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FASHION JUN 23,2022

団地GUY
第七回 見津 賢

段違いな才能を持った人物をフィーチャーする不定期連載企画『団地GUY』。七人目は俳優だけでなく写真家としての活動もしている見津 賢さん。正直言って今回僕はシャッターを押していない。いや押した記憶がないと言ったほうが正しいかもしれない。まるでファインダーの中の彼が自分で構図と光を決め、シャッターまでも押してくれているような不思議な感覚。現像して仕上がりを見るまで撮影中大雨が降っていたことすら忘れていたくらいだった。


Interview with Satoshi Mitsu

— まず初めに見津さんにとって団地ってどんなイメージですか?

見津: 小学校の頃の友達が何人か同じ団地に住んでいて、それで僕もよく遊びに行っていた思い出があります。大人になって写真を始めてから、散歩しながら撮影をするということもよくあるんですが、そんなときにも団地はロケーションとして映えるのでよく撮りますね。日本の街でこういう規則性のある建造物ってなかなか少ないので、構図的にもすごく美しいなって思います。

— すごくわかります。同じような思いから僕はこの企画を始めました(笑) いま写真の話が出ましたが、普段は人を撮ることが多いですか? それとも風景ですか?

見津: 人とか風景とかそういった区切りはあまりつけたことがなくて、僕視点の日常のワンシーンを切り取るという感じですかね。何気ない風景の中に人がいるという感覚でしょうか。だからポートレートとして対人で撮るということはあまりしないですね。僕が撮る写真は映像的なアプローチの写真が多いです。そこが自分の良さだなとも思っています。

— 使っているカメラは?

見津: 例えば現像した後にレイアウトを組んだりとか、ポスターにするためにデザインをしなきゃいけないときなんかは中判で撮ることが多いです。あとは日常のワンシーンを切り取りたいときは35ミリっていう感じですかね。

— 写真を始めたきっかけは?

見津: 高校生のときに父親が使っていたリコーのGR1vを譲り受けて初めてフィルムカメラを手にしました。最初は「壊すなよ」って言われながら散歩中にテスト撮影したりして(笑) そこからどんどん興味が湧いた感じです。

— お父様はカメラマンとかだったんですか?

見津: いえ、父はカメラを作るほうの会社に勤めていて、書斎によくネガとかフィルムが置いてあるのを小さい頃から見ていたんです。だから僕が高校生の頃に写真に興味を持ち出したのは必然だったのかもしれません。

— 初めて持ったリコーGR1vから、今ではハッセルブラッド500C/Mなどいろいろな機種を使っているということですが、どういう基準でカメラを選びますか?

見津: 写真を始めてから、他の人がなんのカメラを使っているかがすごく気になりだして、ひたすら見て聞いて、自分が使ってみたいカメラを探してきた感じです。そもそも僕、写真も好きなんですが、理系なので機材オタクな面もありまして(笑) スペックとかももちろん大事ですけど、ビジュアルが本当に好きなカメラは収集したいんです。今はフィルムカメラだけで15台くらいありますかね。

— デジタルは撮りますか?

見津: 撮ります。今デジタルでよく使うのはリコーのGRIIIです。でもやはりメインはフィルムの中判、ポケットでGRIIIって感じですね。キャンプで星を撮ったりするのも好きで、バルブで2〜3分開けて撮ろうみたいなときはデジタルが重宝します。

— ご自身で『めぐり、めぐって純喫茶』などの連載をやられていますが、勝手ながら好きなツボが近いような気がしていて、こういったネーミングとか企画を思いつくのはどういったときが多いですか?

見津: これは良くも悪くもなんですが、僕は理由の後付けみたいなことが得意なんです。写真に関していうと、もう何本も撮ってきてある程度こういうときはこう撮ろうとか、この露出でいこうとか仕上がりをイメージして撮れるまでにはなっているんですが、逆算的なものじゃなく実際に仕上がったものを見たときの偶発的な感情に対して何か名前をつけようと思ったときにネーミングがふっと出てくる感じですかね。

— すごくわかります。その瞬間って一番気持ちいいですよね。僕はよく外に出たり水回りでイメージが湧くことが多いんですが見津さんはいかがですか?

見津: 散歩しているときとかが多いですね。

— 普段常にカメラは持ち歩いていますか?

見津: 常にではないですね。でも写真を始めてから、カメラを持っていないときも視覚が35ミリっぽく見える瞬間があって、そういった意味では常にカメラは意識しているのかもしれません。あぁこの瞬間撮りたい! って思うときに限ってカメラを持っていなかったりすることがよくあります。これは写真をやっている方にはわかっていただける感覚だと思います(笑)。

— 非常にわかります(笑) 見津さんは普段俳優というお仕事もされていますが、現場で共演者を撮ったりすることもあるんですか?

見津: あります。もちろん許可がおりればですけど。最近は作品用のSNSであげる写真をどんどん撮ってくださいみたいなリクエストも増えたので、逆にありがたいですね。

— そういったオフショットみたいなものを撮るときって結構リズムよくシャッターを押すタイプですか?

見津: 僕はそんなに押さないです。押せばそれだけ分母も増えるのでいい写真が増えるのかもしれませんが、フィルムとなると一枚にかける熱量みたいなものが出てしまってすごく指が重くなります(笑)。

— 少しファッションのお話を聞かせてください。僕の中で勝手ながら見津さんはグリーンのイメージがあって、今回グリーンのシャツを選ばせていただきました。好きな色とかはありますか?

