高いなとは思いつつも入荷すれば感度の高い若いお客様にもご購入いただけましたね」。

そして、数シーズンの成功体験の後、NEATの代表作としても知られるあの生地を使ったモデルが誕生。それは、作る側の西野氏からするとある種のチャレンジだったという。

「某ブランドの国内運営もしている会社さんから生地を買わせてもらったことがきっかけ。同社へ足を運んだ際、部屋の一角にテントクロスが飾ってあった。聞けば、手にしたはいいものの、どう製品化するか決めあぐねているというんです。調べてみると、20年前にもちょっとしたブームになった生地のようで。これが服に使えるのかは正直マユツバでしたけど、「一度チャレンジしてもいいですか」と買わせてもらいました」。

テントクロスのようなハリのある素材は、本来、これまでデニムなどの強靭な素材を相手にしてきた工場へ持ち寄るのが通例。画期的だったのは、そんな硬めの素材をトラウザーズの工場に持ち込んだことだ。ネックは、細い針や糸を主に扱う場所ゆえ縫製できるのかどうか。それをNEATでは見事に形にした。

「テントクロスのスラックスを発表してからのブランドの認知度の上がりようはすごかったですし、未だに当時からずっと好きでいてくれる人も多い。軍パンでもなくスラックスでもない。そこが新しかったような気がしますね」。

再販、そして協業。テントクロスを中心としたアツいストーリー

とはいえ、おいそれと手に入る生地ではなく、作る量にも限りがある。当然、製作したアイテムは完売。ほぼ伝説的な生地ということもあり、これが最初で最後と思われた。ただ、幸運にも西野氏は再びその生地と出会う。2019年のことだ。

「先ほどの会社さんに生地がまだ残っていたんですよね。代表の方がストックされていたようなんです。身近なスタッフから聞いた、NEATのスラックスが売れているという情報も影響したようですが、結局は未使用のまま保管されていた。そこで「実はまだあるんですけど使いませんか?」と連絡をいただいたんです」。

思いもよらない機会を得た西野氏は、再びテントクロスを使いスラックスを製作。自身のオフィスで販売会を実施した。当日、入り口前には長蛇の列。そして、2日間の開催だったが、驚異的なセールスを記録する。中山と阿部も当然購入。阿部は洗ったときの風合いがたまらないと絶賛する。

「洗ったほうがグッと雰囲気が出ますよね。いい感じで柔らかくもなってくるので今でも重宝しています。だいたいの人は、スラックスを綺麗に穿くというイメージをもたれると思いますが、その固定観念を見事に覆しましたよね」。

さらに、時代が移り変わっても色褪せず付き合っていけると中山も断言。

「スラックスというアイテムは昔から長く浸透しているもの。もともとあった伝統的なアイテムをベースにしていることもあり、今見ても時代錯誤感は感じさせませんよね。テントクロスを使ってオーバーオールも作っていましたが、基本的にはワークウェアじゃないですか。ただ、タックを入れてキレイに穿くというアプローチも新しかったと思います」。

そのオーバーオールは、スペイン軍のアイテムをベースにしていると西野氏。

「小綺麗に穿けるオーバーオールがあったらいいな、からスタートしたんですよ。そこで、腰から下をニートのスラックスにしました」。

ただ、実はその2019年の再販時、西野氏だけでなくアーバンリサーチでもテントクロスを購入していたことが判明する。阿部もある種の運命的な出会いに驚いたとか。

「昨年、東京支社のオフィスを移転したのですが、そのタイミングまでテントクロスがウチにあることをまったく知りませんでした。引っ越しのタイミングでさまざまなものを整理していたときに見知らぬダンボールを見つけ、中を見てみたら生地が入っていたんです。見覚えのある生地だと思ったらそれがテントクロス。それが昨年の8月頃でした」。

なんとも数奇な運命である。友人繋がりで、中山が西野氏と阿部を引き合わせたことから始まったアーバンリサーチとNEATの関係。NEATの代表作の誕生に繋がる生地との運命的な出会いがありながら、さらにもうなくなったと思われていた生地が再び見つかり今回の別注&復刻企画へと繋がった。4年の空白の時を経たおおよそ7年にわたるストーリーは、実に感慨深いものがある。

今回の目玉となる新型の投入

□ 1955 Tent Cloth Standard ¥55,000 (税込)
□ 1955 Tent Cloth Wide ¥55,000 (税込)
□ 1955 Tent Cloth Beltless ¥55,000 (税込)
□ 1955 Tent Cloth Cap ¥9,900 (税込)

そして今回、これまで作られていたワイドとベルトレスの2型を復刻。さらに、スタンダードと西野氏のトレードマークであるキャップを別注した。スタンダードについて西野氏はこう説明する。

「型はヒロシくんがバイヤーとして、これをやりたいというものを尊重して作らせてもらいました。言うなればストレートですね。テーパードとワイドのちょうど中間のようなイメージ。テントクロスのコレクションにはなかったモデルになります」。

そして、それを受け発する阿部の熱い言葉に、企画に対する想いが伝わる。

「そもそもやっていないものをやりたかったんです。さらに、太めのシルエットのほうがNEATや生地の良さは出る。だったらスタンダードがいいんじゃないかとなりました。そこでなぜキャップ? と思われるかもしれませんが、パンツ以外のアイテムもラインナップに加えたい思いが強かったんです」。

そのキャップについて、中山は過去の両者の関係性がうっすら見えるアイテムだと語る。

「以前、かぐれでNEATの受注イベントを1シーズンに一度やっていました。大士もいろいろ企画を練ってくれて、他社さんではやらないようなノベルティを毎回作ってくれていたんです。テントクロスのときは、残反を活用してペンケースやカレンダーを作りましたね。とにかく、お客様に面白がってもらえるものを小物で表現したかった。まあ今回は商品ですけど、キャップにはそんな名残を感じさせますね」。

「そこは無理を言わせてもらいました(笑)」と笑う阿部を横目に、西野氏も苦笑いを浮かべ口を開く。

「ぶっちゃけ、マジかと思いました(笑)。ただ、ヒロシくんたっての希望なのでね。僕はキャップが好きなので、いつも被っている物をベースに作りました。クラウンが、いつも被っている物よりもやや浅いかなぐらいです。まあ、“THE NEATキャップ”みたいな感じですね。なんだか昔を思い出す感じもしましたね」。

受注会のノベルティとしてマグカップを製作したこともある。しかも、わざわざ西野氏と阿部で窯元へ足を運び自分たちで焼いた力作だ。西野氏はそれを、今でもオフィスや自宅で使っているとか。両者の関係性を語るエピソードは枚挙に暇がない。だからこそ、4年越しながら心が躍る共作が完成したのかもしれない。

阿部もまた「今回の企画はそれぞれの関係性があったから。そこに尽きると思います」と語る。単純な素材や色のアップデイトにとどまらない、背景に潜むエピソードの深みこそ別注企画の醍醐味。今回のコレクションを見ると、それをより実感させられる。

NEAT for URBS

【販売スケジュール】
2022年11月18日(金) 12:00〜
URBAN RESEARCH ONLINE STOREにて発売

> 詳しくはこちら

page top