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LIFE STYLE&BEAUTY JAN 23,2023

ものづくりの街を再確認する
JAPAN MADE PROJECT OSAKA

JAPAN MADE PROJECT(以降JMP)の活動を深掘りする連載企画の第二弾は、町工場でのものづくりが身近にあった歴史を持つ大阪。“こうばはまちのエンターテイメント”を合言葉に八尾市を中心に活動する『FactorISM(ファクトリズム)』とは? 大阪のものづくりの魅力とは? そして八尾にある友安製作所とコラボレーションしたアイテムについても深掘りしていきます。


(左から)アーバンリサーチ SDR(サステナビリティ推進)シニアチーフ 宮 啓明、友安製作所 CEO 友安啓則さん、友安製作所 ソーシャルデザイン部 担当執行役員 松尾泰貴さん

※撮影時のみマスクを外しております。会話中はスタッフ全員がマスクを着用し、一定の距離を空けるなどコロナウイルス感染拡大防止対策を施したうえで行っております。

大阪のものづくりについて

— 大阪のものづくりについてどう考えられていますか?

友安 大阪は日本で唯一の技術みたいなのもありますけど、それよりも雑多というか領域が広いというか。場所によってもさまざまで、例えば東大阪であればより細かいもの、八尾になればもう少し大きな機械ものになってくるし、金属加工もあれば食品や布もあります。ですので、いい意味で雑多なものづくりがある街というのが大阪のイメージですね。昔は天下の台所と言われて“食”ばかりがクローズアップされていましたけど、いろんな方に言われるのが「大阪だとものづくりの全てのものが揃うよね」と。特化した“何か”というよりは街全体でものづくりができるのが大阪なのかなと思います。

 僕自身がもともと広島出身で、大阪へは学生時代に出てきてもう十数年経つんですが、たまに中心地から外れていったところに行くと、いろんな工場から響いてくる音とかいろんなものづくりをしてる会社があるんだなというのを感じていました。しかも、ちょっと調べたらすごいものを作っているような会社が意外と街中にごろごろあるなと。

友安 小さいとき、僕は大阪で育ってきたので、いろんな鉄の切りクズみたいなものが道路まで出ていて。

松尾 懐かしい(笑)。

友安 それを避けて通るみたいな、もしくはそれを持って帰って自分のおもちゃにしたりいろんな工作に使ったりしていましたね。今、時代は廃材を利用して何かものを作るサステナブルな考えが大切だと思うんですけど、昔の大阪の人はそれを自然とやっていたというか。

松尾 でもそれが大阪の町工場のイメージでしたよね。自転車もよくパンクするし(笑)。近所の工場のおっちゃんがドラム缶を自分で改造してロケットストーブというのを作ってて、それで焼き芋を焼いてましたね。

友安 全部自分たちで作るっていう部分のDNAがあると思いますね。

松尾 友安製作所にも自分たちで作った機械がありますもんね。

友安 今と違い、昔の大阪の人たちっていい意味でケチというか、ないものはつくる精神で自分たちで工夫してものづくりをしていました。だからそういうところから新たな産業が生まれたりします。うちはカーテンフックを製造していますが創業者が細い金属を曲げる仕事を片手間でやっていたことが本業になったとか、自分たちで試行錯誤やってきたことが今の事業に結びついてるっていうのがなんか腑に落ちますね。大阪人ケチだもんね(笑)。

一同 (笑)

友安 いい意味、でね。何かの記事で読んだんですが、お菓子の箱とかを再利用するのは関西人が多いと。なんかそういう文化がもともとあるんだと思います。

— もったいない文化という。

友安 そうそう。あれって関西からじゃないかって勝手に思っています。

松尾 二毛作じゃないですけど、機械や工場でも二毛作をしようと。簡単に言うと工場の稼働率が悪いとその時期の固定費がもったいないので、そのときには別の仕事をするという考えを持っていたんだと。

友安 だからこそ専業が多いんですよね。磨くだけの研磨屋さん、へら絞り専門の絞り屋さん、鍍金は鍍金屋さんがあったりするんですけど。大阪はどちらかというと得意となっていることが仕事になっているので、分業制っていうのもひとつあります。だからこそ技術も高いというか、それがだんだん時代の流れで淘汰されていくところはあるんですけど、逆に受け継いだものでも新たなチャレンジをしたところから、また新たな産業が生まれてくるのも大阪なのかなと。真鍮って磨けばめちゃくちゃ光るので、ずっと磨いてきた職人が磨くともっと綺麗になるんです。それでアクセサリーを作っている人もいます。だんだん生業のところから新しい風みたいなのが入ってきて、新しいものづくりが増えてきている気がしますね。

松尾 そうですね、もともと繊維産業の街ですもんね。木綿とかを紡いでいったら人の手でやるのが大変になったから機械を作った会社があって、それに伴って機械加工の街になってきて、だから意外と合理的な会社が多いのかなと思います。

友安 大田区と東大阪って似てる?