見津: グリーンは好きですね。僕、古着屋で働いていたときがあって、そこの古着屋がモッズファッションとかミリタリーを扱うお店だったのでカーキとかグリーンは自分の中でしっくりくるんです。逆に暖色系はメインではなくワンポイントで使うのが好きですね。

— 洋服を買うのはネット派ですか? 直接お店に行く派ですか?

見津: 両方ですかね。この前はお店に買い物に行きましたし、ネットでも全然抵抗はないです。自分のサイズ感はある程度理解しているつもりなので、特にネットで買うのは怖いという感覚はないです。もちろん失敗したことはありますが(笑)。

— お店で店員さんに接客されるのは好きですか?

見津: 服が好きなのでむしろめちゃくちゃ話してしまいます。ファストファッションのお店では喋らないですが、こだわりのある古着屋とかセレクトショップとかでは気になった服がどういう経緯でここにあるか、どんなブランドなのかを知りたいので話しかけてくれるのはすごく嬉しいです。

— 人見知りではないですか?

見津: めちゃくちゃ人見知りなんです(笑) 本当はすごく人見知りなんですが、この仕事を始めてから人と喋れるようになった気がします。喋れるタイプの人見知りなのかもしれません。

— 僕もそうなのですごくわかります。喋るモードのスイッチを入れたら喋れるっていう。

見津: はいそうです(笑) 話を振ってくれたらスイッチが入りやすいんですが、ヘアメイクさんで無口な方だったりすると、どうやってこの局面を打開しようかとずっと考えています。でもこういうファッション撮影の現場だと皆さんファッションが好きっていう共通点があるので、話が弾みやすいですね。

— 今までファッションで影響を受けた人はいますか?

見津: 誰かというよりは映画から影響を受けることが多いです。『ショーシャンクの空に』を観たときに囚人たちのファッションが可愛いなと思ったり、戦争ものの映画を観たときはミリタリーかっこいいなと思ったり。

— やっぱりミリタリーが好きなんですね(笑)。

見津: そうですね(笑) 軍モノ大好きです。

— 普段俳優をされていて、衣装が役作りに影響するなと感じることはありますか?

見津: もちろんあります。現場に入る前の本読みの段階と、現場で衣装を纏ったときでは全然気持ちの入り方が違います。それこそ衣装がスイッチになるというか引き締まる思いがします。

— 衣装合わせで自分の思っていたものと違うなと思ったときはありますか?

見津: あります。けどもっとこういうほうがいいんじゃないかと発言したことはないです。衣装さんって僕の役作りのためだけじゃなくて作品全体のバランスをみて衣装を用意してくださっているじゃないですか。だからそこはプロの方にお任せしたほうがいいなと思っています。

— 今日の衣装決めのときに、どっちがいいかを見津さんに聞いたらすぐに「今日撮影する団地の色はどんな感じですか?」と聞き返されたのが印象的でした。

見津: やっぱり写真をやっているからか、そういう全てのバランスを考える作業はすごく好きですね。

— 写真をやっていて、俳優としてもよかったなと思う瞬間はありますか?

見津: それは結構ありますね。例えばスチール、ムービー、どちらにも言えますが、撮る側からすると「もうちょっとこっち向いてほしいな」とか「今のその表情撮らせてほしい!」みたいなときってあるじゃないですか。そういう気持ちがわかるので、自分が撮られる側のときはそこを意識するようにしています。だから自分も一緒にシャッターを押しているような感覚ですねきっと。あと技術的な面で言うとカメラマンさんが使っている機種とレンズを見て「大体こんな感じの写りだろうな」と経験値から想像して、自分のアクティングスペースを計れるので、そういうところは写真をやっていてよかった点だと思います。

— それはすごいですね。

見津: 以前映画の撮影で村上淳さんとご一緒したときにカメラの話ですごく盛り上がって、そのときに村上さんが、撮影が一旦止まって「レンズを何ミリに変えます」みたいな技術さんの会話に聞き耳を立てて、そこから自分の写り方を想像してお芝居をブラッシュアップしていくとおっしゃっていて、すごく合点がいったというか、かっこいいなぁと影響を受けました。

— 村上さんの他に影響を受けた俳優さんはいますか?

見津: 役所広司さんです。僕が映画を好きになったきっかけの人です。役所さんが出演されている作品は無条件で反応してしまいますし、かっこいいなと思います。あとは近い年齢の方でいうと若葉竜也さんですね。ずっと作品に出られているし、ご自身で監督もされていたりして、マルチに活動されているんだけど根底には「お芝居が好き」というのが滲み出ていてすごく素敵だなと思います。

— 今後の抱負、目標などあれば教えてください。

見津: 将来的にはいろいろなことが自分でできるようになりたいなと思っています。自分で作品を作りたいし、撮りたいし、脚本も考えたい。とにかくクリエイティブな人でありたいなと思っています。応援宜しくお願い致します!

— ありがとうございました!

JACKET: COSEI ¥41,800 (税込)
SHIRTS: semoh×URBAN RESEARCH ¥30,800 (税込)
PANTS: SEEALL ¥31,900 (税込)
SNEAKERS: REPRODUCTION OF FOUND×URBAN RESEARCH ¥25,080 (税込)

Profile

見津 賢
1996年生まれ、神奈川県出身。
俳優としてCMやドラマ、映画、MVと幅広く出演する一方、写真家として連載を持つなどマルチに活動中。
Instagram @ mitsusatoshi

ヘアメイク/亀田 雅
企画・構成・衣装・写真・文/杉浦 優

団地GUY ARCHIVES

第一回 笠松 将
第二回 藤原 大祐
第三回 金子 大地
第四回 前田 公輝
第五回 山本 涼介
第六回 須賀 健太

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