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FASHION NOV 21,2021

団地GUY
第四回 前田 公輝

段違いな才能を持った人物をフィーチャーする不定期連載企画『団地GUY』。四人目はNHK連続ドラマ「ちむどんどん」への出演が決まり、ますます活躍の場を広げる前田公輝さん。心優しい青年役、インテリなエリート役、狂気に満ちたヒール役、どんな役をも演じられる奥行きのある「顔」にフォーカスを当ててみた。


Interview with Gouki Maeda

— 段違いな男を団地で撮り下ろす「団地GUY」。この企画の率直な感想が知りたいのですが・・・

前田: 正直、なんだこの企画と思いました(笑)それは冗談として、笠松さんの回を見ていたのでインタビューにも力が入っている企画だなと。

— 本当ですか! ありがとうございます。この企画は個人的に好きな俳優さんに声をかけさせていただいているので、自ずとインタビューにも力が入ってしまって(笑)

前田: それは単純に嬉しいです。僕もお話するのは好きなので。

— まず初めに団地に対してのイメージってありますか?

前田: 勝手にですが学校の近くにあるイメージがあります。すごく異空間というか、敷地に入ると時間軸がそこだけ違うような、そんな特別な空間というイメージですね。今日撮影した場所も、昭和の時代から時が止まったような、ノスタルジックな気分になりました。

— 子どもの頃はどんな性格でしたか?

前田: しっかりしているように見せるのが上手な子でした。ずっと学級委員でしたし、仕切るのがとにかく好きでしたね。小学校一年生のときの担任の先生から言われた「継続は力なり」という言葉が妙に頭に響いて、その言葉に倣って何か始めたら続けることに努力していたように思います。

— それはすごいですね。6歳から始めた芸能活動は自らやりたくて始めたんですか?

前田: 大人に揉まれて社会を知って欲しいという両親の教育方針ですね。兄と妹と3人で最初は始めて、その後2人は違う道を見つけて僕だけ残った感じです。

— なんて素敵な教育方針・・・そして前田さんを語るうえでは欠かせない「天才てれびくんMAX」のてれび戦士。と僕も普通に言ってしまいましたが、そのことにいつも触れられるのってイヤだったりしますか?

前田: いいえ全然。「天才てれびくんMAX」は僕のルーツなので、そう言っていただけるのはむしろ嬉しいです。スタッフさんとかに「見てました!」と言っていただけることが多くて僕の中で本当に大事なルーツですね。今は「天才てれびくんhello,」にも凱旋させていただいていますし、どんどん触れてくださいっていう感じです(笑)

— 役者さんによっては過去の役やキャラクターのイメージに縛られるのを嫌がる人も少なくないように思います。前田さんがそうやって自分のルーツを大事にされているということ、僕が前田さんにお会いする前に抱いていた前田さんのイメージ通りで感動しています(笑)

前田: そうですか(笑)ありがとうございます。

— それでは少しファッションの話を伺いたいと思います。今までファッションで影響を受けた人はいますか?

前田: 間違いなく兄と母ですね。母はとにかくおしゃれだったんです。普通にジョーダン履いて紫色のMA-1とかをさらっと着てましたから。なかなかいないですよね、そんな母親。兄はキレイめなファッションを昔からしていて、その二人からは影響を受けていますね。

— じゃあ前田さんもキレイめなファッションが多かったんですか?

前田: いや僕はかなり派手でした(笑)中高生の頃はレインボーみたいな感じでしたね。つぎはぎのものとか大好きでしたし、派手なチェックのシャツを腰に巻いたり柄のベストを重ねたり。とにかく色、柄、色、柄!って感じでした(笑)

— え、想像できないです(笑)それがどうやって今日のようなモノトーンなスタイルに変化していったんですか?

前田: ある時思ったんですよね、無駄な時間が多いなって。朝起きてすぐ出かけたいのにコーディネートに30分くらいかかっていたんです当時は。着たり脱いだりして部屋も散らかるしこれは効率悪いなって(笑)じゃあこれからは逆にこだわりを持って白黒とデニムで行こうって自分の中で決めた感じですね。

— なるほど。どんどん削ぎ落としていった結果なんですね。

前田: はい。でも根底にはカラフルな服が好きっていうのがあるので、メディアに出るときは色物を選ばせてもらうことが多いです。

— ご自身のブランド「GM」について伺いたいと思います。まずブランドを始めた経緯から聞いてもいいですか?

