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FASHION DEC 14,2022

水産業のこれからと向き合う
JAPAN MADE PROJECT TOHOKU

JAPAN MADE PROJECT(以降JMP)について、よりそのプロジェクトの活動を深掘りする連載企画がスタート。第一弾は、東北地方が抱えている水産業の担い手不足に対しての「新規担い手育成活動」を行うフィッシャーマン・ジャパンとの取り組みについて。実はアパレル企業であるアーバンリサーチが“ファッションの力”を通して関わる、2015年より続いている取り組みなのです。そのプロジェクトメンバーに集まっていただき、より深く話を聞いてきました。


> JAPAN MADE PROJECTとは?

アーバンリサーチとフィッシャーマン・ジャパンのコラボレーションアイテムであるISHINOMAKI SHIRTSをお揃いでコーディネートした本プロジェクトのメンバー。(左から)フィッシャーマン・ジャパン TRITON PROJECT担当 島本 幸奈さん、フィッシャーマン・ジャパン アートディレクター 安達 日向子さん、SDR(サステナビリティ推進)シニアチーフ 宮 啓明、SDR(サステナビリティ推進)兼プレス課 シニアチーフ 川瀬 晃子

※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで行っております。

フィッシャーマン・ジャパンの成り立ち

“カラフルな水産業に”という想いで、三陸の海をフィールドに活躍する若きフィッシャーマンたちが、地域や業種の垣根を超えて水産業の未来を見据えた活動を続けるフィッシャーマン・ジャパンとは。

— まずはフィッシャーマン・ジャパンの成り立ちについて教えてください。

島本さん(以下敬称略) 震災前から三陸の水産業の衰退が見受けられている中で、2011年の震災をきっかけに今まで通りではなく従来のやり方を変えて次の世代に継げるような産業にしていこうということでメンバーが集まりました。それまでは漁師と魚屋の売る側と買う側の関係だけでしたが、水産業全体として、ひとつのチームとなって課題を解決していこうということで立ち上がりました。大きく分けると、漁師さんや漁に関わる人材育成の部分を行う一般社団法人フィッシャーマン・ジャパンと販売の事業を行なっている株式会社フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング。そして、ブランディング事業を行う合同会社さかなデザインの3つの会社がグループとして活動を行なっています。

 そういう組織体制だったんですね。

島本 そうなんです。震災復興の早い段階で漁師とグループを作って何かしらをやっていこうと元々のメンバーでは言っていたんですが、やっぱり自分たちの生業である養殖業や漁業の復活を先にして、ある程度生活の基盤が整った状態からでないと新しいことはスタートできないというか、仲間づくりも時間がかかることだから構想はあるけれどスタートまでは時間をかけてやっていきました。ですので、2011年から2014年くらいまでは東北での復興関連の活動の中で良さそうなメンバーを見つけて声をかけながら準備をしていました。2014年のタイミングである程度自分たちの生業も整った状態になったので、県内各地域に点在しているメンバーに声をかけ、2014年よりスタートしました。

アーバンリサーチとの関わりについて

「かっこいい漁師の服を作って欲しい」との要望がきっかけで始まったアーバンリサーチとフィッシャーマン・ジャパンの関わり。2015年9月にBEAMSとYahoo!との三社コラボ企画の「TOHOKU with Love」から始まり、2016年10月に業界初の漁師ウエアをプロデュースなど、その後も数々のコラボ企画を実現してきました。

島本 東北の復興支援活動で来ていただいたときに、我々もメンバーである漁師の皆さんにアーバンリサーチの方とお会いしてもらい、そこから話が盛り上がって。今までの漁師は従来のありきたりの漁師服を着ていたんですが、我々が立ち上げたときに“かっこよく、稼げて、革新的な”新3Kを掲げて水産業を変えていこうという経緯もあったので、その“かっこよく”見せていく部分で何か力をお借りしてご一緒できないかというところでコラボがスタートしました。

川瀬 そうです。たまたま立ち寄ったコンビニで出会ったメンバーの方から、かっこいい漁師ウエアを作って欲しいということをおっしゃってもらい、じゃあ作ってみようかという流れでしたね。

島本 それがカッパでしたかね。

ロゴスコーポレーション FISHERMAN JAPAN×URBAN RESEARCH マリンブルゾン ¥9,900 (税込)
FISHERMAN JAPAN×URBAN RESEARCH サロペットパンツ ¥8,800 (税込)

川瀬 はい、2016年にリリースしました。毎年、新しい企画をリリースしています。というのも、フィッシャーマン・ジャパンさんの熱量と私たちの熱量が合致しまして。すごく良くしてくれていますし、私たちも石巻に関われることが会社にとっても財産だと思っています。途絶えることなく長くお付き合いをしていきたいという気持ちがあってこそのシリーズなのかなと思います。