松尾 どうなんでしょう。大田区は東京なんでこちらより物価が高いから航空機の精密部品とかより高付加価値なものづくりが盛んなイメージです。逆に東大阪や八尾は金物団地や印刷団地などの行政的な区割りをしている反面、利便性の良さから住宅と工場が近いカオスな状態の街です。準工業地域という線引だけして産業用の道路を作ってそれ以外の住み分けは自由なので、住宅があり、ご飯屋さんの横で機械を作って、その横で食品を作っているという状況があります。

友安 大阪って一括りにするとコストパフォーマンスが高いのかもしれないです。僕らはいろんなところに見積もりを出しますけど、安いとは言われますね。やはりいろんなものが高い東京でものを作ると高くなる。でも、田舎に行けば行くほど輸送費がかかっちゃうので結果、高くなっちゃう。第三の都市と言われている大阪くらいが、そういうロジスティックな部分で言うとめちゃくちゃ便利だし、物価も関東と比べれば安いので必然的に作ったものが安くなるっていう。だから意外に大阪って地の利みたいなのが実はあるのかなというのを思いますね。

松尾 ぶっちゃけ大阪で完結はできますよね。もともと水の都って言われていましたから、八尾とかでも地下を掘れば水が出てくる、だからその地下水を工業用水として使う。普通に水道を使うとお金がかかるので。やはり工業に水は必需品というか、洗浄するために水を使わないといけないので。そういうときに、東大阪も八尾も地の利を活かしてると思います。

友安 意外と広がりましたね。まさか大阪のものづくりについてここまで話が膨らむとは。

FactorISM(ファクトリズム)について

— FactorISMについて詳しく教えていただけますか?

友安 FactorISMは松尾が行政時代に立ち上げたもので、それを転職したあとも継続して友安製作所内でやっていて。工場のアトツギが何か踏み出すきっかけみたいなのを提供できれば劇的に変われるんですよね、そのきっかけづくりとしてFactorISMを彼が行政時代に考えて創り上げた。

松尾 さっきの話とすごく近いんですけど、昔の町工場はすごく生活に近かったんですよ。だからある意味、音などで嫌がられていたのかもしれないですけど、この街の工場でものを作っていたというのが認識されていたんです。昭和の時代には産業の発展とともに公害問題が発生して。昔、光化学スモッグってよくあったと思うんですけど、今はほとんどない。当時の行政が環境保全対策を積極的にやった結果、解決された。だけど、工場を作るときにセットバックといって下がって工場を作りなさいということや塀を設けて木を生やさないといけなかったりとか、そういう制限を設けた結果、工場の人とまちの人との距離まで遠くなったんですよね、工場の気配とか。ものづくりがすごい遠い存在になってしまいました。街の人たちとの接点が遠のいてしまうと本当に担い手がいなくなる。それをもうちょっと昔みたいに工場と街の人が近所づきあいができる場づくりをするっていうのが一番最初の構想です。町工場でものを作ってる様子を見せるだけで、子供達は「すげーっ」て、「おっちゃんみたいな職人になりたい」とかそういう声を聞くだけでも職人のモチベーションが上がるし、日々のやっていることがちゃんとお客さんに届いているとか、そういう想いをちゃんと発信できる場としてオープンファクトリーの取り組みをまちぐるみで始めました。

友安 今は工場のイメージがめちゃくちゃ悪くて3Kや5Kって言われるくらい、いろんなイメージを持たれているので担い手がいないし僕自身もこの会社に入ってきて製造業というのを一度捨てたんですよ。もともとはネジ屋で始まっていて、うちの親父はネジとカーテンフックを作っていて、でもそれじゃ食べていけなくて僕が内装とかインテリアを始めたんですけど、ものづくりメーカーから商社みたいな感じになって。それなりに成長してスタッフも100人を超えるようになったんですけど、なんか自分の中で悶々としてたというか、会社名が友安製作所なのにものを作ってないというのがすごく嫌で。そんななか、『トモヤスフェスタ』っていう会社をオープンにするイベントを8、9年くらい前にやったんですよね。うちの会社をみんなに見てもらうみたいな感じでやったら、最初は「オシャレな会議室ですね」とか言われるんですけど、結果的にみんなが写真を撮ったりしているのがうちのおじいちゃんが作った昔の機械なんですよね。そのときに、もしかしてうちの会社の価値ってオシャレなデザインとか事務所ではなくものづくりの部分だったのではと5年くらい前に気づき、それから自分たちが考え、つくるものづくりを進めるようになりました。まず会社を見せた、そこで価値に気づいてその価値に再投資したことによって得られた産物という話なので。

— 見られることって大事なんですね。

友安 そうなんです。見られることってめちゃくちゃ大切ですね。

 前回のFactorISMはどうだったんですか?