前田: コロナ禍で自分の職業を見つめ直して、好きなことを活かして、この時期を何かバネにできたらいいなという気持ちが強かったんですよ。で具体的に何をやろうとなった時にファッションがいいんじゃないかなと。昔は役者が役者業以外の仕事をやると、役者としてのブランド価値を下げかねないような印象でしたけど、今は多様性の時代でユーチューブとかも皆さんやっていますからね。なので役者以外に自分が一番やりたかった部分に共感してもらいたいなと思って始めた感じです。

— デザインはどうやって進めているんですか?

前田: SNSに投稿するにあたって画像や動画の編集作業を自分でしたりするんですけど、その延長線上に洋服のデザインがある感じですね。僕は絵では服のデザインを描けないので、コラージュでアイデアイメージを作って相談している感じですね。

— 「主役はあくまで自分で」というコンセプトが印象的ですよね。

前田: 洋服やアクセサリーを主役にして自分のモチベーションを上げるというのも一つの考えだとは思いますが、僕はやっぱり主役は自分であってほしいなという考えなんですよね。洋服はそこに対する彩りなので。デザインをするうえでも、生きていくうえでもその気持ちを大事にしています。

— それでは今日着ていただいたコーディネートについてですが、4パターン提案させていただいた中ですぐに2パターンに絞られたのが印象的でした。あの選定基準をお聞きしたいのですが。

前田: まず、青と黄色があると選んでしまいがちです(笑)というのも昔母が僕と兄と妹の洋服タンスの引き出しを色分けしていて、僕は黄色だったんです。だから自分の中で黄色はパーソナルカラーみたいな感じに勝手に思っていて。青は役で髪の毛に青いメッシュを入れたら評判が良かったので似合うのかなっていう印象があり、それでその2色には目がないという(笑)

— なるほど(笑)その2択からは実際に着てみてご自身にフィットするものを選ぶ感じですか?

前田: そうですね。あとはその日の仕事内容でどういう需要があるかなどを考えて決めます。

— 今年前田さんは30歳。30歳を迎えるにあたり心境の変化などありましたか?

前田: ありましたね。30歳になる1、2ヶ月前は先輩の役者に聞いたり、それこそ兄に聞いたりしていました。30歳ってどう?って(笑)でもいざ30歳になってみるとそんな大げさなものではなくて、いつのまにか30歳になっていた気がします。そんな30歳直前にいきなり人格って変わるものではないですしね。今はすんなり自分が30歳だと受け入れられています。

— 30歳をきっかけに始めたこととかってありますか?

前田: 言葉遣いに気をつけ始めました。今まで知らずして「あれ」「これ」「なんか」、あとは横文字なんかも使って他人に楽に気持ちを伝えたりしていたんですが、それが急に恥ずかしく思えてきたんですよね。

— すごくわかります。日本語の美しさみたいなものも感じてきますよね。

前田: はい。でも口語になるとどうしても「あれ」とか出てきてしまうんですけどね(笑)

— 変に思わないで欲しいのですが、僕は前田さんの顔が好きなんです。役者として両極端な役ができるというか、例えば猟奇的な犯人の役もできれば田舎から出てきた心優しい青年にもなれる。そういう顔って役者さんの中でも稀有だと思うのですが、前田さんはご自身の顔は好きですか?

前田: え、嬉しいです。自分の顔はこの仕事をやっているうえでは好きですかね。でもこの顔じゃなくても好きな気がします。今この顔が好きな理由ってある程度自分の顔がわかっていて、見せ方としてこういうほうがいいなとか、こう映ったらこう見えるだろうなとか、パーツを把握しきっていての好きなので、この顔でなくてもまた違う自分を把握する楽しさがあって好きだと思いますね。一回現場で「役者になるために生まれた顔だよね」って言われたことがあって、それはすごく嬉しかったですね。

— 普段、役作りはどうされていますか?

前田: 昔は本当に「役を生む」みたいな感覚でやっていて、それこそノートに何月何日に生まれて〜とか書いていたんですけど、そうすると自分の中での役と客観的に監督とかが描いていた役が少しかけ離れていく印象があって、凝り固まってしまう感じというか。それがヒール役とかだったらむしろそのかけ離れた分が振り幅になったりするのでいいんですけどね。そこはもうTPOで使い分けていく感じですかね。割と普通な人の役だったらゼロから作るというのは限界があるなと感じて、基本的には自分から派生したところを探していますかね。ここまでは自分で生きてて、自分という幹の中から枝分かれしていってそこに実りがあればいいかなと。この役をこうやってやろうという意識が強すぎるとあまりうまくいかないことが多いですね。

— すごい話ですね。それでも現場では他の役者さんがいますし、思っていた感じと違うなっていう時もありますよね?

