団地GUY
第三回 金子 大地
段違いな才能を持った人物をフィーチャーする不定期連載企画『団地GUY』。三人目は話題作に立て続けに出演中の金子大地さん。説得力のある強い眼差しの中にある底知れぬ優しさにフォーカスを当ててみた。
金子大地という俳優はその辺の若手俳優とは一線を画している。とかくビジュアル面だけがフィーチャーされ「イケメン俳優」などといった品のないカテゴリーに括られがちな年齢だが、映画の中の彼はもはや違う次元にいた。LGBTの役も、駆け出しのカメラマンの役も、未来人の役も、そしてこれから公開される「先生、私の隣に座っていただけませんか?」での教習所教官の役も、金子大地が演じるとそこにはリアリティーが存在する。その場所に行くと本当に彼がいるのではないかと思わせるような感覚。僕はすぐに虜になった。程なくして自分の中にある願いが芽生える。「団地GUY」に出て欲しい…その願いは思ったよりも早く現実となった。
取材場所である控え室にやってきた彼は、おおよそ期待した通りに寡黙な青年で、あまり自分を晒すことが好きではないのがひしひしと伝わってくる。無論インタビューも例外ではないはずで、僕は一瞬心が怯みそうになりながらも毎回聞いているつかみの質問を振り絞ってみた。
Interview with Daichi Kaneko
— 段違いな男を団地で撮り下ろす「団地GUY」。まずこの企画の率直な感想を伺いたいのですが…
金子: …なんだか面白いなと(笑)
— 言わせてしまってすみません(笑)金子さんにとって団地ってどんなイメージがありますか?
金子: 小さい頃、友達が団地に住んでいてよく遊びに行っていたのですごく馴染みがあります。
— そうでしたか。ちなみにご出身は?
金子: 北海道です。
— じゃあ自然の中で遊ぶことも多かったですか?
金子: そうですね、ずっと自然の中で遊んでいました。
— それで俳優を目指し東京に?
金子: はい。18の時です。
— 何か戸惑いとか迷いみたいなものはなかったですか?
金子: ずっと東京に行きたいなとは思っていたので戸惑いはなかったですね。いざ来てみてからの苦しみの方が多かったです。
— 金子さんのファッションについて伺いたいと思います。普段はどんな格好が多いですか?
金子: 基本的に楽な格好が多いです。役者って現場に着いたらすぐに着替える仕事なので、動きやすく、着替えやすく、締め付けがないような服を普段から着ています。
— 今日は金子さんTシャツ1枚ですが、もう少し寒くなってきたらどうしているんですか?
金子: あまり重ね着もしたくないので、大体Tシャツの上にコートやダウンを羽織る感じですね。
— じゃあジャケット着てカーディガン着てシャツ着てみたいなことはない?
金子: ないです(笑)
— 買い物は行きますか?
金子: 最近は全然行けていないですね、時期も時期ですし。でも好きではあります。
ブランド古着の店とかで掘り出すのが好きです。同じブランドのものでも都心と地方の店で全然値段が違ったりしますよね。そういうのを友達と探しながら買うのが好きなんです。今日着ているのもそういう店で買いました。
— 気になる服を見つけたら即決するタイプですか?
金子: そうですね、即決しますが試着は必ずします。良いと思っても着たら全然みたいなことが多くて。それはなるべく避けたいので。
— 新品より古着の方が多いですか?
金子: 古着の方が多いかもしれないです。安いですし、探している時って楽しいですよね。
— 古着が好きということは家具とかもビンテージのものが好きだったり?
金子: それが家にあまりものがないんです(笑)
— ミニマリストなんですね。
金子: カッコよく言うとそうかもしれませんが(笑)本当にものがないです。
— 普段持たれてるバッグとかには何が入っているんですか?
金子: 基本的にバッグも持たないです。今日も手ぶらですし。
— でも今日みたいな(舞台挨拶の日に取材させていただいています)日は帰りに持って帰るものも出てきますよね?
金子: はい。そういう時は抱えて帰ります(笑)
— ファッションの情報は何で得ていますか?
金子: 僕ものすごく疎くて。ファッション誌とかもそんなに見ないです。
— 趣味はありますか?
金子: サウナですね。すごくハマっています。
— じゃあ休みの日は整えに行くんですね?
金子: 休みじゃなくても行きます。仕事がある日でも24時間やっているところに行ったりします。
— 3セットいくんですか?
金子: はい、3セットはマストです(笑)4セットいくときもありますね。
— いまキャンプでもテントサウナとかあるじゃないですか。金子さんはアウトドアとかはしないんですか?
金子: すごく気になってはいますが東京に来てからキャンプはしたことがないんです。いつかアウトドアでもサウナをしてみたいですね。
— 映画「猿楽町で会いましょう」では写真家の役でしたが、その後もカメラにハマったりはしなかったですか?
金子: 撮影していた期間だけでした(笑)
— 意外です。構え方が撮ってる人の構え方だったので、絶対ハマっていると思いました(笑)
金子: すみません…(笑)実は撮られるのも撮るのもそんなに好きではないんです。
— 撮られるのが好きじゃないのは今日なんとなくわかりました(笑)
それではちょっとお芝居のことを伺いたいのですが、普段の役作りはどのようにしていますか?