友安 良かったですよ。60社が参加していたのもあって、八尾市だけでなく門真市とか堺市とか市をまたいで連携が進んだのも良かったですね。広域ですることによってたくさんの方に知ってもらうこともできたし、単純にお客さんが喜ぶだけのイベントじゃなくて、経営者同士が仲良くなったというのが良かったですね。何か一緒のことをワークショップでやって、自分の会社を他の市域の人に知ってもらうことって非常にわかりやすい図式だったのかなと思います。結局、何人来ていただいたのかな?

松尾 2万人です。

 2万人はすごいですね。

松尾 見せることに対しての抗体が生まれて、普段の仕事もオープンマインドになっていくというのが最終ゴールという感じですね。

アーバンリサーチとFactorISMの出会いについて

— アーバンリサーチとFactorISMの出会いはどういった経緯があったんですか?

 経緯としてはJMPの別企画でご一緒させてもらった木村石鹸の方に「八尾に面白い人がいるよ」って繋いでもらったのが松尾さんでして。行政時代にFactorISMをされているというタイミングでお話させてもらう機会をいただいて、それでアテンドもしてもらいながら実際にものづくりに触れて、僕が大阪でおもしろいと感じていたことはこれだって気付かされました。もっとたくさんの人にこの大阪のおもしろさを知って欲しいと強く感じたので猛アプローチして、今回このようなコラボレーションパートナーにならせていただいたんです。

松尾 僕もめっちゃ営業したんです。ワークショップとかをできる体験施設に来ていただいたんですけど、そのときに用事で行けなかったので、ぜひ、挽回させてくださいと八尾の会社の資料とか全部持ってアーバンリサーチの本社にプレゼンしに行ったんです。

 わざわざ来ていただきました。

松尾 その結果、二日間くらいまわりたいとおっしゃっていただいたんでアテンドさせていただきました。ニーズを聞きながらこんなものづくりをしているなどの説明をして6社くらい回ったんですかね?

 そうですね。その経験があり、実際に時間をご一緒したからこそ、ものづくりをされている方の生の声を聞いてより深く入っていけました。それまでは、ストーリーをどうしようかなって悩んでいたんですけど、みなさんのお話を聞いていたらそれが一本繋がったんで。非常に貴重なお時間をいただきありがとうございます。

— それが何年前の話ですか?

 3年前とか、コロナ前の話ですね。一度、止まっていたんですがこの一年でギュッと進めましたね。

友安製作所について

— 友安製作所についてお伺いしたいのですが、職人さんの技術など特別なものはありますか?

友安 僕たちは基本的にはないものを作るという部分がもともとの会社のマインドにあって、お客さんから頼まれたものをどうやって作るのかを想像できる職人さんがめちゃくちゃ多かった。今、僕らが求めてる職人像って結構変わっていて、多摩美術大学のグラフィックデザイン出身者や、もともとプロのスケーターなど変わり種の溶接工がいますが、ちょっとアート脳みたいなのを持った人が多いですね。そんな職人のおかげでプロダクトとしてレベルが急激に上がったというか発想力とかもそうだしそれを実現するときにデザインとしての美も備わっているというのがうちの強みですね。それと、真鍮とか木とかいろんな材料を使えますし、レーザーカットの機械もあれば昔からの汎用の機械もあるので一点ものとかも得意です。

 会社にお伺いしたときに社員さん同士がニックネームで呼び合ったりと、とてもフランクな部分が垣間見れました。社員さんとすれ違うときの雰囲気とか全部が良い会社だなって。良い人がいれば良い人が集まってくるんだなと思いました。

友安 嬉しいことに良い人たちに集まっていただいています。ロールプレイングのようにどんどん強い仲間が増えていってる感じです。できる領域がだんだん広がっていくのも経営者としても面白いです。

