<SDR通信Plus⑩>2021年開催 第四回 GREEN DOWN プロダクトデザインコンペティション受賞者インタビュー「一年も、一生も長く着られるデザインを目指して」
株式会社アーバンリサーチは、現在SDGs(持続可能な開発目標)に関連する取り組みを積極的に推進しています。その取り組み内容の紹介の場として始まった社内報<SDR通信>。本来ならお見せすることのない社内報ですが、その中から皆様に広く知っていただきたい内容を、メディアサイト独自の目線を加えた記事<SDR通信Plus>として不定期連載しています。
株式会社アーバンリサーチ(以下、UR社)は、SDGsの取り組みの一つとして、2015年より「Green Down Project(以下、GDP)」に一員として参加し、羽毛製品の回収とリサイクルされた羽毛での商品企画に積極的に取り組んでおります。その啓蒙活動の一環として、学生の皆さまを対象に2018年より開始した「グリーンダウン」プロダクトデザインコンペティション。
第四回目となる2021年のコンペティションでは、植本 みのりさん(以下、敬称略)の作品を最優秀賞として選出。2023年1月6日(金)よりUR社の一部店舗にて発売いたします。
本記事では受賞者の植本さんに、デザインに込められた想いや、商品化に向けて行われた打ち合わせの感想など、UR社のパタンナー 尾川 尚子、本プロジェクト進行役 宮 啓明を交えインタビュー形式でお話を伺いました。
※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで行っております。
受賞作品
「CUSTOMIZE GREEN DOWN JACKET」
<コンセプト>
一つのものを長く大切に使うということがすすめられる今の時代に、長く飽きずに着ることができる物をと思いパーツの取り外しなどによってさまざまな着用の仕方があるダウンジャケットをデザインしました。
マフラー状の襟や袖が取り外しができるようになっており、ダウンベストとしても着用可能です。裾の取り外しもできるので気温に合わせてショート丈に変えることができたり、他のアイテムとのレイヤードを楽しめるようになっています。
一年を通して着用でき、また、生涯を通しても長く飽きずに着ることができるデザインを目指しました。
<プロフィール>
植本 みのり
大阪文化服装学院ファッション・クリエイター学科クリエイティブデザイナーコースに在学中。21歳。趣味はお笑い、自然散策、読書、運動など。最近は特にお笑い芸人さんのラジオを聴くこと、劇場にお笑いを見に行くことにハマり中。
尾川 尚子
プロダクト事業部に所属し、主にURBAN RESEARCH DOORS(WOMEN)のパターン作成を担当。
第3回よりデザインコンペティションに携わり、学生さんとの関わりのなか、初心を振り返る貴重な機会に感謝。愛猫とのボール遊びが毎日の癒し時間。
宮 啓明
販売員や販売促進担当を経て、2021年よりUR社のサステナビリティ推進に従事。
今を生きる人も未来を生きる人もワクワクするような社会を目指し、自分にできることを模索しながら走り回る日々。
最近はこたつで美味しいお酒とつまみを楽しむことが週末のルーティーン。
— このコンペはどのようにして知りましたか? エントリーのきっかけについて教えてください。
植本 きっかけは学校の先生からの情報でした。私の学科はコンテストにたくさん応募していくコースなので、自ずとエントリーしました。
— GDPの取り組みはご存知でしたか?
植本 このコンペをきっかけに知りました。取り組み内容はGDPのホームページを見て勉強しました。これまで、洋服のリサイクルや循環についてはニュースなどで耳にすることはよくあったんですが、実際にそれを買ってみたり、買おうと思ったりすることはほとんどありませんでした。
— 今回応募いただいた作品は、豊富なバリエーションでカスタマイズができるというものですが、どうやって着想を得たのでしょうか?
植本 お伝えした通り、私はもともとサステナブルやSDGsを気にして服を買うことがあまりありません。今はそういう方が増えていると思いますが、まだまだ大半の方は私と同じだろうなと思うんです。サステナブルなことをしようとか、SDGsに貢献しようとか、そういう気持ちにならずとも、普段から無意識にできるようになると良いなと思います。 なので今回は、無意識的に「可愛い」と思って商品を買ってもらえるような、カスタマイズによっていろいろな着方が楽しめて、長く着続けられるようなデザインを考えました。
— 受賞と聞いて、どう思われましたか?
植本 今回の作品は、もともとデザイン画を描いたときに自分でもすごく気に入ってました。それが実際に評価されたので、すごく嬉しかったです。
— 「長く着続けられる」ということをテーマにされていますが、これに対してご自身で取り組まれていることは何かありますか?