金子: 2パターンあって、自分に近いような役の時は現場に行って自分から出る感情でできるのですが、今回の「先生、私の隣に座っていただけませんか?」は違っていて、現実世界にいるかもわからないような役でどういう結末になるかもわからない映画なので難しかったですね。監督が描いている新谷(役名)像は何だったんだろうっていう悩みもあって。人間っぽさと漫画っぽさ、どちらにも寄っていないようなところで難しかったですね。あまりにも自分とはかけ離れていたので、今までの役の中でも特に難しかったです。
— お芝居するときに気をつけていることはありますか?
金子: どんな役を演じても金子大地でしかないと思っています。ただその役として映って出ていますが、金子大地が出ているんですよね、あそこには。なので自分から出る体の動きだったり感情みたいなものを大事にしていて。でも「先生、私の隣に座っていただけませんか?」の新谷に関しては金子大地がいるのかいないのかをやってほしいと監督から言われたのですごく悩みましたし、そこの塩梅が難しかったです。
— すごく興味深い話ですね。僕は金子さんのお芝居を観ていて、本当にそこに居ることができる俳優さんだなと思っていたので合点がいきました。
金子: 衣装だったり、メイク、髪型、カメラマンさんの力によってその役が存在するだけで、僕は僕で居るんです。もちろん演じてはいますが、その方が素の感情が出て説得力が出るんじゃないかなと思います。
— なるほど。それでは衣装が役作りの手助けをすることはありますか?
金子: ものすごくあります。やっぱり良い時計をして良い靴を履いて良いスーツを着たら気持ちも入るし、カッコよくなった気分になります。財布に100万円入っていたら自信が出る。それと一緒で服装によってメンタルが変わるので衣装の力は大きいです。財布に100万円も入っていたことはないですが…(笑)
— 衣装合わせとかでは積極的にこうしたいなどと発言されますか?
金子: 前までは用意していただいた衣装に自分が入り込むという作業をしていたのですが、最近はそこを妥協したらダメだなと思うようになってきて、役に対して感じていることなどを言うようにしています。あと鏡チェックはすごくしますね。やっぱり衣装に違和感があると体がすごくかたくなってしまって自然な感情が出づらいので。
— ちなみにお芝居において影響を受けてきた人っていますか?
金子: たくさんいます。それこそ先日ある作品で吉岡秀隆さんとご一緒させていただいたのですが、今までずっと吉岡さんの出られている作品を見てきたので本当に嬉しかったです。こういうお芝居ができるようになりたいと思わせてくださる俳優さんですね。
— 同世代ではどうですか?
金子: 村上虹郎くんは同世代の中で特に影響を受けます。自分では絶対に出せない色気や魅力があるし、あの人にしかできないお芝居があるので唯一無二ですよね。ファンに近いです。あとは寛一郎くんからもいつも刺激を受けています。
— これからどういう作品に出たいとかありますか?
金子: そうですね、世代ごとに俳優の質が変わってきている気がしているのですが、その中でも自分は次で25歳になるので線の太い俳優になりたいなと思っています。もう若者という括りには入れない気がするので。
— 線が太いというのは具体的に教えていただけますか?
金子: 表現が難しいですが、例えば「青い春」のような青春群像劇ってどの世代にもありますよね。今の世代にももちろんそういう映画はありますが、「青い春」の強さってすごいなって思うんです。それってやっぱり出ている俳優さんの存在感だと思っていて、もう明らかにみなさん線が太いんですよね。それが今は、なんというかライトになっている感じがして。もちろんそれがダメということではないんですが、僕は線が太く画にハマる俳優になりたいなと思っています。黒澤映画の三船敏郎さんだったりとか、今ああいう俳優がいるかというとあまりいないと思っていて。スクリーンにドカンとハマる俳優になりたいなと思います。
— 最後にファンに向けてメッセージをお願いします!
金子: 映った僕が全てなので、そこで良いと思っていただけるように、これからも良いものを残し続けたいと思います。よろしくお願いします!
JACKET: Barbour×URBAN RESEARCH ¥46,200 (税込)
SHIRT: URBAN RESEARCH ROSSO ¥14,080 (税込)
PANTS: URBAN RESEARCH ¥16,500 (税込)
SHOES: CLARKS URBAN RESEARCH EXCLUSIVE ¥25,300 (税込)
Profile
金子 大地
1996年9月26日生まれ、北海道出身。
「アミューズオーディションフェス 2014」にて俳優・モデル部門を受賞しデビュー。
2018年、ドラマ「おっさんずラブ」(EX)で知名度を高める。
翌年、ドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る。」(19/NHK)で初主演を果たし、第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞 新人賞を受賞。
今年は、『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』(21/ 松居大吾監督)、初W主演作『猿楽町で会いましょう』(21/ 児山隆監督)、『サマーフィルムにのって』(20/ 松本壮史監督)、『私はいったい、何と闘っているのか』(21/ 李闘士男監督)など出演作の公開が多数。
そのほか主な出演作品に、映画『逆光の頃』(17/ 小林啓一監督)、『ナラタージュ』(17/ 行定勲監督)、『殺さない彼と死なない彼女』(19/ 小林啓一監督)、『君が世界のはじまり』(20/ ふくだももこ監督)などがある。
現在TBSのドラマ「#家族募集します」にレギュラー出演中。
2022年は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(22/ NHK)が控えており、映画は3本公開待機中。
Information
『先生、私の隣に座っていただけませんか?』
9月10日(金)より新宿ピカデリー他全国公開
配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2021『先生、私の隣に座っていただけませんか?』製作委員会
ヘアメイク/Taro Yoshida(W)
企画・構成・衣装・写真・文/杉浦 優