コラボレーション商品について

— 今回のコラボレーション商品について教えてください。

友安 いろいろアイデアとかを出させていただいて作ったのがこの2つの商品です。1番のテーマはアウトドアでも使えるけどもお家でも使える。アウトドアって言ったらどちらかというと無骨オンリーというイメージがあると思うんですけど、僕らのはそこにちょっとしたデザインを加え、お家のインテリアとして使っててもおかしくないようなものを作りたいなと思って企画しました。これはアウトドアシーンではテーブルとして使うと思うんですけど、自宅ではサイドテーブル的な使い方とか飾り棚だったりとか。製造業としてのこだわりとしては、鉄と木を組み合わせたかったというのがひとつ。木もこだわっています。めちゃくちゃ安い素材というよりもウォールナットを使って、さらに価格を落とすために板を4枚繋いでいるんです。繋いでもしっかり強度が出るように裏は鉄の反り止めで固定しています。

松尾 一枚の木材ではなくて家具づくりで出てきた端材を使ってものづくりをしています。

友安 それと、ここに真鍮のワンポイントを持ってきています。普通この形状でやると板に点で接することになり細かい傷がついていくんです。でもこの真鍮は可動式になっていて板に面が当たるようになるので大丈夫です。あと、僕の個人的なこだわりでマイナスビスにしています。これも特注で作っています。

松尾 そういったことも、もともとの創業がネジ屋だったから可能なんです。

 友安製作所さんは自社で一貫していろんなものが作れる技術をお持ちだったので、本当にテーマをもとにざっくりとオーダーをさせていただきました。そこから企画をしてくださり、随所に友安製作所さんの魅力をしっかり入れ込んだものを提案いただきました。

友安 普通、垂直にしか穴は削れないのですが、この斜めに削っていく作業がすごい大変なんです。そのために冶具という型のようなものを作ってからやります。プロダクトとなるとそれを10個20個100個作らないといけないので、平均した商品を作ることを可能にするためにひとつずつ型みたいなのを作っていかないといけないんです。それを作るのが大変だったのと、これは鉄と真鍮の異素材を組み合わせていて、意外と相性が良くないんです。でも真鍮メッキにはしたくなく、時間が経てば経つほどの経年美化をある程度楽しめるものを作りたかったので、いろんな材料を選びましたね。こだわりたくて、自分たちで一番手間がかかるものを選んだり(笑)。結果、納期を延ばしてもらいましたね。

 ここまでの作り込みは予想以上で、この企画を友安製作所さんと一緒にできてよかったなと思っています。机の天板にもレーザーでさり気なく文字を入れてもらっています。“8080-01”って入れているんですが、松尾さんがよく「やおやおしてる」とSNSで投稿していたんで、やおやお初号機という意味を数字で遊んでみました。実際、僕も家で使っているんですけど、使い勝手が良いのでオススメです。

 あと製品でいうと、柏原市の道着などを手がけている九櫻さんにご相談をしてランタンのケースを竹刀袋をベースに作っていただいて、刺し子生地を用いたケースがこのランタンにはついてくると。こちらのバッグは、この机が入るサイズにしているのでかなり大きなサイズのトートバッグなんですけど、これは別売りです。バッグとしても使えますし、いざとなったら机を入れて運べます。これらは今回の企画に合わせて作っていただいたものです。

コラボレーションアイテムに関わっていただいた職人のドンさん、パンチさん、ピーターさん

今後の展望について

— JMP OSAKAとしての今後などについても教えてください。

友安 僕らが狙っているのが、アーバンリサーチさんの商品を購入するお客さんのファン層と僕らの商品を購入するお客さんのファン層って違うと思うんですけど、実は重なっている部分がかなりあると思っています。そこをしっかり活かしたいです。そこで僕らのことをアーバンリサーチさんのお客さんに知ってもらう、逆に僕らのお客さんにもアーバンリサーチさんとの取り組みを通じて知ってもらい、それを内外に発信していきたいです。プロダクトとしても同じでアウトドアとインテリアの間を狙ったプロダクトは、今後もシリーズ化していきたいです。クリエイティブの最先端であるアーバンリサーチさんと一緒にやっていきたいなと思っています。

 友安製作所さんのものづくりの技術力の高さというのをこれからも詰め込んでプロダクトを一緒に開発していきたいですね。また、友安さんや松尾さんもおっしゃっていたように、さまざまな理由で大阪の工場であったりものづくりを行う担い手が減ってきているということに対して、僕たちがFactorISMと連携して、より大阪のものづくりのおもしろさを世の中の方に知ってもらう活動を続けていきたいです。今後とも楽しく、そして良いものを作っていきたいですね。

友安製作所
https://tomoyasu.co.jp/

FactorISM(ファクトリズム)
https://factorism.jp/

JAPAN MADE PROJECT
“日本の地域はおもしろい”
日本には、まだ知らないワクワクすることであふれています。私たちは、その土地を愛してやまない地域の方々とともに、おもしろさや課題に向き合いながら、未来につながる地域の“すごい”を発信していきます。
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Text/Nao Takamatsu

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