 フィッシャーマン・ジャパンさんとは「リボーンアート・フェスティバル」などでも関わらせていただきました。単純に商品の企画だけをやるというよりは、総合的に関わって、水産業の発信というのを今行なっています。

安達さん(以下敬称略) アーバンリサーチさんという一番離れていると言っても過言ではない異業種の方がここまで寄り添ってチームになってくれているということがありがたいです。アーバンリサーチさんと作るプロダクトがファッションが好きな人たちに広がっていくという現象が起こり、ファッションの力でそういう人たちと水産業が繋がりました。それと、毎回かっこいいプロモーションも作っていただけて感謝です。洋服も漁師が着られる機能性を持っているんですが、漁師ではない人たちが着てもおしゃれに見えるというようなものを作っていただいているので、単純にかっこいいものを作るだけじゃなくてそれを通していろんな人たちが繋がっていくみたいな。そういう世界ができているので、フィッシャーマン・ジャパンとしても毎年続けられているのがありがたいです。

 思い返せばいろいろやりましたよね。僕はフィッシャーマン・ジャパンさんとの取り組みをしていて、JMP自体の話をいろんな方に話す機会をいただくことがありまして。フィッシャーマン・ジャパンさんの事例をあげるとすごくみなさん興味を持ってもらえます。とある海運会社の社長さんと話をしたときに、うちの社員のユニフォームもこれにしたいっておっしゃってくださり、海に関わる方が共感してくれているっていうのもありました。

川瀬 池袋サンシャイン水族館さんでも、飼育員さんのカッパを作って欲しいと依頼もありましたね。

 アーバンリサーチとしても、今まで関わったことのない業界との接点がすごく広がりましたし、それによってフィッシャーマン・ジャパンさんに還元できたりすることもたくさんあるので、良い流れができているんではないかなって思います。

JAPAN MADE PROJECT FISHERMAN BLOUSON ¥24,200 (税込)
JAPAN MADE PROJECT SEA PARKA 2 ¥26,400 (税込)
JAPAN MADE PROJECT ISHINOMAKI SHIRTS ¥12,980 (税込)

トリトンプロジェクトについて

フィッシャーマン・ジャパンが掲げる“フィシャーマンを1000人増やす”という目標。担い手不足の問題を解決するためのトリトンプロジェクトについても、深く説明してもらいました。

島本 “きつい、汚い、危険”と言われている水産業を“かっこよく、稼げて、革新的な”新3K産業に変えていこうということと、次の世代のことも考えて水産業に関わる多種多様な方をフィッシャーマンと名付けて、フィッシャーマンを1000人増やしていこうというビジョンを置いたんですね。その中で担い手育成をどのように考えていこうかと。元々は家業としてやっていた産業に外からの人を受け入れるということや人を雇う年間での出費などの整理から始め、まずは水産業の窓口を作ろうということで立ち上がったのがトリトンプロジェクトです。水産業に関わりたいと思ったときに相談できるトリトンジョブという水産業特化型の求人サイトを作りました。そして、働く人を受け入れられるように沿岸部にある空き家を改装して漁師専用のシェアハウスを作り住まいも確保しました。地方で働くとなると、仕事と家とコミュニティがあることが必要だなと思っているので、それを我々がサポートしていきますということで、漁師と新人漁師のマッチングのサポートをやっています。一番最初は石巻でスタートし、それを続けていくことでいろいろな沿岸部から声がかかり気仙沼市だったり福島のいわき市などにも広がっていきました。実際に漁師になった人数は宮城県内でいうと60人くらい。あと、2020年から、魚探装置を作り水産業をサポートしている株式会社ライトハウスというチームと一緒に、水産業のDX化をすすめ環境や経済的な面だけでなく人材も持続可能な産業として盛り上げていこうという活動もしています。それぞれでやってきたことを一つにしていこうと話しており、それを合わせるとトリトンプロジェクトとしては全国で180人の漁師を育ててきたことになります。

 フィッシャーマン・ジャパンさんはいろいろチャレンジングなことをされていますよね。なんか、ニュースでたまたま見たんですが、漁師さんがモーニングコールをやられていたり。それとかすごいなって。

安達 あれはキャンペーンでやっていたんですよ。石巻担い手育成事業として、面白いことをみんなでやっていこうよって話になり。それで、石巻市がPR予算をとってくださると言っていただき、私の先輩で広告代理店に勤めていた方にお願いして手伝ってもらったときのものです。それで漁師が直接たくさん増えたとは言えないんですが、大学生のインターンが増えたりモーニングコール良いっすよねって言ってくださる方も増えたりとか。そのときに自分もデザイナーとして憧れていた広告賞であるACC賞やPRアワードのゴールドもいただきました。それで、業界の方に注目してもらったというのがありますね。