前田: ありますね。もうその現場現場で全然違うのでアジャストしていくしかないんですよね。でもさっきの「顔」の話じゃないですけど、僕って髪型を変えると結構別人に見えるところがあるんです。これは本当に得なんですけどね。だから意外と役作りで足し算しすぎちゃうとその役の世界から逸脱しちゃうような気がするので、そのバランスを考えながらやっています。

— 髪型が役作りの重要なポイントになるということなんですが、衣装が与える役作りの影響って感じますか?

前田: 僕はそんなに感じないです。そこはそこというか。そもそも役者の仕事って目に映るものに自分がないと割り切っているので、衣装にこだわりはあまりないんです。だって衣装のプロがいるわけじゃないですか。そのプロが選んだものを着るだけですね。もちろん意見を求められたらこっちがいいとかは言えますが、基本的に衣装合わせはマネキン状態です(笑)

— そうなんですね。「会社は学校じゃねぇんだよ」では伝説の敏腕社長の側近、かなりできるビジネスマンの役ですが、衣装で着用されているメガネはもしかしたら前田さんの意見が入っているのかななんて思っていたのですが。

前田: いやあれも用意していただいたものです(笑)今回は割とセリフがなくて居るという時間が多いので、見た目と雰囲気だけでデキる感じの側近を演じられるようには心がけています。

— そして2022年度NHK朝ドラ「ちむどんどん」にご出演することも決まっています。今回初出演ということで決まったときの心境をお聞かせください。

前田: 撮影が始まって、やっと夢じゃないんだなと思えてきた感じです。念願の朝ドラだったので本当に嬉しかったですね。でもそれと同時にプレッシャーも感じています。しかも今まで多かったヒール役ではなくて、すごく好青年の役なのでなかなか難しい挑戦ですね。この仕事をやっていくうえで、自分自身が太陽みたいに常に輝きを与え続けるような存在になりたいという漠然とした目標はあったのですが、役を通してそれをみなさんに伝えられるという嬉しさがあります。

— これからやってみたい仕事などはありますか?

前田: そうですね、もっと恋愛ものをやってみたいです(笑)僕本当に恋愛する役ってなくて、いつも僕を踏み台にしてみんな恋愛とかしているんで、今度は僕が大恋愛をしていくような役をやってみたいですね。ヒール役に関してはいっぱいやらせていただいて、それを求めていただけることが多いので、これからはまたちょっと違う自分を見せていきたいというか、等身大の僕の印象を役に落とし込めるようなお芝居を極めていきたいですね。

— 30代は役者の分岐点とも言えると思います。前田さんはどう捉えていますか?

前田: 僕はこれ以上ない30代のスタートを切れたと思っているので、これを継続するために日々鍛錬を怠らず過ごしていきたいと思いますね。あとはブランドもそうですし、オンラインサロン、写真集、カレンダー、ミュージカルと色々挑戦する機会をいただけているので、一つ一つを大事にしていきたいなと。最後に一つ野望をいうと、僕コロナ禍でディズニー作品にどっぷりハマったので、いつかディズニーに携わる仕事をしてみたいですね。そのためには本当に日々コツコツと頑張って継続していくしかないなと思っています。小学1年生のときの担任に言われた「継続は力なり」、本当にこれにつきますね(笑)

OUTER: snow peak×URBAN RESEARCH DOORS ¥25,850 (税込)
SHIRTS: URBAN RESEARCH ¥15,400 (税込)
KNIT: URBAN RESEARCH ¥10,450 (税込)
TROUSERS: URBAN RESEARCH DOORS ¥10,450 (税込)
SHOES: Tricker’s×URBAN RESEARCH ¥60,500 (税込)

Profile

前田 公輝(まえだ ごうき)
1991年4月3日生まれ、神奈川県出身。
6歳で芸能界デビューし、2003年からNHK教育テレビ「天才てれびくんMAX」でてれび戦士として3年間出演。2008年、「ひぐらしのなく頃に」で映画初主演を果たし、その後も数々の注目作に出演。2022年度NHK朝ドラ「ちむどんどん」の出演も決まっており、これからも目が離せない俳優だ。

Instagram @ maeda.gouki
GM : https://gm-official.com

Information

『会社は学校じゃねぇんだよ 新世代逆襲編』※全8話
演出/藤井道人、原廣利、逢坂元、山田卓司
脚本/鈴木おさむ
出演/野村周平 藤井夏恋 佐野玲於 前田公輝/三浦翔平 ほか
ABEMAにて放送中
URL: https://abema.tv/video/title/90-1567

ヘアメイク/松田 蓉子
企画・構成・衣装・写真・文/杉浦 優

団地GUY ARCHIVES

第一回 笠松 将
第二回 藤原 大祐
第三回 金子 大地
第四回 前田 公輝
第五回 山本 涼介
第六回 須賀健太

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