植本 洋服のケアなどがそうですが、一つの洋服を大切に長く着るということを意識しています。古着も好きでよく着ます。 それから、直接的には関連しないかもしれませんが、世の中のことをよく知る、今の世界の状態をよく見るというのも大事にしています。そういった情報を取り入れることが、行動に繋がっていくのかなと思っています。
— ありがとうございます。UR社の選出ポイントについてはいかがでしょうか?
宮 企画アイデアがおもしろいというのが一番にあります。審査にあたっては、コンペの運営メンバーだけでなく社内スタッフにも見てもらいましたが、デザイン画の初見で多くのスタッフからの支持があった作品でした。
企画書を拝見してGDPについて事前に勉強してくださっているのも評価のポイントでした。服を長く着るという考え方をデザインに落とし込んでいた点も、共感するものがありました。
— 植本さん、改めてこの度の受賞おめでとうございます。ここからは、作品の詳細について伺っていきます。ポイントについて改めて教えてください。
植本 いろいろな着方ができる点にこだわりました。裾と袖が外せるようになっているんですが、それによって中に着る服とのレイヤードをたくさん楽しむことができます。誰でも着やすくて、飽きのこないカラーリングにしたのもポイントです。 あとは、フロントの圧着デザインも自身が当初からこだわり抜いたポイントでもあります。通常のダウンではあまり見ないデザインに仕上がっていると思います。
<カスタマイズバリエーション>
・ショートベスト
・ベスト
・ショートジャケット
・ミドルコート
・マフラー
— 今回の商品化に向けて苦労されたポイントやエピソードがあれば教えてください。
尾川 一番悩んだのはサイズ感、特に着丈のバランスです。豊富なカスタマイズバリエーションですが、着方が限られてしまうと商品の魅力が半減してしまうので、全てのバランスで可愛くなるように仕上げるのに苦労しました。
— 最高のバランスを実現するために、どんな工夫があったのでしょうか?
尾川 植本さんのイメージと私のイメージが合わないと全然違うものができてしまうので、初めてお会いしたときに、私が想像する画像を用意して「これくらいはどうですか?」と提案させていただきました。それから、植本さんや私含め、あらゆる身長の方に試着してもらいました。みんなが着て“可愛い”というところを叶えた感じですね。
— 最終のサンプルを目の前にした感想を教えてください。
植本 最終出来上がったサンプルは、私が当初応募したデザイン画とは少し違うものになりましたが、元のデザインより、より良くなって出来上がったなと感じています。
打ち合わせを繰り返すなかで、いろいろな調整が必要だということがわかって、すごく勉強になりました。
学校では、自分でデザイン画を出して自分で手を動かして制作していくので、もう「努力」と「根気」でやっているような感じなのですが(笑)考えなどを上手く「伝える」ということが、仕事をするうえですごく大事なんだなと学びになりました。
— 商品は、どんな方に手にとっていただきたいですか?
植本 ファッションが好きなおしゃれな方に着てもらい、ぜひSNSで発信してほしいですね。それを見た人が「あ、これ可愛い」と思って、手にとってくれるようになると嬉しいです。
— ありがとうございます。では、最後に尾川さん、宮さんから植本さんへメッセージをお願いします。
尾川 今回、まずデザイン画を見たときに、すごい発想が自由だし学生さんらしいなと思いました。やっぱりおもしろいことをするってテンション上がるんですよね。だから、楽しみな気持ちと、今年も難題がきたな・・・という印象を持ったのを覚えています。
実際にお会いしたら、ダウンのステッチやファスナーはどうしますか? という質問に対し、迷わず答えられているのが印象的でした。クリエイティブな部分だけでなく、実際の細かい部分までイメージされていたので、すごいなと思いました。
繰り返しになりますが、先ほどおっしゃっていた長くいろいろな着方で着られることがサステナブルに繋がるというお話から、難しいことを考えなくても、貢献できることってたくさんあるなと学ばせてもらいました。そういう意識をずっと持って、限られた条件のなかでも良いものを作る努力をして、楽しみながらものづくりをしていってください。
宮 毎度のことではありますが、こうして完成品を目の前にすると胸がいっぱいになりますね。みんなが協力して時間をかけて一つのものができて、ようやくここまで来たかという達成感と、販売に向けた期待とでいろいろな思いがあります。
先ほど植本さんがこの機会に合わせて勉強してくださったという話を聞いて、このグリーンダウンのデザインコンペが僕たちの思いを通じていろいろな人に届いたんだなということもわかったので大変嬉しい気持ちです。
植本さんはこれから社会人としてアパレル業界に進まれますよね。一緒にファッション業界を盛り上げていけるよう、どこかでまたご縁があったらいいなと思います。
<商品詳細>
CUSTOMIZE GREEN DOWN JACKET
品番:GDP-CP-22
価格:¥34,980 (税込)
カラー:BEG×KHK / BLK×GRY
サイズ:FREE