島本 漁師の世界は家業というのもあり、なかなか知られない世界でもあったんですが、我々団体が立ち上がったことでより多くの人たちに関わってもらえるきっかけを作りたいと思っているので、PRで若者と接点を作ろうというのもそうですし、アーバンリサーチさんをはじめ、いろんな企業とコラボさせてもらっているのも今まで水産業だけでは接点を持つことができない層の方とも何かしら関係を築けることができたら良いなと思っています。

 アーバンリサーチとしてはトリトンプロジェクトの中で、新しく漁師になられた方々に僕たちが協働で作っている漁師用のウエアを差し上げています。今年は7名の方に贈りました。漁師への第一歩を踏み出していただいて、今後も頑張ってくださいという気持ちを込めて贈っています。若い方が着て嬉しくなるようなものを提供できているのであれば、僕たちとしても関わらせていただいている意義があり、お役に立てているのかなとは思っています。

島本 それだけではなく、コラボ企画の売り上げの一部も寄付していただいています。自分たちの想いだけでこういうことをやりたいって実現させるためには、こういった形で企業さんから活動の応援をいただいたりとか継続させるためにご一緒していただいていることも増えているので、すごくありがたいなと思います。

漁業の未来を繋ぐ担い手の言葉

最後に、フィッシャーマン・ジャパンの活動によって生まれた若き担い手さんへのショートインタビューを実施しました。実際に働く若い声からも、水産業への魅力が伺えます。

New Fisherman 01

佐藤 遥斗さん(20) 仙台出身

— 漁師になってから何年目ですか?

2年目です。去年の5月に入ったので、1年と半年くらいです。

— お仕事内容について教えてください。

メインは海苔養殖なんですけど、種牡蠣(牡蠣の採苗から中間育成まで手がけたもの)を育てています。

— アーバンリサーチとコラボの漁師ウエアについてコメントをいただけますか?

動きやすくて、デザインが若いというかなんていうんすかね、カラフルで良いなって思います。

— 何色が一番お好きですか?

オレンジです。普段から使っていて、穴の開いたところを修理して使っています。

— 漁師になってみてのやりがいや楽しかったことを教えていただけますか?

船を運転させてもらったこととか、あとはフォークリフトを運転させてもらったこととか、やっぱり自分の中でできることが増えたり、任されることが増えていったりすることですかね。まだミスも多いんですけど、自分がやれることが増えていくことで成長が見えるので楽しいです。

— 未来のフィッシャーマンに向けてのメッセージをお願いします。

自分は漁師に興味があってフィーシャーマン・ジャパンに連絡してインターンでここに来させてもらって、そのときにすごく楽しくて職場の雰囲気も良くて、先輩方が漁業をしている姿を見て自分も漁業をやろうって決め手になったので、若い人でもちょっとでも興味のある方がフィーシャーマン・ジャパンの活動を見て、自分も漁師になろうと思ってくれたら嬉しいです。

New Fisherman 02

三浦 大輝さん(28) 大阪出身

— 漁師になってから何年目ですか?

6年目になります。2017年8月にここに来たので、5年と2ヶ月ですね。

— お仕事内容について教えてください。

ホタテとか銀鮭、牡蠣とかの養殖です。あとは、今の時期に定置網もやっているんですけど、産卵のために戻ってきた鮭を定置網で取っています。

— 漁業権を去年取られていますよね。

はい。去年取りました。それまで5年間くらいは今の親方の元で修行みたいな感じで働きながらやっていたんですけど、自分で独立してやっていきたいという想いがあったので、それを目標としてやってきた中で去年やっとその権利をいただいて、自分でも養殖をできるようになって牡蠣の養殖を始めました。

— アーバンリサーチとコラボの漁師ウエアについてコメントをいただけますか?

漁協の購買で売られているものってみんなが着ているので、それと比べたらデザインも含めてオシャレやなって思いました。

— 何色が一番お好きですか?

僕は緑ですかね。

— 漁師になってみてのやりがいや楽しかったことは?

魚とか海のものを触るのが好きでこの仕事をやりたいなと思ったんですけど、牡蠣も小さいときから海で育てて、試行錯誤して大きくしていくので、家族とかお客さんに食べてもらって美味しいって言ってもらえるのが嬉しかったですしやりがいにもなりますね。牡蠣以外にも宮城の海産物は大阪では食べられないので家族に送ったりします。

— 未来のフィッシャーマンに向けてのメッセージ

僕は普通の会社員だったので、まさかこんな仕事をするとは思っていなくて。やりたいと思ったことがあったら、まず飛び込んでやってみる方がいいと思います。

フィッシャーマン・ジャパン
https://fishermanjapan.com/

JAPAN MADE PROJECT
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Text/Nao Takamatsu

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